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医療の変革につながるネットワーク構築

前回のブログを受けて、複数の患者団体の方から連絡をいただいた。3月・6月の帰国にあわせて会合に参加するなど、積極的に前に進めて行きたい。小さなグループからでも地道に活動を開始したい。背負う荷がますます重くなるかもしれないが、ここは踏ん張って一歩でも、半歩でも足を進めるしかない。

いろいろと考えをまとめるために、かつて作成した資料を振り返って眺めていた。そして、2007年、10年前に作成した資料が目に留まった。ある企業と、日本の医療をどのように変革すべきかを議論していた際の資料である。10年前に纏めたものとしてはよくできているではないかと、一人自慢の誉め手なしだ。下記が、キーコンセプトとして掲げたものである。

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次は、具体的に進めるべき課題で、下記のようにまとめていた。f:id:ynakamurachicago:20170117023953j:plain

(1)は今では、人工知能と名を代えて研究が進んでいる。(2)も、ようやく、国内での整備が進みつつある。(3)も、人工知能と呼ぶべきかどうかは別として、エラー回避のための、IT技術の導入が進みつつある。(4)は日本医師会が鍵である。「かかりつけ医」ではなく、「健康管理医」のような形で、開業医の役割が広がっていけば、ヘルスケアが一気に進む。このためには、病気になってから医療保険が働くのではなく、病気予防に対しても保険がカバーできるような制度の変革が必要だ。(5)も、結局は、病院で利用しているシステムの互換性の問題だが、画像の形で診療情報が管理できるようにすれば、あとは、患者さん、一般国民の意識次第だ。

3つ目はメディカルレコード(健康診断情報・診療情報)を患者さん自身が管理する際の利点・欠点をまとめたものだ。スマートフォンに保管する事は難しくないし、クラウドの保管して個人認証システムで医療機関でアクセスする方法もある。これだけ、ITインフラが進めば、個人情報保護さえ留意すればいくらでもできる。健康診断の見落としなどに対するチェック機構にもなるだろうし、大規模データベースを患者さん個人の参加型で進めることもできるだろう。f:id:ynakamurachicago:20170117024013j:plain

かつて、「俺の患者に手を出すな」と脅してきた、前近代的な医師の姿勢にあきれ返ったことがある。患者さんの情報は、患者さん自身に属すべきものだ。患者さんも、自分のため、同じ病気に罹るかもしれない家族に役立つなら、一緒に進めるといった気持ちではなく、われわれの子供、孫、ひ孫の世代に貢献するための気持ちを統合していくことが大切だと思っている。もちろん、「日の丸」が世界中の健康を守るシンボルとなれば、本望だ。

ynakamura@bsd.uchicago.edu

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がんを治癒させるために一緒に行動を!

先週の寒波はどこかに消え去り、雪ではなく、雨が続いている。来週後半の予想気温は、東京と全く差がない。昨晩は雪がほんの少し降ったが、明日には消えるだろう。今週末から、来週にかけて重要な会議が続くので、今週は資料作りで忙しい。人生最後の勝負に挑むための準備で、精神的には充実している。周りをねじ伏せてでも、前に進むしかない。

そんな中、消化管神経内分泌腫瘍に、またひとつ、新しい治療法が加わった。今日の「New England Journal of Medicine」誌に、「Phase 3 Trial of 177Lu-Dotatate for Midgut Neuroendocrine Tumors」という第3相試験の論文が掲載されていた。Dotatate(ドータテート)とはホルモンの一種であるソマトスタチンの類似物質であり、ソマトスタチン受容体に結合する。今回の対象は、このソマトスタチン受容体を産生している神経内分泌腫瘍である。177Luとはルテチウム(Lutetium)の放射線同位体であり、半減期が約60日で、安定体(原子量175)になる際に、ベータ線とガンマ線を放出する。もちろん、私の記憶にはない原子番号だ。イッヒ、リーベ・・・・・・と原子記号を覚えたが、その時には、こんな大きな原子番号があったのか????

