二重特異性抗体を患者体内で作り出すがん治療法

半年ほど前に、二重特異性抗体の白血病治療への応用を紹介した。今回は、二重特異性抗体そのものを注射するのではなく、二重特異性抗体を作り出すmRNAを静脈注射して、肝臓に取り込まれたmRNAが二重特異性抗体を作り出す形にしても治療効果があった話だ。7…

綺麗ごとと現実の狭間

ある芸能人が、奄美空港で半身不随の乗客が自分でタラップを登らされたことに対して、「『手で上がって行くのを見てらんないじゃん』と再度訴え、航空会社側が『分かりました。規則ではダメだけど、上げますから。内緒にしてくださいね』というルール違反を…

早期前立腺がんに手術は必要か?

先週号のNew England Journal of Medicine誌に「Follow-up of Prostatectomy versus Observation for Early Prostate Cancer」というタイトルの論文が報告されていた。著者たちは、以前にも「早期前立腺がんは手術をしてもしなくても生存率に差はない」と報…

「エビ」が動いておられました?

慌ただしい日本出張を終え、今、羽田空港にいる。プレシジョン医療、リキッドバイオプシー、ネオアンチゲン治療などに向けて、一歩前に進んだ。あとは、現場に携わる人たちの実行力が問われる。しかし、日本での免疫療法という言葉に対するネガティブな印象…

CAR-T細胞療法承認に向けて

米国医薬品局(FDA)の 「Oncologic Drugs Advisory Committee」 はCATR-T細胞療法に 「the treatment could be approved by the FDA by the end of September, forging a new path in the immunotherapy frontier.」と推薦した。もうひとつの新しい免疫療法…

出会いと別れの繰り返し

日本は相変わらず平和だ。どう考えてもくだらない芸能人の離婚騒動が世間を賑わせている。米国も大統領選挙へのロシアの関与を巡って、親トランプメディアと反トランプメディアの戦いが繰り広げられていており、興味深い。内容は低次元だが、国益が関わって…

ネオアンチゲンを利用したメラノーマ(悪性黒色腫)治療

今週のNatureにメラノーマ患者に対するネオアンチゲンを利用した治療結果が2報、報告されていた。日本では免疫療法というだけで、パブロフ反射のように懐疑的な人たちが依然として多い中で、マウスではなく、人に対するネオアンチゲン治療が報告されているの…

6回目の米国独立記念日

先ほどまで、ドンドンと花火を打ち上げる音が響いていた。シカゴに移り住んでから6回目、現在のアパートに引っ越してから5回目の独立記念日である。我が家からは180度、外を見渡せるが、地平線に沿って少なく見積もっても200-300か所で花火が打ち上げられて…

日本の政治もメディアも変だ。

帰りの飛行機で、週刊新潮を読んだ。小林麻央さんが亡くなった件で、市川海老蔵さんを批判した記事があった。正直、読んでいて胸糞が悪くなった。私は海老蔵さんの麻央さん死亡後の会見を見ていて、思わず胸が詰まり、思わずもらい泣きしそうになった。もち…

無治療ステージ4非小細胞肺がんに対するニボルマブ;抗がん剤に優位性なし

これまで独走の感のあった免疫チェックポイント抗体治療に少しブレーキがかかった。無治療のステージ4非小細胞肺がんに対するニボルマブ対プラチナ系抗がん剤の比較試験結果がNew England Journal of Medicineに報告された。 エントリー基準はPD-L1の発現が…

日本医療研究開発機構(AMED)に問う(2)

今日、東京医科歯科大学で「がんプレシジョン医療」のシンポジウムがあった。そこで、このブログでのAMEDに対するコメントが話題になっていると聞いた。繰り返すが、審査員の質を確保することなく、競争的資金の健全性・公平性が保てるはずがない。申請書を…

大学の国際化

今、台北松山空港にいる。慌ただしい出張だったが、日曜日には久しぶりに中正紀念堂・故宮博物院に行ってきた。ゲートの看板が「大中至正」から「自由広場」に代わっていた。「中正紀念堂」という名称が、2007年に「台湾民主紀念館」と変えられたが、それは…

日本医療研究開発機構(AMED)に問う;審査員の質を評価せよ!

今、羽田空港にいる。シカゴに戻るのは1週間後で、これから台湾に行くためだ。台北医科大学の客員教授をしており、1年に一度は台北を訪問している。今週の始めに夏風邪を引いてしまい、半ばあたりは、体調が最悪だったので、少し厳しいものがあるが、今日の…

座右の銘が「面従腹背」;これで教育行政は大丈夫か!

