トルコのインターンシップ医学部学生;輝きに満ちた若者たち

5月にトルコ・イスタンブールで開催されたALIS会議で講演した後、二人の医学部学生から夏季休暇中にインターンとして医薬基盤研究所で研修したいとの依頼があった。

ALIS会議はAcıbadem University(アシバデム大学)の医学部1-3年生が主体となって開催する国際会議で、トルコだけでなく中東諸国・アフリカ諸国からも参加する会議だ。参加者の大半が10-20歳代という活気に満ちた会議であった。今年のテーマは「ゲノム」であったので私が招かれた。700-800人が参加する結構大きな会議で、それを学生だけですべてを取り仕切る体制に感心したものだ。

話を戻すと、日本語を全く話せない異国の学生(20歳前後)を2か月だけ受け入れるのは、かなり大変なことだ。特に事務系に英語で書類手続きを処理できる人がいないと研究者に多大な負担がかかり、そこでとん挫することになる。幸い、それを処理できる人材を採用していたので円滑に進んだ。

一人は7月中旬から来て一昨日帰国し、もう一人は8月中旬から来てあと3週間ほど滞在する。結果としては、期待していた以上に、彼らにも我々にとっても非常に良かったし、刺激にもなった。半分は夏休み気分で来るのだと予想していたが、来日1週間後、「時間を持て余すので、実験だけでなく、もっと他にも勉強をしたい」と言ってきた。そこで、「総説でも書いてみるか」?と尋ねたところ、「ぜひ書きたい」と即座に返事をしたので、「Deep Medicine」という500ページほどの本と最近の医療AIに関する論文いくつかを渡し、これらを読んで医療に関するAIをまとめてみてはと提案した。

医学部の2年生を終えたところなので、ハードルを高くしすぎたと思っていたのだが、1週間少し経った頃、粗削りだが、しっかりした内容の文章を書きあげてきた。これには驚いた。全体の構成もしっかりしているし、各項目のまとめ方も驚くほどだ。研究所の人と京都に遊びに行った時も、電車内で論文を読んで勉強していたそうだ。何回か、アドバイスをして書き直し、8月の下旬には投稿できるレベルに仕上がった。わずか6週間でだ。

褒美に奈良に行きたいというので奈良を案内した。平城京跡・奈良公園・東大寺に連れて行った。奈良公園の鹿との触れ合いが楽しみと言っていたが、鹿せんべいを手に取った後、多くの奈良が突進してきて、シャツをかまれたので怖くなったようだ。もう一つ鹿せんべいを買うか聞いたところ、青ざめた顔でもういいと返事した。

二人目の学生も向上心が高く、総説を書いてみたいと申し出てきた。アウトラインを示してから、本を一冊と10篇の論文を手渡した。テーマは免疫ゲノム学の重要性だ。10日ほど前にテーマを示し、今週初めに全体の流れを確認した。この週末はゆっくりできると思っていたが、昨夜論文を送ってきた。内容もすばらしい。これで私の週末は論文校正に費やされる?!

この二人だけでなく、シカゴにいた時のアフリカからの留学生も含めて、日本の若者たちに比べると最大の差は「目の輝きだ」。国のために、患者さんのためにという気持ちが輝きを醸しだしている。結果が平等だという間違った教育をやめて、チャンスは平等だが、頑張ったものが恵まれる国つくりが必要だと思う。