PD-L1陰性のがんにPD-1抗体がなぜ効くのか?

がん細胞が作り出すPD-L1とリンパ球の表面に存在しているPD-1とが相互作用するとリンパ球の働きを抑える。このPD-1とPD-L1が手を結ぶのを、PD-1/PD-L1、いずれかの抗体で妨害するとリンパ球が活性化され、結果的にがん細胞を叩く。これが、免疫チェックポイ…

複数病院で同一検査を受ける非効率医療の回避策

今、台北松山空港にいる。台中の亜洲大学(アジア大学)で開催された、「人工知能とプレシジョン医療フォーラム」で基調講演を行ってきた。このアジア大学は、台中市内にある中国医薬大学と姉妹大学に当たり、急速に認知度が上がっている大学である。この大…

CAR-T細胞療法に1回3349万円の薬価

CAR-T細胞療法に3349万円の保険薬価がついたとメディアが騒いでいる。この治療法はB細胞系の腫瘍に限られているし、1回の治療が標準的なことや日本では欧米に比べて患者数が少ないので医療費の総額を大きく押し上げる可能性はほとんどない。 治癒の可能性も…

スマートウオッチが心電図を読み、危険な高カリウム血症を推測

10日間の連休中、持て余した時間を利用して、様々な分野の読書に励んだ。まだ、完全に読み切れていないが、その1冊が「Deep Medicine」というハードカバーの本である。著者はEric Topolという方で、循環器内科医だそうだが、Google Scholarではゲノム、ウエ…

自分に従わないと診療拒否する医師!

私が医者になったころ、がんの手術は拡大手術が流行だった。化学療法が進歩し、放射線療法もがん組織だけ狙い撃ちする技術が格段に向上し、今や、拡大手術は過去の遺物となった。乳がんなど、術後に肋骨の形が皮膚の下に浮き上がってくるような姿が普通だっ…

令和の目標に「がん患者に希望と笑顔を!」

平成から令和と移り変わる瞬間を私は静かに迎えた。 New England Journal of Medicine誌に「Anti-BCMA CAR T-Cell Therapy bb2121 in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma」というタイトルの論文が掲載された。新しい種類のCAR-T細胞療法の多発性骨髄腫…

医学・医療分野にも波及した米中摩擦

Science誌に「Exclusive: Major U.S. cancer center ousts ‘Asian’ researchers after NIH flags their foreign ties」(NIHが外国との関係に関して注意勧告したあと、米国の有名がんセンターがアジア人研究者を追い出した)という表題の記事が掲載されてい…

外科医が行うべき研究とは?

今日は大阪で開催されている日本外科学会に招かれ、特別企画「外科医が行うべき研究とは」の中で、「患者さんから学び、患者さんに還元する研究を!」というタイトルで講演を行った。私は、腫瘍外科医として勤務した時に感じた疑問を出発点として、研究を始…

基本を知らないがん研究者

若いがん研究者と話をする機会があったが、驚くほど基本的な事項が理解できていなかった。胚細胞変異と体細胞変異の区別ができない。「遺伝性がんの原因遺伝子は遺伝性のがんに特別なものではなく、それらの遺伝子が体細胞で変異をするとがんにつながる」な…

5G時代に生き残れるのか?

久々に成田空港にいる。シカゴー羽田直行便がスタートしてからは、もっぱら羽田空港を利用していたし、東アジアも羽田から多くの都市へのアクセスがいいので、成田を利用する機会がなくなっていたので、新鮮な感じがする。今年は5月に台湾、9月に韓国、10月…

「ゲノム・遺伝子」教育の充実を

「報道特集」という番組で、中国・深圳の様子が紹介されていた。ゲノムバンクでは、細菌・ウイルスから植物・動物に至るまで、膨大な種類のゲノム(DNA)が収集され、保管されているという。絶滅危惧種のDNA,もしくは、細胞を保管しておけば、絶滅していても…

できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい

マリナーズのイチロー選手が引退した。その記者会見で「できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい」との発言を残した。最近の若い人たちは「できそうにないので、難しそうなので、挑戦しない」という人が多いように感じている…

膵臓がん治療に光明か!?

Nature Medicine誌に「Protective autophagy elicited by RAF-MEK-ERK inhibition suggests a treatment strategy for RAS-driven cancers」というタイトルの論文が報告されている。RASというのは代表的ながん遺伝子であり、人のがんでこの遺伝子の異常が見…

ゲノム医療入門―5:リキッドバイオプシー

内閣府の「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトの中で、リキッドバイオプシーの実装化に取り組んでもらっている。日本は、海外で実用化された技術に周回遅れで取り組んでも、それが世界の最先端と大ぼらを吹ける人たちが国をリードして…

人工知能の可能性

病院に人工知能を導入する必要があると言うと、多くの人が無機質で冷たい診療現場になることを危惧する。しかし、私は医療現場に人間らしさを維持するためには、人工知能の補助が不可欠だと考えている。 患者さんの観点で医療現場を見た場合、ストレスと感ず…

