雪バエは自分の足を切断して生き延びる

Nature誌の研究ハイライト欄に「Break a leg: How snow-loving flies survive the cold」という記事が掲載されていた。原著はCurrent Biology誌に掲載されているが、アクセス権がないのでこのハイライト欄の元論文は読んでいない。

ハエは夏しか見かけないので雪の中を飛んでいる姿を想像するのは難しいが、雪を愛する雪バエが存在するそうだ。米国の西海岸に近い山脈は冬季になると雪が降る。私がかつて住んでいたソルトレークシティーは盆地で冷え込み、豪雪地帯で冬季オリンピックも開催されたが、雪が降り積もる中でハエを見た記憶はない。安アパートには小さなゴキブリがよく徘徊していたが、それも懐かしい思い出だ。

話を雪バエに戻すと、地元の登山家が見つけた雪バエの20%が少なくとも1本の足を失っていたという。Nature誌のビデオには、温度が下がった際に1本の足が落ちている姿が写っていた。マイナス7度くらいになり、足が冷えて凍ってくると、冷えが胴体部に及んでくるので切断するという。ビデオからは、凍って単に折れやすくなっただけなのか、意図的に切断したのかよくわからないが、確かに足が1本取り残されていた。

われわれも寒冷地に行くと手足が凍って凍傷になるし、血流が途絶えると壊死が始まる。もちろん自ら切断することもない。ハエも、へモリンホと呼ぶ血液に相当するものがあるそうで、足から凍り始め、これが重要な器官に波及すると生命の危機に至るので、凍結し始めた足から切断しているそうだ。

生命体が生き延びるためとはいえ、過酷な条件でそれを克服するのは大変だ。と考えていると、北朝鮮の対日本戦でのサッカーでの選手たちの無法ともいえる振舞いも、自国で生き延びるための壮絶な体制の反映かもしれないと思えてきた。水を奪った際の態度は許容限度を超えているが、拳を振り上げて他国の水を奪わざるを得なかった選手に悲哀を覚えた。