昨日の国会中継を少しだけ見た。メモがあるのかどうか、チマチマとした質問が続いていたので、馬鹿馬鹿しくなってシャットダウンした。役所は重要な会議のメモを残すことなど常識だ。かつて在職していた医療イノベーション推進室での会議でさえ、メモが作成…

二つの事実+評価が二転三転の免疫療法

コミー元FBI長官の議会での証言とトランプ大統領の発言が完全に対立している。コミー氏は「食事は大統領から誘われた」「忠誠を求められた」「フリンの捜査をやめるように言われた」と言い、大統領は「コミー氏が求めてきた」「忠誠など求めたことがない」「…

Make Our Plant Great Again

トランプ大統領のパリ協定離脱宣言、解雇されたFBI元長官の議会での公聴会など、政治の話題が尽きない米国だ。G7や中国の首脳も、米国のパリ協定からの離脱を非難していたが、その中でも洒落た一言でトランプ大統領を皮肉っていたのが、フランスのマクロン新…

ASCO (米国臨床腫瘍学会)2017

今日は6月1日。亡き母の18回目の命日だ。亡くなる前日に母と交わした会話は今でも鮮明に脳裏に焼きついている。母の厳しかった闘病の姿が、抗がん剤を開発したいという強い想いを持ち続けることができる最大の原動力だ。私は母が19歳の時に生まれたので、来…

パソコン機内持ち込み禁止?!

週末に、「米国を発着する飛行機内へ、スマートフォンより大きなパソコンの機内持ち込み禁止」というニュースが流れた。日本へ頻回に旅する私にとっては一大事と思い、記事をよく読んでみたが、現時点では、主にヨーロッパと米国を行き来するフライトへの対…

抗がん剤治験方法の大変換;臓器別から遺伝子タイプ別へ

時代は変わった。それを実証する薬剤承認が、FDAから昨日公表された。成人・小児に関わらず、標準治療法で効果がなかった(なくなった)進行固形がんに対して、免疫チェックポイント抗体の利用が承認されたのだ。 治療が適用となるがんに対するバイオマーカ…

がん患者をサポートするマギーズ東京

今、羽田にいる。短い滞在だったが、日曜日の講演会には刺激を受けた。自らの苦しかったがん体験から患者さんを支援するマギーズ東京を立ち上げた、鈴木美穂さん(日本テレビアナウンサー)の発想・行動力に心底から感動した。私の講演よりも、鈴木さんの話…

日本の政治;喜劇か悲劇か?

米国の政治は、トランプ大統領の弾劾騒動にまで発展し、目が離せないが、日本の政治は、腹立たしいし、ある意味では滑稽だ。獣医学部の新設を巡って、どうでもいいようなことで(優先度の高いことはたくさんあるはずだが)、国会での時間が費やされている。…

がんに対する免疫力を高める新規抗体治療薬;抗CD27抗体

また、また、オヘア空港にいる。21日の日曜日に日経ホールで開催される乳がん懇談会に参加するためだ。会は、12時30分に始まり、私の講演は14時過ぎから始まる予定だ。今回の講演会は、よしもとブレストクリニックの吉本賢隆先生が企画されたものだ。吉本先…

研究者がSNSで患者さんと直接コンタクト;がんゲノム解析と生きるための希望

MIT(Massachusetts Institute of Technology)のBroad研究所のメンバーがPrecision Medicine (プレシジョン医療)に関する講演をした。あまりにも抑揚のない話し方に加えて、話の内容が、一般的なゲノム解析と分子標的治療薬選択に関する、どこにでもあるよ…

トランプ政権の地震は、北朝鮮の大地震を引き起こすか??

トランプ政権がFBI長官の解任問題で大揺れに揺れている。報道官が「司法省副長官の薦めでFBI長官を解任した」とコメントしたが、一昨日、トランプ大統領が「自分で判断したものだ。司法省のコメントに関わらず、解任していた」とテレビのインタビューで答え…

新しい免疫療法へ大きな潮流

シカゴの5月は寒い日が続いており、20度を越える日はまだないし、今後1週間も期待できない。昨日は最高気温9度と、東京では冬並みに冷え込んだ。 その昨日の夕方、オランダのアムステルダム大学のTon Schumacher教授の「T cell recognition of human cancer…

オバマ前大統領の講演料4500万円+大腸がん肝転移術後肝動脈注入化学療法

オバマ前大統領のウオールストリートでの講演料が4500万円(40万ドル)と報道され、大統領時代の金融街への批判的な姿勢と対照的だと話題になっている。クリントン元大統領の1回の講演料は平均約2000万円だったそうなので、それよりは高いが、桁…

腫瘍内浸潤リンパ球(TIL)療法が効いた症例での抗原は?

