座右の銘が「面従腹背」;これで教育行政は大丈夫か!

昨日の国会中継を少しだけ見た。メモがあるのかどうか、チマチマとした質問が続いていたので、馬鹿馬鹿しくなってシャットダウンした。役所は重要な会議のメモを残すことなど常識だ。かつて在職していた医療イノベーション推進室での会議でさえ、メモが作成され、各省庁に配布されていた。短期間とはいえ、政権を担っていたのだから、メモが作成されていたのかどうかは知っているはずだ。ましてや、審議官に再三再四同じような質問をした議員は、内閣官房にいたではないのか?役所がどうなっているのか、自分の経験に基づけば、もっと内容のある質問ができたはずだ。

 

あの質疑を聞いていると、追及をしているポーズだけの茶番劇に思えてならない。民主主義と言えば響きは美しいが、美しい声を揃えても、岩盤規制・利権擁護の壁を壊すのは絶対無理だと思う。規制改革は民主党政権の旗印ではなかったのか、与党時と野党になった今とを比べて、180度言っていることが違うブーメランを連発するから支持率が一桁になっている現実を直視すべきではないのか?また、左翼系メディアは、メモの存在が明らかになったことで大はしゃぎしているが、役所内部の情報がダダ漏れになっている状況は、国として大きな問題ではないのか?

 

そもそも文部行政のトップだった人が、私の座右の銘は「面従腹背」ですと、堂々とテレビで宣言するなど、呆れかえって言葉が出てこない。教育行政を担う人が、「面従腹背」を誇って、子供たちにどんな教育ができるのだ。大人が言ったことが面白くなければ、「とりあえず、ハイと答え、心の中でアカンベーと舌を出しておけ」というのか。国のシステムを歪めたと非難しているが、この座右の銘に沿って、教育を歪めていないのか検証してほしい。

 

役所のシステムは破綻しているし、そんな尻馬に乗って、国会の時間を浪費している議員に給料を払うなど税金の無駄だ。テレビを見ていても、自分たちの思想に則って、一方的な考えを中心に番組を制作しているのが見え見えだ。医療保険制度が破たん寸前まで来ているし、がん対策、高齢化対策、受動喫煙問題など、国として大きな課題が山積しているなかで、この小学生のような国会の議論は悲劇だ。受動喫煙などの問題も、選挙の際の投票指標として、自分たちの主張をテレビの前でぶつけ合って欲しいものだ。

 

話は突然変わるが、「Business of Oncology」という雑誌に、「Financial Impact of Cancer Drug Wastage and Potential Cost Savings From Mitigation Strategies」という論文が発表されていた。これは、抗がん剤は1バイアルごとに一定の量の薬剤が入っているが、一人の患者さんに、そのバイアル全部を使い切るわけではない。この際、残った分は廃棄される。この廃棄される分は、全くの無駄となる。それが薬剤費全体の15%強になると試算されていた。これを効率よく利用する方式に変えれば、大幅な薬剤費の節約となる。ゴミ袋に廃棄されていた、大量の処方薬を目にしたこともある。税金が原資となる医療保険制度が維持可能かどうかの瀬戸際だ。みんなが少しずつ努力するだけで、総量として大きな無駄の回避ができるはずだ。各政党には、医療保険制度の維持のための施策を議論して欲しいと願っている。

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二つの事実+評価が二転三転の免疫療法

コミー元FBI長官の議会での証言とトランプ大統領の発言が完全に対立している。コミー氏は「食事は大統領から誘われた」「忠誠を求められた」「フリンの捜査をやめるように言われた」と言い、大統領は「コミー氏が求めてきた」「忠誠など求めたことがない」「捜査の中止など求めていない」と発言した。コミー氏は「トランプ大統領を信用できないので、詳細なメモを残していた」と証言し、トランプ氏は、公務員の守秘義務違反の可能性を示唆したし、以前には、食事中の会話の録音テープが存在することを匂わせていた。テープを明らかにすれば、白黒がスッキリするはずだ。しかし、かつて、ニクソン大統領は、残されていたテープで辞任に追い込まれた。どちらかが嘘をついていることは確実だが、米国ではAlternative Factという二つの相対立する事実が並立する不思議な事象がまかり通っている。

 

