アブスコパル効果(abscopal effect)は免疫効果だ

今月号のNature Medicine誌に「Programmable bacteria induce durable tumor regression and systemic antitumor immunity」という論文が報告されている。遺伝子操作をした無毒の細菌を利用して患者さんの体内で免疫反応を誘導する治療法が生k際されている。…

患者さんに悪い知らせを告げる術を身につけよ

「Deep Medicine」という本をようやく読み終えた。集中して読む時間が確保できず、長時間かかってしまったが、最後の「Deep Empathy」の章が印象に残った。人工知能(AI)を利用した医療が進むであろうことを紹介した本だが、最後の部分は私が今の日本に医療…

北京滞在20時間の出張

2年ぶりに北京に行ってきた。日中医療協力のシンポジウムでの特別講演のためだ。日本での仕事に追われているので、金曜日の夕方の便で行き、土曜日の夕方便で戻ってきた。 搭乗時刻の20分前に北京空港のラウンジに行ったところ、到着便が遅れているので出発…

多様性を考えた健康指導体制の確立が重要

昨夜は、札幌医科大学で特別セミナーを行った。科学の内容だけでなく、がん研究に臨む姿勢が少しでも伝わったのであればと願っている。そして、夕食後、中村研究室OBの北海道同窓会が開催された。北大・札幌医大出身・在籍中の12人が集まってくれた。今でも…

猫も杓子もマイクロバイオーム研究

腸内には多くの種類の細菌が存在しており、それが種々の疾患に関係していることがわかってきている。その腸内細菌を調べて、病気などとの関りを調べる研究がブームとなっている。 治療と関係するものでは、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)患者に、…

熱意と誠意のある医師を探す

今日の昭和大学での市民講演会が無事に終わった。元北海道がんセンターの西尾正道先生の講演は、相も変わらず、日本の現状をビシバシと叩く痛快な話だった。放射線診断と放射線治療が一つの診療科で行われている大学が多い現状を紹介されたが、確かにこれは…

明日(6月22日)、昭和大学でがん講演会

明日、昭和大学上條記念館(東急旗の台駅すぐ)で「最先端のがん治療はここまできた」というタイトルの一般講演会に参加する。 座長は木内 祐二先生(昭和大学医学部)と深尾立先生(HAB研究機構)で、演者は、 私「がんゲノム治療:あなたに合わせた個別化…

個人情報保護法と遺伝子差別禁止法

今日は、彦根まで往復してきた。内閣府「AIホスピタルプロジェクト」での倫理的法的社会的問題を検討する委員会の委員長に就任していただいた滋賀大学の位田学長に、現状の倫理的な課題を報告することと今後のプロジェクトに関連する倫理課題などについてご…

誰のための、何のための遺伝子パネル検査?

昨年の6月13日に日本に帰国した。あっという間に過ぎた1年間であった。そして、これほどまで忙しくなるとは思っていなかった。昨日から日本がん分子標的治療学会のために大阪に来ている。昨日の朝、家を出て大阪に向かい、13時から会議と私自身の基調講演、…

20年目の命日、そして、日本帰国からまもなく約1年

1999年6月1日に母は天国に旅立った。亡くなる瞬間に間に合わなかったは、今でも心に棘となって刺さっている。それから、早いもので20年になる。大腸がんだった。今なら、複数の治療オプションはあるが、当時は非常に限定的だった。主治医だった私の同級生に…

がん遺伝子パネル検査と全ゲノム解析;不思議の国、日本

昨日、シスメックス社と中外製薬が申請していた「がん遺伝子パネル検査」が保険診療の対象になることが決まった。しかし、56万円という価格は驚きだ。もちろん、高額すぎるという意味でだ。保険診療では多くが3割を患者さんが負担することになるが、患者さん…

PD-L1陰性のがんにPD-1抗体がなぜ効くのか?

がん細胞が作り出すPD-L1とリンパ球の表面に存在しているPD-1とが相互作用するとリンパ球の働きを抑える。このPD-1とPD-L1が手を結ぶのを、PD-1/PD-L1、いずれかの抗体で妨害するとリンパ球が活性化され、結果的にがん細胞を叩く。これが、免疫チェックポイ…

複数病院で同一検査を受ける非効率医療の回避策

今、台北松山空港にいる。台中の亜洲大学(アジア大学)で開催された、「人工知能とプレシジョン医療フォーラム」で基調講演を行ってきた。このアジア大学は、台中市内にある中国医薬大学と姉妹大学に当たり、急速に認知度が上がっている大学である。この大…

CAR-T細胞療法に1回3349万円の薬価

CAR-T細胞療法に3349万円の保険薬価がついたとメディアが騒いでいる。この治療法はB細胞系の腫瘍に限られているし、1回の治療が標準的なことや日本では欧米に比べて患者数が少ないので医療費の総額を大きく押し上げる可能性はほとんどない。 治癒の可能性も…

スマートウオッチが心電図を読み、危険な高カリウム血症を推測

10日間の連休中、持て余した時間を利用して、様々な分野の読書に励んだ。まだ、完全に読み切れていないが、その1冊が「Deep Medicine」というハードカバーの本である。著者はEric Topolという方で、循環器内科医だそうだが、Google Scholarではゲノム、ウエ…

自分に従わないと診療拒否する医師!

