2022-01-01から1年間の記事一覧

ワクチン接種率の低下

4月に医薬基盤・健康・栄養研究所の理事長に就任して、あっという間に年の瀬を迎えた。3月25日に閣議で決定され、4月1日に着任という一般常識からは考えられない慌ただしい引っ越しで大阪に戻ってきた。この研究所の世間一般での認知度は低いが、研究活動の…

これでいいのか寝とぼけ日本;薬用植物の供給危機!

漢方生薬の国内自給率は10%程度に過ぎない。80%以上を中国から輸入している。 風邪に対してよく用いられる葛根湯には、葛根、大棗(タイソウ)、麻黄、甘草(カンゾウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)などが含まれている。臨床…

医療革命を起こそう!

昨日、日本医師会館で「内閣府AIホスピタル」プロジェクトのシンポジウムがあった。この5年プロジェクトは来年の3月末で終わりを迎える。参画するグループが決まったのは2018年秋なので、実質的には4年強だが、12研究機関の発表を聞いていて感慨深いものがあ…

蚊に刺されやすい人?;皮膚からのカルボン酸の匂い

10月末のCell誌に「Differential mosquito attraction to humans is associated with skin-derived carboxylic acid levels」という論文が報告されている。「蚊を惹きつけるかどうかは、皮膚からのカルボン酸の量による」という内容である。 われわれも蚊に…

古希を迎えた憂鬱

とうとう古希を迎えてしまった。古来は希であったので古希と呼ばれるそうだが、平均寿命80歳を超える今、70歳など稀でもない。もともと数え年(若い人にはこの数え年がすでに理解不能な言葉だが)だったので、正確には昨年古希を迎えたことになるのだが、今…

英国研究者の憂鬱

英国でこれまでになかった規模で高学歴の人たちのストライキが起こっていることがNature誌で報じられていた。「“An attack on the future of science”: why UK researchers are striking」というタイトルの記事で、英国の研究者たちが、給料と研究環境改善を…

最も高額な(1回3.5百万ドル=約5億円)治療薬Hemgenix;第9因子欠損型血友病治療薬

11月22日に、血液凝固に関わる第9因子の欠損で起こる血友病に対する遺伝子治療薬Hemgenixが米国FDAによって承認された。血友病は薬害エイズの際に注目されたが、血液を凝固する因子の遺伝子異常によって起こる病気で、第8因子欠損型が最も多い。これまでは血…

ドーハの奇跡+高齢化社会の医療の変換点

サッカーで日本がスペインに勝った。ボール支配率14%の勝利だ。2点目のゴールのきわどさも含め、ドーハの奇跡だ。もちろん私は夜中にサッカーを見るような体力は残っていないし、今日は内閣府「AIホスピタル」プロジェクトの評価委員会だったので、居眠り…

内閣府 AIホスピタルプロジェクト、あと4ヶ月;心のケアができる医療を!

内閣府の「AIホスピタル」プロジェクトは、あと4ヶ月で終了する。いくつかの目標をもって取り組んできたが、最大の目標は「心温まる医療」を取り戻すことだ。今週の月曜日の全体を取りまとめる会議で、5つの医療機関の代表から発表があった。プロジェクト発…

イーロン・マスク:長時間の激務か、退職か?

ツイッターを買収したイーロン・マスク氏が「長時間の激務か、退職」を迫ったことで議論が沸騰している。何事かを成し遂げるなら必死でやりとげる覚悟が必要だと思うので、よくぞ言ってくれたと思っている。特に、地盤低下の著しい日本には必要だと考えてい…

殺人か、遺伝的要因による突然死か?

「Trials of the Heart」というタイトルの記事が11月10日号のNature誌に掲載されている。「オーストラリアの最悪の連続殺人犯」と称された女性が無実の罪かもしれないというかなり衝撃的な話だ。 この女性は4人の子供を突然死で失っている。乳幼児突然死症候…

コロナ感染症の二峰性?;脊髄損傷患者の希望

コロナ感染症は、これまでの解釈では、すでに第8波に入っている。ただし、いつまで発熱すればPCRや抗原検査をし、数を数えることを継続するのかは疑問だ。しかし、これまでのインフルエンザや風邪は冬季にピークが見られたのだが、コロナ感染症の夏と冬の二…

世界研究者ランキング

Research.comから世界研究者ランキングが公表された。 https://research.com/scientists-rankings/best-scientists トップ1000の研究者のうち、10名以上の研究者がリストアップされている国を上位から下表に並べたが、圧倒的に米国、そして、英国の研究者が…

「もののあわれ」を失った医療;患者や家族に寄り添う医療を取り戻せ!

「もののあわれ」とは、折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生ずる、しみじみとした情趣や、無常観的な哀愁である(ウイキペディア)。「源氏物語」に源流があるとされるそうだが、目で見た悲哀に満ちた患者さんの姿や耳で聞いた患者さんの苦悩…

大阪急性期・総合医療センターの悪夢;全国統一のクラウド電子カルテの導入を!

大阪急性期・総合医療センターがランサムウエアに乗っ取られ、診療ができない状況が続いている。この医療センターは、かつて大阪府立病院と呼ばれていた病院だが、私は1978年の1年間、この病院の救急医療専門診療科に勤務していた。当時はERというよう…

レトロウイルス感染症から守るために、レトロウイルス遺伝子をゲノムに取り込んで利用している?