日本でも、メモが残っているのかどうか、メディアが騒いでいるが、意向を忖度するメモがなぜ重要なのか、よくわからない。獣医学部を設置する必要性の是非が最も大切だと思うのだが、なぜか、肝心の論点から逸れたままだ。本当に必要な状況なら、利権を排除しようとした真っ当な政策であり、それをトップダウンで進めることのどこに非があるというのか?官邸サイドから圧力があっても、褒められても、批難されることはないはずだ。メモの存在の有無などどうでもいいことではないのか?安倍政権の足を引っ張りたいメディアに振り回されることなく、正論で議論して欲しいものだ。対ロシアという国益の根幹にかかわる米国の問題に比して、どうも問題が矮小化され、不思議の国のアリスのようだ。

 

免疫療法の分野でも、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating LymphocyteTIL)を利用した治療法に対する反応は複雑だ。その評価が、シーソーのようにギッコンバッタンとしている。一時はもてはやされたものの、その後に評価が下がった。私も懐疑的であったが、考え直す必要があるかもしれない(詳細は別の機会に)。免疫チェックポイント抗体が有効な患者さんのがん組織には、がん細胞の特異的抗原を認識し、がん細胞を殺すリンパ球が存在しているのは確実だ。それらを体外に取り出して、増やし、患者さんに戻せば、抗腫瘍効果が期待されてもおかしくない。

 

ASCOの会議中に面談した研究者は、がん組織のリンパ球には、善玉と悪玉がいると確信していた。善玉は、がんと闘っているリンパ球で、悪玉はがん細胞を守り、場合によっては増殖を手助けしているようだ。この善玉リンパ球と悪玉リンパ球を見極めるアプローチの一つとして、われわれのT細胞受容体解析に興味があるとのことだった。どうも、TIL療法で臨床効果が認められる患者さんでは、増やして体内に注入したリンパ球が長期間存在し(正確には、がん細胞と戦うために、増殖し続けているのだと思う)、効果がない患者さんに注入したリンパ球はすぐに消えていくようだ。

 

多発転移のある患者さんで、がんの原発部位を切除すると、転移部位が急速に増悪すると聞かされたことがある。おそらく、この原発部位では、がんは少しずつ大きくなっていても、そこでがん細胞と闘っているリンパ球が存在していて、全身に善玉リンパ球が供給されていたのかもしれない。原発巣を切除することで、善玉リンパ球が消滅し、一気に悪化したのかもしれない。と、どうでもいいことが頭に浮かぶ。免疫系は複雑だ。しかし、がんの治療の進歩には欠かせない分野となってきた。TIL療法を提供している医師・研究者と是非、一緒に研究したいものだ。

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Make Our Plant Great Again

トランプ大統領のパリ協定離脱宣言、解雇されたFBI元長官の議会での公聴会など、政治の話題が尽きない米国だ。G7や中国の首脳も、米国のパリ協定からの離脱を非難していたが、その中でも洒落た一言でトランプ大統領を皮肉っていたのが、フランスのマクロン新大統領だ。「Make our planet great again」は自国の利益しか考えない米国大統領への痛烈な一言だ。米国は世界の警察官の立場を自ら放棄し、今は、ビジネスの損得を優先する国となった。米中会談後、にわかに北朝鮮への強硬姿勢を転換したが、何かデールが成立したのかと勘繰りたくなる。しかし、メディアを通して聞こえてくるトランプ大統領批判は、今でも支持率が40%近くある現実とは少し乖離しているようだ。

 

明後日のコミー元長官の話に多くの人が関心を持っている中、ASCO2017 (米国臨床腫瘍学会)会議は閉幕した。話題の中心は、AACR(米国癌学会)と同様、免疫療法とリキッドバイオプシーだ。免疫療法に関しては、昨年、一昨年の熱気は少し醒めたように見えた。免疫チェックポイント抗体の治験が800件も実施されているのだから、どの会場でも金太郎飴を切ったような感じの発表だった。しかし、会場で話をした多くの医師が、子供を含む老若男女を問わず、がんの種類も問わず、マイクロサテライトマーカー検査で遺伝子が不安定と判定されたがんに対して、免疫チェックポイント抗体が承認されたことには、驚いたと言っていた。これはがんの臨床試験体制に大きな変革を引き起こすだろう。

 