 

今回の治療法は、ソマトスタチン類似物質を運び屋にして、そこにルテチウム177を結合し、がん細胞のソマトスタチン受容体を介して、この放射性同位体をがん細胞内に届け、がん細胞内で放射線治療をするという原理である。われわれは滑膜腫瘍に特異的な分子であるFZD10の抗体を作成し、これを運び屋として、ベータ線を出す90Y(イットリウム90)という放射性同位体を結合させ、90Yをがん細胞内に届けるのと同じような仕組みだ。抗体やホルモンなどを利用して、がん組織内に放射線同位体を蓄積させ、これから放射線を放出させて、効率的に放射線治療を行うのである。

 

合計229名の患者をランダムに2群に分けた結果、20ヶ月での無増悪患者(腫瘍が大きくなっていない患者)の割合は、コントロール群で10.8%であるのに対して、177Lu-Dotatate群では65.2%であった。腫瘍縮小率は、コントロール群3%に対して、177Lu-Dotatate群では18%であった。中間解析時点での死亡していた患者数は、コントロール群26名に対して、177Lu-Dotatate群では14名であった。グレード3・4の好中球減少症、血小板減少症、白血球減少症は、177Lu-Dotatate群でそれぞれ、1%、2%、9%の頻度で認められたが、コントロール群ではゼロだった。

 

その臨床的有効性については疑問の余地はないと私は考えるが、日本のメディアなら、「副作用が問題だ」と騒ぐかもしれない。彼らの座右の銘は、「副作用は危険だ。座して死を待て」なのだろう。患者さんや家族の気持ちに寄り添っているつもりなのだろうが、がんを克服するには、何が必要かを全く理解していない。

 

日本でがん医療を変革する大きな流れを作るためには、患者さんたちとの連携が不可欠だ。今年の目標の一つはこれだ。「がん患者に生きるための希望を」などというコメントは封印して、もう一段上の目標、「がんを治癒させる」ために一緒に闘って行きたい。心ある患者団体の方は、是非、連絡してきていただきたい!

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1回の注射で6ヶ月コレステロールをコントロール!?

今年も一週間が経過した。時間の流れがさらに速く感じられる。シカゴは、最高気温がマイナス二桁の日が続いて、冷凍庫の中にいるようだ。それでも、3日前には、運動不足を避けるために、歩いて通勤したが、正面から風を受け、鼻水タラタラで、翌日はさらに冷え込んだのであきらめた。アパートの1階には運動器具がいくつかあるのだが、なんとなく苦手で、昨日は階段登り、今日は水泳でカロリー消費・体力維持に努めた。雪は依然としてまったくないが、近くの湖面はすでに氷で覆われている。科学博物館裏の二つの池は、完全に氷で覆われ、スケートができそうだ。

 

そして、今日は、ずぼらな人に適した、高コレステロール症を治療するための画期的な治療法についての紹介だ。今週の「New England Journal of Medicine」誌にsiRNAの皮下注射を1回すると、LDLコレステロールが少なくとも180日間、半分程度に低下させるという論文が掲載されていた。siRNA は、遺伝子の働きを抑える技術で、特定の遺伝子の働きを抑えることができる。

 

siRNAにグルコサミンの1種を結合させることによって、肝臓の細胞に効率的に届ける方法だ。一般的にはRNAは血中で速やかに分解されるが、分解されないように少し形を変えたものを利用していた。siRNAを利用してがん細胞の増殖に必須の遺伝子の働きを抑えると、がん細胞を殺すことができるが、実用化には至っていない。狙ったがん細胞にだけ、効率よくsiRNAを届ける方法が難しいためだ。

 

今回の論文ではコレステロールの産生に重要なPCSK9という遺伝子の働きを、肝臓の細胞で抑えることによって、1回の注射で、最低でも約6か月間コレステロールの低下を維持できることを示したものだ。有害事象として、軽度の咳・筋肉痛・咽頭炎・頭痛・背部痛・下痢があったようだが、治療と関連するかどうかは不明だ。毎日薬を飲み続けるのか、半年、あるいは、それ以上の間隔で、皮下注射を1回受けるのか、の選択を迫られたら、どちらを選ぶだろうか?私なら、毎日、薬を飲み続けるのは面倒だし、歳のためか、飲んだのかどうかわからなくなる時があるので、注射の方が楽なように思う。ただし、高脂血症はないので、現時点では不要だが。

 

それにしても、治療技術の進歩は目覚ましい。諦めないで継続するのは精神的にも大変だし、資金的にも大変だ。といって、それを嘆いてばかりいるのは、今年は止めにした。自分たちで頑張ればいいのだ。倒されない限り、逆風でも、鼻水を垂らしながらでも、前に進むしかない。しかも、物乞いのようにお上にお金をねだるのではなく、自分のアイデアで、自分の力で資金を集めて頑張ればいいのだ。集められなければ、引退。単純な話だ。

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急がれるがん医療体制の刷新!