先月号のScience誌に「Landscape of immunogenic tumor antigens in successful immunotherapy of virally induced epithelial cancer」という論文が公表された。これは、腫瘍内に浸潤しているリンパ球(Tumor infiltrating lymphocyte=TIL)を取り出し、培養…

高齢進行がん患者、姥捨て山論への伏線か?

時差ボケがひどい。今朝は午前3時に目が覚めた。昼過ぎには目を開けていられず、思わず、眠りに落ちたが、自分のいびきで目が覚めた。短い出張の中、動きすぎたためか、体は鉛のように重くなっている。そんな中、家に帰ってネットニュースを読み、頭に血が上…

北朝鮮危機が他人事な日本

シカゴに戻ってきた。気温も20度と心地よい。木々も緑に色づき、本格的な春の訪れだ。今回は、東京1泊、京都1泊、北京3泊、東京2泊と移動が多く、体にはかなり負担がかかった。同じ時間枠でも、東京にずっと滞在しているより、倍以上疲れた。北京と東京で、…

北京大学医学部に数十人の日本人留学生

今、北京にいる。昨日の朝、国際胃癌学会のオープニングセッションで講演をした。大気汚染を心配していたが、幸いにも、一昨日以降、青空が広がっている。北京国際空港では、入国審査が終わった後で、荷物のX線検査が待ち受けていた。何を調べているのか、今…

抗がん剤の適応できない尿路がんに抗PD-L1抗体薬が第1選択

米国FDAがシスプラチンが適用とならない局所進行、あるいは、再発尿路がんに対する抗PD-L1抗体(atezolizumab)を第1選択薬として使用することを承認した。これはIMvigor210と呼ばれる119名の患者に対する第2相試験の結果である。この試験では、コントロール…

医師の燃え尽き症候群を救うには、書記係が?

ユナイテッド航空にまつわる話が続いている。結婚式に行く予定のカップルが、飛行機に最後に乗り込んだところ、自分たちの座席に横たわっている乗客がいたため、前方の席に座った。普通のエコノミー席より少し広い座席だったので、追加料金を払うと申し出た…

風雲急を告げる朝鮮半島

前回のブログで少しだけ紹介したユナイテッド航空の事件は、世界的なニュースとなり、依然として余波が続いている。引きずりおろされた乗客は、鼻骨と前歯2本を折っていたそうで、訴訟に発展しそうだ。ユナイテッド航空のトップが職員向けに送ったメールで、…

「All of Us Research Program」

「The Precision Medicine Initiative Cohort Program」(プレシジョン医療コホート計画) が「All of Us Research Program」 と名を代えて活動を広げようとしており、シカゴでもようやく機運が高まりつつある。2015年にオバマ前大統領が、プレシジョン医療…

ネオアンチゲン 対 細胞傷害性CD4細胞!?

シカゴは一気に春の陽気となり、今日は快晴で気温も20度近くまで上がるようだ。しばらく曇天が続いていたので、灰色だった湖面の色が、エメラルド色に輝き、気持ちも晴れやかになる。しかし、がんの免疫療法を巡る世界はますます難しくなってきた。 話は少…

小児がんの医薬品開発のための課題

ようやく時差ぼけが取れてきたが、17日にはシカゴを発ち、再度日本を訪問する。今回は北京で21日から開催される国際胃がん学会のオープニングセッションで免疫療法の話をすることが主目的だが、19日の午後には、立命館大学の草津キャンパスで「がんと闘い続…

性的嗜好と咽頭部がんをつなぐパピローマウイルス

一昨日のワシントンポストが、「性的な嗜好が、咽頭部がんなどのリスクを増す」という特集を組んだ。俳優のマイケル・ダグラスが、4年前に、「自分のがんに性的嗜好が関係する」可能性を告げた際には、ほとんどの人が間違った情報を伝えられたのではないかと…

がんの延命から治癒へ;プレシジョン医療―(4)