右目の眼瞼下垂症の手術を受けた影響で、しばらく行動制限がかかっていた。眼瞼下垂手術と聞くと難しいが、わかりやすく言うと美容整形の二重まぶたのような手術だ。原因となる、たるんだまぶたの筋肉を引っ張り上げて右目がパッチリとなった・・・・と思う…

がん対策基本法に魂を!

本題に入る前に、病腎移植で話題になった宇和島徳洲会病院の万波誠医師が亡くなられたニュースに接して悲しくなった。患者さんとの間に金銭授受があったと騒がれたが、目の前の患者さんを助けたいという純粋な気持ちから始めたものだった。私は当時の徳洲会…

性犯罪被害者のDNA情報を勝手に使うな!?

今日は9月23日以来、久しぶりに家でゆっくりした。ゆっくりしたといっても論文の校正と原稿書きに大半を費やしてしまった。1990年代には元旦だけ休み、364日働き続けたこともできたが、今は2週間で体が悲鳴をあげ、歳をとったと実感する。しかし、当時、娘か…

知的サービス産業「思いやりのあるAI医療」による日本の誇りと経済の立て直しを!

2001年にノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授が、日本は製造業から「知的サービス産業」への切り替えが重要だと、NHKのインタビューで述べていた。私もそう思う。 「知的サービス産業」の代表例は、言うまでもないが医療だ。 東京オリンピックを誘…

見かけだけのエリートが牛耳る社会;「貧しても鈍しない」日本であって欲しい

今週のNature誌のニュースに「Most US professors are trained at same few elite universities」(米国の大学教授の大半は限られたエリート大学の出身だ)という記事がでていた。「米国の大学における終身制身分職員の80%は、学位制度のある大学のうちの20%…

免疫チェックポイント阻害剤治療は不妊につながる?

Nature Cancer誌に「Checkpoint inhibitor immunotherapy diminishes oocyte number and quality in mice」(免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法は、マウスのデータでは卵子の数も質も低下させる)というタイトルの論文が掲載されている。細胞障害性…

スマートウオッチで心房細動を見つける;要介護人口を抑えるはずだ!

Nature Medicine誌に「Smartphone-based screening for atrial fibrillation: a pragmatic randomized clinical trial」というタイトルの論文が掲載されている。3年前のNew England Journal of Medicine誌に「Large-Scale Assessment of a Smartwatch to Ide…

TBS報道特集「道化師様魚鱗癬」(ピエロと呼ばれた息子)を見て思うこと;違っていても尊重し合う教育を!

先ほどTBSの報道特集で「道化師様魚鱗癬」(Harlequin-type ichthyosis)という先天性の皮膚疾患を持つ子供さんと両親の姿が紹介されていた。ウイキペディアには「道化師様魚鱗癬は、 ABCA12遺伝子の変異によって引き起こされる。この遺伝子は、皮膚の最外層…

米国人の寿命が2.7歳短くなった!

New York Times紙によると、米国人の寿命が2.7歳短くなったそうだ。 米国人全体でみると 2019年 78.8歳 2020年 77.0歳 2021年 76.1歳 となっている。 ネイティブ米国人だと 2019年 71.8歳 2020年 67.1歳 2021年 65.2歳 と、なんと6.6歳短くなっている。 コロ…

人工知能が夜間の呼吸パターンでパーキンソン病の進行を診断?

Nature Medicine誌に「Artificial intelligence-enabled detection and assessment of Parkinson’s disease using nocturnal breathing signals」というタイトルの論文が掲載されている。 パーキンソン病の診断や病気の進行の判定する有効なバイオマーカーは…

国の責任放棄;全数把握を自治体が決める?!

岸田総理が「コロナ感染陽性者の全数把握をやめてもいいかどうか自治体の判断に委ねることにした」とアナウンスした。この無責任な姿勢は大きな批判を呼び、支持率のさらなる低下は避けられないと思う。自治体の突き上げの結果だが、自分では何もしないこと…

凋落する日本;国の将来を託せる若手エリートを育てよ!

コロナ感染者数は再増加の傾向と大騒ぎしているが、ここ2-3日の増加はどう考えてもお盆休みで検査数が減ったため、検査がずれ込んだことが要因だと判断される。多くの人が帰省した地方自治体では過去最高の感染陽性者を記録しているが、感染者の多くを占める…

日本の科学技術分野での存在感低下が止まらない!

科学技術・学術政策研究所が「科学技術指標2022」を公表した。コロナ感染症に対する非科学的対策から見て取れるように、この国の科学分野での国際的地位はどんどん低下していっている。 日本から発表された全論文数は1998-2000年71,401、2008-2010年75,415、…

いつまで続くのか、科学なきコロナ対策

現場か回らなくなってから、登録システムを変える、全例報告義務なしにするなどと言っている。呆れたコロナ対策だ。コロナウイルス感染症を科学的に考えて、対策を練ることができないままに、場当たり対策の連発だ。数週間前に、感染力が強く、医療機関で欠…

電気代の高騰は研究機関も直撃

2021年4月に存在していた706社の新電力会社のうち、2022年3月までに倒産・廃業・撤退していた会社の数は31社に及ぶ。日経BPの6月14日付けのニュースではこの数は104社と急増している。 ロシアのウクライナ侵攻でヨーロッパの天然ガス価格が高騰して電気代が…