シカゴは雪のない新年を迎えた。元旦の夕方に動物園でのライトアップを見学に行ったが、少し寒さを甘く見すぎた。真冬の服装をしていったつもりだったが、体の芯まで冷え切って、頭がくらくらしてきた。その影響か、昨日は体が重くて重くて、血糖も高かった。しかし、こんな時は、無理矢理に体を動かすのが一番だ。じっとしていると、体も、頭もすっきりしないまま時間が過ぎていく。そこで、マンションの階段を32階から1回まで降り、そして32階まで走って(のつもりだったが、大半は歩いて)上った。途中から心臓は鼓動を高め、脈拍は100を超え、息が荒くなった。後半の10階部分は、青息吐息で2-3階ごとに深呼吸だった。さらに、夕方にはジムに行って500メートルを泳いだ。お陰で体は暖まり、今朝の血糖は正常値だ。脚の筋肉痛は激しいが、頭もすっきりし、年始の仕事を効率よく片付けられた。

今日は人生最後のチャレンジの年の幕開けだ。後悔を残さない生き方をしたいと改めて思う。がん分子標的治療薬開発を人生の最優先課題としてから、15年が過ぎた。ペプチドワクチン、抗体医薬品、分子標的治療薬、そして、オーダーメイド医療と前には進んでいるが、15年前に思い描いていた姿には達していない。急がねばと思いながらも、臨床応用は研究室からは距離を置いた所で進められるので、じっと見守るしかない。成人に達した子供が独り立ちをした時、親の想像していた姿と違う方向に進んでも、それを見守るしかないのと同じような感じだ。しかし、最近はそれでいいのかという思いが強い。他人から何と言われようが、最後まで自分で引っ張るしかない。

がんの分野には革新的な変化が起こっている。免疫療法という選択肢が確立され、3大療法が、外科療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法の4大療法と変わった。10年前からその兆しははっきりとあったが、その頃の日本は免疫療法を否定する人たちが圧倒的多数だった。その大多数を代表する人が、今は、自分が免疫療法を生み出したかのような顔をしている。がんペプチドワクチン療法に最低評価を下し、完璧に否定した人だ。メディアもみんなで持ち上げる。日本は節操のない変な国になったものだ。

と、またまた、愚痴を零してしまったが、私の挑戦の話に戻したい。がん医療は、予防・診断・治療法選択・新規治療開発のすべての分野において、急激な変化が起きている。ゲノム情報や人工知能変化を医療現場にどのように取り入れるのか、もはや、部分的に考えるのではなく、10年後に起こるであろう姿を描きつつ、考えなければならない。最近注目されている高額医薬品問題と、それに連動する医療保険制度の維持にも考慮した、効率的で、安全で、より安価な医療体系を作る必要があるのだ。患者さんのためにも、国のためにも、時間とお金の無駄使いをしている余裕はない。

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(TCR: T細胞受容体)

図は、私の思い描くプレシジョン医療の姿だ。これを現状の簡単なマイナーチェンジの繰り返しで、システムとして実現化することはかなり難しいし、無駄が多い。がんの診断、治療、そして軽視されがちな予防が、ゲノム、人工知能、免疫療法というキーワードをもとに、20世紀とは全く異なった様相となっている。すでに絵が描かれたキャンバスを上から塗り直しても、美しい絵は描けない。まっさらなキャンバスに絵を描くくらいの気持ち出なければ、美しい絵は描けない。

DNA解析技術がこのように急発展し、自分のゲノムやがん細胞での遺伝子異常を、簡便に、安価で調べることができるとは、10年前の私自身も予想していなかった。血液で再発が超早期に見つけられるなど、思いもよらなかった。これからも、想像をはるかに超えるような変化が起きるだろう。今の日本のように、後手後手で、欧米の技術を導入していては、医療現場に導入した頃には、導入した技術が時代遅れとなる。医療立国を目指していながら、自他の状況を分析することを怠っているのだ。こんな火を見るよりも明らかなことから目をそらしていては、米中の狭間に埋没する。

明日からは、最低気温がマイナス10度を下回る日が続く。気合だけでは乗り越えられない歳になった。米国に追いつき、追い越す日までは健康に留意しなければ!