そして、がんの種類を問わず、遺伝子異常に基づいて分子標的治療薬を選択する臨床試験(MATCH試験、以前にこのブログで紹介した)は6000症例の登録がゴールだが、すでに5343名が登録され、今年の秋には登録が終了すると報告されていた。4694名はすでに遺伝子検査の報告を受け取り、このうち835名はアクショナブル変異(Actionable Mutation=分子標的治療薬が適していると考えられる遺伝子異常)が見つかった。18%弱と少し少ない印象だが、患者さん集団に偏りがあるのかもしれない。この835名のアクショナブル変異を持つ患者さんのうち、561名が治験の登録基準を満たしていて、治療薬が投与されたとのことだった。遺伝子検査結果が分かった患者のうち、約12%だ。この数字を高いと見るのか、低いと見るのか、立場によって違うだろうが、これが現実の数字だ。NHKは期待を持たせすぎだったのは明白だ。

 

さらに免疫チェックポイント抗体では、分子標的治療薬や放射線療法との併用がかなり始まっている。私は個人的には、放射線療法やがんの凍結療法との併用がいいように思うが、これには二つの診療科の協力が必要だ。分子標的治療薬+免疫チェックポイント抗体は一人の医師が実施できるので先行して進んでいるように思える。しかし、治療費はますます膨らんで、どうなるのだろうか。

 

その観点で重要なのが、リキッドバイオプシーだ。アクショナブル変異を調べるためにバイオプシーが必要だと、バイオプシーに伴う合併症やそのコストが大変だ。米国でのバイオプシーは1100万円前後の経費がかかるので、遺伝子診断コストを加えると、150-200万円に膨れ上がる。それで、20%(上記のMATCH試験よりは甘い試算)の患者さんに分子標的治療薬が見つかるとすると、適応する患者さんを一人見つけるために1000万円弱の経費が必要となってしまう。手術材料があれば、それを利用することは可能だが、がんは経時的に変化するので、リアルタイムでのがんの情報を得る材料としても、リキッドバイオプシーが不可欠となるであろう。ちなみに、EGFRのリキッドバイオプシー診断は米国FDAですでに承認済みだ。日本は本当に遅れている。

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ASCO (米国臨床腫瘍学会)2017

今日は61日。亡き母の18回目の命日だ。亡くなる前日に母と交わした会話は今でも鮮明に脳裏に焼きついている。母の厳しかった闘病の姿が、抗がん剤を開発したいという強い想いを持ち続けることができる最大の原動力だ。私は母が19歳の時に生まれたので、来年は母が亡くなった年齢と同じ年齢になる。それまでに、少なくとも一つでも新しい薬剤の目途をつけたいものだ。時間は永遠に残されているわけではない。

そんな思いの中、2017年度のASCO(米国臨床腫瘍学会)が明日から開催される。30,000人の参加者が集う臨床腫瘍分野の世界最大のイベントである。会員であっても参加登録料は、事前登録で570ドル、そうでなければ840ドル、非会員の場合、事前登録でも930ドル、決められた期日以降は1200ドルと、10万円を上回る参加料は、日本では考えられない高額だ。この期間、シカゴ市内のホテルの宿泊料は1.5倍から2倍に跳ね上がる。ホテル宿泊料の高額さから、1年だけフロリダに会場を移したことがあるが、また、シカゴに戻ってきた。米国内だけでなく、ヨーロッパや日本、韓国、中国などからも、多くの参加者があるので、国際的なハブ空港のあるシカゴはヨーロッパや東アジアの主要都市から直行便があるので、国際的な学会を開催するには利便性が非常に高い。

学会の内容もさることながら、今の最大の関心事はトランプ大統領の提示した2018年度予算案である。NIH予算は21%カット、NCI予算は20%カット(両者で1兆円近い削減)、メディケイドという医療保険は60兆円以上のカットという信じがたい予算削減案である。NIH/NCIでは、人件費を維持したままだと、研究に利用できる予算は半減するだろう。また、医療保険を失う人が千万人単位で増加すると見込まれている。もちろん、ASCOAACR(米国癌学会)は、研究活動だけでなく、政治的な活動も盛んであり、組織として反対を強く表明している。これらの削減分を軍事費の増加と減税に回すつもりのようだが、トランプ大統領の弾劾も取りざたされる中、予算がどのように決まるのか、不透明感が漂う。医学研究にとってはきわめて重要な予算が不確定で、医学・医療関係者は不安で一杯だ。今日、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明したが、米国は自国の経済活動に励む国となり、地球単位でのリーダーの地位を放棄しつつある。