私が医者になったころ、がんの手術は拡大手術が流行だった。化学療法が進歩し、放射線療法もがん組織だけ狙い撃ちする技術が格段に向上し、今や、拡大手術は過去の遺物となった。乳がんなど、術後に肋骨の形が皮膚の下に浮き上がってくるような姿が普通だっ…

令和の目標に「がん患者に希望と笑顔を!」

平成から令和と移り変わる瞬間を私は静かに迎えた。 New England Journal of Medicine誌に「Anti-BCMA CAR T-Cell Therapy bb2121 in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma」というタイトルの論文が掲載された。新しい種類のCAR-T細胞療法の多発性骨髄腫…

医学・医療分野にも波及した米中摩擦

Science誌に「Exclusive: Major U.S. cancer center ousts ‘Asian’ researchers after NIH flags their foreign ties」(NIHが外国との関係に関して注意勧告したあと、米国の有名がんセンターがアジア人研究者を追い出した)という表題の記事が掲載されてい…

外科医が行うべき研究とは?

今日は大阪で開催されている日本外科学会に招かれ、特別企画「外科医が行うべき研究とは」の中で、「患者さんから学び、患者さんに還元する研究を!」というタイトルで講演を行った。私は、腫瘍外科医として勤務した時に感じた疑問を出発点として、研究を始…

基本を知らないがん研究者

若いがん研究者と話をする機会があったが、驚くほど基本的な事項が理解できていなかった。胚細胞変異と体細胞変異の区別ができない。「遺伝性がんの原因遺伝子は遺伝性のがんに特別なものではなく、それらの遺伝子が体細胞で変異をするとがんにつながる」な…

5G時代に生き残れるのか?

久々に成田空港にいる。シカゴー羽田直行便がスタートしてからは、もっぱら羽田空港を利用していたし、東アジアも羽田から多くの都市へのアクセスがいいので、成田を利用する機会がなくなっていたので、新鮮な感じがする。今年は5月に台湾、9月に韓国、10月…

「ゲノム・遺伝子」教育の充実を

「報道特集」という番組で、中国・深圳の様子が紹介されていた。ゲノムバンクでは、細菌・ウイルスから植物・動物に至るまで、膨大な種類のゲノム(DNA)が収集され、保管されているという。絶滅危惧種のDNA,もしくは、細胞を保管しておけば、絶滅していても…

できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい

マリナーズのイチロー選手が引退した。その記者会見で「できると思うから挑戦するのではなくて、やりたいと思えば挑戦すればいい」との発言を残した。最近の若い人たちは「できそうにないので、難しそうなので、挑戦しない」という人が多いように感じている…

膵臓がん治療に光明か!?

Nature Medicine誌に「Protective autophagy elicited by RAF-MEK-ERK inhibition suggests a treatment strategy for RAS-driven cancers」というタイトルの論文が報告されている。RASというのは代表的ながん遺伝子であり、人のがんでこの遺伝子の異常が見…

ゲノム医療入門―5:リキッドバイオプシー

内閣府の「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトの中で、リキッドバイオプシーの実装化に取り組んでもらっている。日本は、海外で実用化された技術に周回遅れで取り組んでも、それが世界の最先端と大ぼらを吹ける人たちが国をリードして…

人工知能の可能性

病院に人工知能を導入する必要があると言うと、多くの人が無機質で冷たい診療現場になることを危惧する。しかし、私は医療現場に人間らしさを維持するためには、人工知能の補助が不可欠だと考えている。 患者さんの観点で医療現場を見た場合、ストレスと感ず…

もうすぐ、あの日から8年

あと4日で大震災から8年になる。数日前のニュースで、被災地で独居老人の孤独死が続いているとの報道があった。こんな状況は予測されたことだ。家族を失い、家を失ったご老人には大きなストレスがあったはずだ。震災後、津波被害者の健康管理に重点を置くこ…

ゲノム医療入門―4

米朝関係は、メディアの予想がほぼ総外れになる結果となった。予測不能のトランプ大統領の面目躍如とも言えるが、これでまた先の見えない国際情勢となった。「トランプはやはりトランプだ」という評価で傷は浅いように思うが(ロシア疑惑は別だが)、北朝鮮…

日本人の民意

「辺野古移設を反対する人が過半数を超えた」と現政権に反対する人たちが大喜びしている。では、普天間基地はどうするのか?この基地移転問題は、危険度の高い普天間基地を他に移すことから始まったものだ。一旦落ち着いていた状況を一変させ、このような混…

ゲノム医療入門―3

今日は病気のゲノム・遺伝子診断に移りたい。といっても、これにも多様な種類が含まれているので、大きな分類をするだけでも大変であ ゲノム・遺伝子を利用した病気に関わる医学研究・医療を大きく分類すると、遺伝的な病気や病気のリスクの診断(遺伝性疾患…