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2017年への決意

今年の締めくくりも、また、新たな免疫療法だ。今日発刊の「New England Journal of Medicine」に「Regression of Glioblastoma after Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy(キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法によるグリオブラストーマの縮小効果)」という論文が掲載されていた。IL13Ra2というグリオブラストーマ(最も悪性度の高い脳腫瘍)で特異的に発現している分子を標的にした新規免疫治療法の速報だ。バイデン副大統領は、このグリオブラストーマによってご子息が亡くなられたことで、がん対策「Moonshot」計画を率いることになった。

キメラ抗原受容体T細胞とは、がん細胞特異的な分子を認識する抗体分子を、T細胞の表面に発現すると共に、T細胞の持つ細胞傷害機能を保持したT細胞だ。図には黄色と赤色の二つのT細胞刺激因子を示している(二つ有するのを第3世代のCAR-T細胞)が、この論文では、刺激因子として4-1BBと呼ばれる分子しか使っていない(第2世代のCAR-T細胞)。CAR―T細胞療法は、血液系の腫瘍でその臨床効果が実証されてきたが、固形がんに対してはその有効性は明らかにされていなかった。

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 今回は、最初は摘出した腫瘍部分に、後に脳室内にこのCAR-T細胞を注入して、グリオブラストーマに対する臨床効果を調べた結果を報告したものだ。前半はCAR-T細胞注入部分ではがんがコントロールされたと述べられていた。図には納得いかない部分もあったが、専門家が目を通しているのだから、間違いないだろう。

後半の脳室内注射では、明らかに効果が認められている。MRIでもPETでも効果が歴然としている。グリオブラストーマは、すい臓がんと同じくらい、悪性度の高いがんで、これといった治療法もない。外科的手術も、正常な組織をできるだけ傷つけないようにギリギリで切除するため、断端部にがんが残ることが多いし、がんが存在している部位によっては手術をすることさえ難しい。そして、放射線療法にも抵抗性だ。治らない病気を治すことができるようにする。これが私の人生のゴールだ。

繰り返し述べているが、何もしなければ、短期間に確実に死を迎える患者さんたちに挑戦するチャンスを与えるのが米国で、リスクに過大にこだわり、結果的に患者さんたちから生きる可能性を奪っているのが日本だ。この悲しい現実を眺め続けてきた。しかし、私は、患者さんに生きる可能性を提供したい。そして、それを、是非、日本でやってみたい。米国に来て5回目の正月を迎えようとしているが、悲しんだり、嘆いたりするのではなく、日本国内で大きな「日の丸」を掲げてみたいと強く思うようになってきた。米国でできることが、日本でできないはずがないのだ。現実を直視しない倫理委員や学ぶことのないメディアから、的外れな批判を受けるだろうが、患者さんと一緒に、新たな道を切り開きたい。

気力と体力がいつまで続くか、不安が無いわけではないが、来年は私にとって「人生最後の挑戦」をする年となるだろう。これまでに築きあげてきたものを総動員して頑張ってみたい。日本国内で、患者さんに希望を提供するために!

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安倍総理・真珠湾訪問;戦後の節目

雑事

今朝、アパートを出る時に、ドアマンから「おはよう」に続いて「Shinzo Abe visited Pearl Harbor yesterday」と話しかけられた。彼はアフリカンアメリカンだが、片言の日本語で毎朝声をかけてくれる。しかし、日本の総理大臣が真珠湾を訪問したことを持ち出すとは思いもよらなかった。戦後生まれの私だが、12月8日が誕生日という私にとっては、大きな歴史的な瞬間であった。

オバマ大統領の広島訪問、安倍総理の真珠湾訪問という平和を願う2大イベントにも関わらず、2017年には何が起こるのか全く不透明な状況だ。平和を願うだけで、平和が続くならいいが、現実はそのようにはなっていない。何かの弾みでバランスが崩れれば、世界が再び戦火にまみれる可能性は否定できない。国としての抑止力の必要性を避けて通れない時代だ。

今日はジカ熱に関する話題を紹介したい。12月15日号の「New England Journal of Medicine」誌にブラジルのジカ熱に関する続報がでていた。結論は以前にもこのブログで紹介したことと同じである。妊娠中にジカ熱に感染すると半数近くで、死産や新生児の脳の発達異常などの影響がでる。感染拡大当初は妊娠初期に感染すると影響が出やすいと報道されていたが、妊娠の週齢に関係なく、影響が出るようだ。

