米国大統領選挙における究極の2択を他山の石にすべし?

米国大統領候補のテレビ討論会が開催された。最後の方は、ガキの喧嘩かと思わせるようなひどいものだった。

私は、アメリカがん学会とアメリカ臨床腫瘍学会で、当時副大統領だったバイデン氏の講演を生で聞いたことがある。流れるように淀みなく、そして、格調の高い講演で、米国の政治家の科学的リテラシーの高さを感じた。10年近い時間が流れ、あの時のバイデン氏はどこに行ってしまったのだろうかと思わざるを得ないテレビ討論会の出来栄えだった。

あらゆる生物は歳をとり、衰え、そして死を迎える。日々、それを実感している身として、バイデン氏の老化現象を目の当たりにしてかなりショックだった。20年前、10年前の自分と比べると、運動能力は落ち、頭の回転もつるべ落としのように低下しているのがわかるので、他人事とは思えない。ニューヨークタイムズもバイデン氏に撤退を勧めているが、引き際が難しい。

バイデン氏は「トランプ氏を大統領にしてはならない」との気持ちが強いのだと思う。そして、トランプに勝てるのは自分だけだと思い込んでいるのだろう。しかし、テレビ討論会の姿やテレビで頻回に流されている「転ぶ」姿を見ると、このままでは、トランプに負けてしまうのではと思ってしまう。

一方のトランプ氏は相も変わらず、自分がすべてについて正しく、自分への批判は「魔女狩り」だとの主張を繰り返している。平気で「黒を白」と言い換える精神力は、驚きとしか言いようがない。意識して嘘を言っているというよりも、自分に都合のいいことだけが記憶として残り、その記憶に基づいて、息を吐くように嘘が出てくるのではないだろうか?私の近くにもそんな人間がいたが、彼は自分に都合のいい部分だけをつなぎ合わせて、自己主張を繰り返す。それで最後に辻褄が合わなくなってきて自滅しても、平気の体だった。

米国民の4人に一人は、この二人の候補者に共に否定的だ。そして、残りの25%ずつは、積極的なポジティブな選択ではなくて、消極的にネガティブな(なってほしくない候補を振り落としての)候補者選択のようだ。どちらがよりましなのかという究極の選択を迫られている米国の不安定さは国際政治に影を落としている。

と他国を憐れんでいる余裕はこの国にはない。この政治家に任せれば、日本はよくなるだろうと期待の持てる候補者がいないのだ。今後の国のかじ取りを託す政治家には科学的リテラシーが絶対的に必要だ。今朝、孫正義さんがテレビで、「人工知能の能力は、4年で1000倍になる。オリンピックを3回迎えるとその能力は10億倍になる。」とコメントしておられた。ひょっとするともっと早いかもしれない。10年少しすると、人工知能の能力が今の10億倍になる社会を見据えた制度設計が必要だ。政治家は目の前10センチメートルしか見えていない人が多い。

10年以上遅れた人工知能を追いかけるだけのような施策では、日本は立ち直れない。近い未来を見据えた戦略と戦術が求められる!