特定の人種を優遇する大学入試制度は違憲?!

1960年代から導入されていた米国のアファーマティブ・アクション(積極的に差別を是正するための措置)が憲法に違反しているとの判断を米国の連邦裁判所が下した。米国の大学ではマイノリティー(黒人やヒスパニックなど)の入学枠を広げているところが多かった。これに対しては、保守層が白人・アジア人に対する逆差別であり、入学の合否は人種ではなく、個人個人の能力を元に判定すべきであると主張して裁判が行われていた。

今回の連邦裁判所の判決は、マイノリティー優遇は「法の下の平等」に反するとのことだ。連邦裁判所判事は、終身制であり、判事が亡くなるか、自分から辞めると言うまで務めることができる。トランプ大統領の時代に、3名の保守派の判事が任命され、今の米国連邦裁判所は保守系の判事の数の方が多い(保守派6名対リベラル派3名)。この影響もあって、昨年、妊娠中絶を禁止する評決があった。

バイデン大統領は、この判決に反発しているようだが、この法案の内容には、11年以上米国で暮らした私にも少なからず違和感がある。しかし、三権分立の長の立場からはどうかと思う。もし、日本の総理大臣が、最高裁の判決はけしからんとひっくり返そうとすれば、三権分立は成り立たない。裁判の判決結果が公平・公正かは疑問があるが、そもそも、トランプ政権も、上下院とも共和党が勝利したのも選挙の結果だ。その結果として、保守系の判事が任命された。こうなることは予測されたことなので、議会の多数派を失った民主党の責任なのだ。連邦裁判所の判決がおかしいと思うのでれば、選挙というプロセスを経て、リベラル派を多数にするしかない。判事は終身制なので、何年かかるかわからないが。

さらに、連邦最高裁判所は、バイデン政権が打ち出した学生ローンの返済を一部免除する措置について、「無効」と判断しました。行政の決定権を逸脱しているという理由だが、これまでにローンを返済人たちからも不公平との声も上がっている。これはバイデン政権の経済対策にとっても重しになりかねない。

何が公平で不公平で、何が差別で何が逆差別か、同じ現実を見ていても視点によって判断が分かれる。警察官、消防士、自衛隊員など身体的能力に差がある男女を同数にすると、現場は動かなくなるだろう。なんでもかんでも差別だという批判をする時代ではなく、公平で公正な区別を考えなければ、世の中はだんだんとおかしな方向に向いていくだろう。「法の下の平等」はすべて同じように扱うことではない。多様性を理解し尊厳のある態度で互いを尊重し、多様な個性と真剣に向かい合う必要があるのだ。