温暖化のため、蚊が生息する地域が拡大していること、人から人に感染することから、来夏に向けたジカ熱対策が極めて重要となる。鳥インフルエンザの拡大で、韓国では卵の価格が上昇している。人類は感染症との戦いを続けてきたが、常に新興感染症というリスクに晒されている。交通手段の発達に伴って、地球の反対側で起こっている事態が、いつ自分たちの身に降りかかるかもしれないのだ。

感染症対策は国際的なレベルでの対応が不可欠だが、国益と国益がぶつかることが増えてくれば、グローバルな対応に支障が出る事は確実だ。米国の疾病対策センターにはリアルタイムで情報が集まるようになっているが、ここにサイバーアタックなどがあれば、感染症の世界的な拡大リスクが一気に高まる。バックアップ用に日本も積極的に感染症対策に取り組めばいいと思う。

安倍総理のスピーチを読みながら、戦争という重荷を次世代に負わせないという決意が伝わってきたが、医療という分野でもっと日米協力が進展できないものかと考えていた。今の日本の実力では、相手にされないだろうが、医療分野で日米にとどまらず、世界平和のためにも、日中米共同プロジェクトなどを進めて欲しいと願わざるを得ない。もし、それががん分野なら、私は喜んで参加したい。

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国際的になった白衣を着た詐欺師;国の恥だ!

医療(一般)

今、羽田空港にいる。ようやくシカゴに戻ることができる。今回は、がんプレシジョン医療を実現化するために、多くの人たちに会って、協力をお願いした。しかし、具体化してきた場合には、シカゴから指示を出すだけでは済まない。この5年間、物理的に離れていることによって、多くの問題に直面した。一たび、軌道がずれると、それを修正するには、とてつもない大きなエネルギーが必要となる。したがって、お願いした人たちにすべて任せることなく、陣頭指揮を執る覚悟で臨んでいる。しかし、連日の外食で、体重が増えてしまった。血糖を調べるのが怖いくらいだ。明日からは、しっかりとダイエットしなければ。

 

そして、表題の話題に移りたい。シカゴに移った後も、友人・知人や患者さんから、がん治療に関して相談を受ける機会は多い。そして、この出張中には、中国の知人から、彼の友人が日本で受けようとしている免疫療法に関しての相談があった。その医療機関の情報はなかったし、患者さんの病状についての詳細はわからないが、添付されていた、その医療機関(クリニック)から提案されていた治療内容と金額は驚愕だった。そして、それを見ながら、怒りがこみ上げてきた。

 

治療のリストには、スーパーNK細胞+DNAワクチン(どのDNAを使うのか、もちろん情報はない)+樹状細胞療法+サイトカイン療法(どのサイトカインを使うのかは?)+p53遺伝子治療で合計1700万円とあった。何だ、このp53遺伝子治療は??日本の医師法下では、医師と患者の合意があれば何でも自由診療で許されるのだろうが、科学的な観点からは、どこから見ても立派な詐欺だ。

 

ビザを取得する手伝いをして、ビジネスとして、このような治療法を海外の患者さんにも提供しているようだ。まさに、白衣を着た詐欺師だ。こんなことを野放しにしていれば、日本の医療全体に対する信頼を傷つけることになるのは確実だ。日本という国は、高品質の製品を生み出すことで、国際的な信用を得てきた国だ。命を預かる分野で、こんなことをしていては、他の分野での信用に悪影響を及ぼす。

 

免疫療法も、このままでは、悪貨がはびこり、良貨を駆逐する状況で、科学的な評価をすることがますます難しくなる。このようなペテン医療が、厚生労働省の会議で議論の対象になることはない。こんなインチキなど存在しないことが前提だから、「見ざる、聞かざる、言わざる」となってしまうのだ。

 

そして、保険収載されていない臓器のがん患者さんでも、自由診療で抗PD-1抗体治療をいくらでも受けることができるのだ。ただし、お金さえあればだ。しかも、それらのデータが科学的に分析されることはない。築地の新聞社など、このような案件にこそ、真正面から取り上げればいいと思うが、広告収入に影響があるためか、頬かむりだ。

 

藁にもすがる思いの患者さんや家族を食い物にする人たちは、許せない。高橋英樹さんの桃太郎侍のように、悪を退治しよう。怒りをエネルギーにするのは、あまり健全とは思えないが、国際的な白衣を着た詐欺師には怒りしかない。

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