もうすぐ、あの日から8年

あと4日で大震災から8年になる。数日前のニュースで、被災地で独居老人の孤独死が続いているとの報道があった。こんな状況は予測されたことだ。家族を失い、家を失ったご老人には大きなストレスがあったはずだ。震災後、津波被害者の健康管理に重点を置くこ…

ゲノム医療入門―4

米朝関係は、メディアの予想がほぼ総外れになる結果となった。予測不能のトランプ大統領の面目躍如とも言えるが、これでまた先の見えない国際情勢となった。「トランプはやはりトランプだ」という評価で傷は浅いように思うが(ロシア疑惑は別だが)、北朝鮮…

日本人の民意

「辺野古移設を反対する人が過半数を超えた」と現政権に反対する人たちが大喜びしている。では、普天間基地はどうするのか?この基地移転問題は、危険度の高い普天間基地を他に移すことから始まったものだ。一旦落ち着いていた状況を一変させ、このような混…

ゲノム医療入門―3

今日は病気のゲノム・遺伝子診断に移りたい。といっても、これにも多様な種類が含まれているので、大きな分類をするだけでも大変であ ゲノム・遺伝子を利用した病気に関わる医学研究・医療を大きく分類すると、遺伝的な病気や病気のリスクの診断(遺伝性疾患…

ゲノム医療入門―2

前回は法医学的な分野の紹介をしたが、今回は、感染症関係を簡単に触れたい。炭そ菌を郵送するバイオテロ事件が仮想のものではないことを覚えておられると思う。最近は、麻疹(はしか)が流行して騒ぎとなっているが、はしかやおたふくかぜの流行は、行政の…

ゲノム医療入門―1

「遺伝」と「遺伝子」、「ゲノム医療」と「臨床遺伝診断」は同じ言葉のように聞こえるが、その内容はかなり異なる。日本では、親から子へと受け継がれる概念であるHeredity「遺伝」と科学的な概念であるGene「遺伝子」に同じ「遺伝」という言葉が用いられて…

再生医療に対するNature誌での批判

1月31日号のNature誌に「Stem-cell therapy raises concerns」というコメントが掲載されていた。「脊髄損傷に対して患者さん自身の間葉性幹細胞を培養して増やし、それを静脈注射で患者さんの身体に戻す」治療法を、日本では有償で実施することが認められた…

化学療法で臨床的に消えた直腸がんはどう治療する?

JAMA Oncologyに「Assessment of a Watch-and-Wait Strategy for Rectal Cancer in Patients With a Complete Response After Neoadjuvant Therapy」というタイトルの論文が発表されていた。直腸がんの化学療法によってがんが消失した患者さんに対して、手術…

腰椎穿刺液を用いた脳腫瘍のリキッドバイオプシー

日曜日に気晴らしにボーリングに言った。第5フレームを終わった所で93点と絶好調だった。しかし、次の瞬間、悪魔に襲われた。人間、欲をかくとダメなことを理解しているはずだが、本能が冷静さを失わせた。力を込めて次のボールを投げ終わった途端に左の大腿…

医療現場で失われているHumanity

昼過ぎから風もでて、寒くなってきた。ちなみにシカゴはどうなのかと思って、天気予報を見た。調べた時点での気温マイナス19度に体がすくみそうになったが、30日の予想はなんと最低気温マイナス30度、最高気温がマイナス24度だった。こんな所で、6回も冬を過…

日韓レーザー照射問題;日本人の誇りと矜持を賭けて断固戦え!

毎日新聞に「防衛省は21日、韓国海軍駆逐艦の火器管制レーダー照射問題を巡り、韓国側との協議を打ち切ると発表した。」との記事が出ていた。レーザーが照射されたのかどうか、真実は一つしかないはずだ。常識的に、日本政府と韓国政府のいずれかが嘘をつい…

人工知能システムによる麻薬オーバードーズや危険な不整脈の診断

1月9日号のScience Translational Medicine誌に「Opioid overdose detection using smartphones」、そしてNature Medicine誌に「Cardiologist-level arrhythmia detection and classification in ambulatory electrocardiograms using a deep neural network…

救いようのない日本のがん医療:グリオブラストーマに対するペプチドワクチン療法臨床試験

1月10日号のNature誌に「Actively personalized vaccination trial for newly diagnosed glioblastoma」と「Neoantigen vaccine generates intratumoral T cell responses in phase Ib glioblastoma trial」というネオアンチゲン療法に関する論文が掲載さ…

マグロ1匹と臓器移植の価値

テレビのニュースで、豊洲でのマグロの初セリが3億3360万円と報道されていた。セリ落としたすしチェーン店では通常価格でマグロが販売されているので、採算が合うはずがないが、これだけニュースで取り上げられれば宣伝効果は絶大だろう。このマグロを…

慟哭の詩2018:もし、私が天涯孤独だったら

私に血縁が全くいなければ、20歳で大腸がんと闘っている若者に、自らの手でネオアンチゲンを注射し、MDアンダーソンがんセンターで治験中のMELK阻害剤を投与してあげたい。 進行がんだから、諦めるしかないとは絶対に言わない。 彼に希望を与え、笑顔を取り…