シカゴに戻っての1週間、体が鉛のように重かった。日本滞在中はかなり無理した自覚はあったが、歳には勝てない。そのためか、昨夜は12時間近く寝てしまった。こんなに長く寝た記憶はない。しかし、おかげで、霞がかかっていたような頭がスッキリとした。 今…

世界大学ランキング2017

タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education)が世界大学ランキングを公表した。日本では意図的かどうかわからないが、THE世界大学ランキング日本版がメディアで取り上げられているようだ。目を背けたくなる気持ちもわからないわけではな…

がんプレシジョン医療;がんの治癒を目指して(3)+シカゴ5周年

今日はシカゴに来て5年目の記念日だ。いろいろな想いがあって日本を飛び出し、矢のように時間が流れた。日本にそのままいれば、定年後の生活を考え始めていたのだろうが、米国の実情を知り、日本を遠くから眺め、日本のがん医療の将来に対する不安がますます…

がんプレシジョン医療;がんの治癒を目指して―(2)

プレシジョン医療には、当然ながら予防や早期発見も含まれる。肝炎ワクチンやパピローマワクチン(現在では、子宮頚がんだけでなく、頭頸部癌の予防につながると考えられている)など有効な手段だ。そして、個人ごとの遺伝的リスクに応じた、がん予防プログ…

リレ―フォーライフ@東京医科歯科大学

今、羽田空港にいる。昨日は久々にリレーフォーライフに参加していただいた。患者さんや家族の方と触れ合うと刺激になる。米国のように、患者さんたちと医師・研究者が一体となった行動を起こすことが必要だと思う。滞在中、プレシジョン医療という言葉も広…

がんプレシジョン医療;かんの治癒を目指して(1)

今、金沢から東京へ向かう新幹線の車中にいる。自宅が羽田空港に近いので、今朝は飛行機で金沢に向かったが、夕方は東京駅近辺で用件があるため、新幹線にした。北陸新幹線に乗るのは初めてだ。この列車は東京まで3時間かかるので、結構体にはきつい。でも、…

革新的技術と規制+トランプ政権NIH予算カット

昨日は先進医療推進フォーラムに参加した。私を含め、3名ががんに関係する話、1名が心臓の再生医療に関わる話だった。最初の演者が、「がんには3大治療があり、外科、化学療法、放射線療法だ」と発言した時には、愕然と、ずっこけてしまった。私も、私の次の…

制御性NK細胞?!

今、シカゴ・オヘア空港にいる。私は長旅は嫌いだが、今週と来週の土曜日の講演会に加え、今回はプレシジョン医療を本格的に始動させるために、いろいろな方々とお会いする予定で忙しい。さらに、金沢への日帰りもある。土曜から土曜までの8日間で予定されて…

ムーンショット計画の行方

バイデン前副大統領が久々に公の前でスピーチをして、「私はがんを克服する大統領になりたかった」とコメントをした。そこれ気になるのが、がんの治癒を目指す「ムーンショット計画」の行方だ。計画に携わっている人によると、トランプ大統領も計画の内容自…

東北大震災から6年

2011年3月11日の東北大震災から6年が経った。地震が起こった瞬間、帰宅できずにさまよった多くの人たちの混乱、テレビで見た津波による惨状、南相馬市を訪問した際の驚くべき風景、避難所で目にした現地の人たちの忍耐強い生き様、それらは忘れとしても忘れ…

制御性T細胞を利用した・標的にした治療

火曜日の内科の学術講演会は「制御性T細胞」を利用した、あるいは、標的にした治療の話だった。免疫反応は、必要な時に活性化され、細菌やウイルス感染を抑えるが、不必要になると免疫反応のスイッチをオフにする必要がある。活性化と抑制の微妙なバランスが…

がん細胞の異質性とがん治療薬の選択

まず、初めに、先週の土曜日に、総アクセス件数が200万回を超えたことをお礼申し上げます。実は、この数字を区切りにブログに一区切りつけようと考えてきました。しかし、リアルタイムで起こっていることを正確にわかりやすく伝えていくことが重要だとアドバ…

二重特異性抗体??による白血病治療

暖かい2月が終わった途端に急に冷え込み、昨日と今朝は雪が舞って、冬に逆戻りだ。気温は平年並みになっただけなのだが、体は、暖かさに鈍ってしまったのか、ついていけない。明日の朝はマイナス7度まで下がり、月曜日は19度まで温度が上昇する。ジェットコ…