話はASCOに戻るが今年も免疫療法が大人気だ。私の研究室からも免疫ゲノム解析に関する演題などを発表する。私も講演を依頼され、お引き受けした。免疫関係で話をするつもりだったが、低分子化合物開発の話にして欲しいと言われたため、「Cancer Stem Cellを標的にする治療薬開発」のタイトルで話をすることにした。65日朝8時から始まる「Meet the Professor」というセッションだ。しかし、昨日調べたところ、このセッションに参加するためには、参加登録と追加登録料が必要なようで、参加者がいるかどうか心配だ。今から20年以上前に日本で開催された国際会議で、5人のスピーカー(海外から招聘された人もいた)を含め、500人くらい収容できる会場に6名しか(すなわち、たった一人の参加者)いなかったことがあったが?

今の臨床腫瘍学の関心事は、免疫療法とリキッドバイオプシーで、分子標的治療薬・がん幹細胞など過去の話になってしまったような印象だ。しかし、現状では免疫療法の効果は限定的であり、やはり、免疫療法の効果を高めることに加え、他のアプローチも大切だ。その一つとして興味深いのは、抗体医薬に抗がん剤を結合させて、がん細胞への傷害活性を高める方法だ。516日号のLancet Oncologyに抗HER2抗体にエムタンシンという細胞に毒性のある分子を結合させたトラスツズマブ エムタンシンの臨床試験の最終結果が報告されていた。HER2陽性進行乳がんで、すでにHER2を標的とする治療法を2種類以上受けていた患者さんに対して、トラスツズマブ エムタンシンと医師が自由に選択した治療法を比較した試験だ。2011年の9月に開始された試験で、生存率の最終結果を報告したものだ。生存期間中央値は22.7ヶ月(トラスツズマブ エムタンシン群)対15.8ヶ月(医師自由選択群)(p値=0.0007)明らかにトラスツズマブ エムタンシン群のほうが生存期間が長い。抗HER2抗体トラスツズマブ治療を受けて、効かなくなっていた患者さんでも効果があったようだ。

 

何ら科学的に証明された治療法がないがん患者さんに対しても安全性を最優先する日本社会と、人での効果は証明されていなくとも、科学的な根拠があれば積極的に臨床試験を進める米国社会。生きる権利という人権は、どちらの方が大切にされているのか、がん患者さん自身が考えて行動を起こして欲しいと願わずにいられない。

 

 

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パソコン機内持ち込み禁止?!

週末に、「米国を発着する飛行機内へ、スマートフォンより大きなパソコンの機内持ち込み禁止」というニュースが流れた。日本へ頻回に旅する私にとっては一大事と思い、記事をよく読んでみたが、現時点では、主にヨーロッパと米国を行き来するフライトへの対応になるようだ(正式には、まだ、発令されていない)。日本のニュースで、内容をよく調べずに、日米間の便も同様な措置が取られるような記事が掲載されていたが、これは明らかな誤報だ。しかし、ヨーロッパからアジア経由で、米国に来ることも可能であり、米国発着のすべての便に広がる可能性は否定できない。米国当局者の話では、パソコンの中に爆弾をセットできる危険性が現実問題としてあるようで、恐ろしい時代になったものだ。そうなれば、機内では、誰からも煩わされずに、最も長時間仕事に集中できる時間が確保されていた私にとっても、頭が痛い問題だ。発表スライドの準備を完璧に済ませて出張に出かけなければならなくなる。

 

しかし、迫り来る危険は米国内だけではない。北朝鮮が3週間連続で、ミサイルの発射実験をした上に、「日本は意地悪だから、米軍基地以外も攻撃対象にする」と言っているそうだ。米国の弱気な姿勢が明白になってきたので、日本は完全に見下されている。チンピラに恫喝され続けても、何もできないのが今の日本国憲法なのか?!日本の排他的経済水域にミサイルを落とされても、抗議するだけでは、負けイヌの遠吠えだ。昔なら、こんな行為は宣戦布告ではないのか!

 

こんな状況でも、獣医学部問題が政治的に最も重要だと叫んでいる野党とは、いったい、どこの国の野党なのだ。最重要な本質が話題とならず、本質からかけ離れた部分で時間が費やされている。最重要な問題は、「獣医学部新設が、客観的に妥当なことかどうか」だ。獣医学部新設が、客観的に必要であり、妥当であるなら、利権という岩盤規制をぶち破ったことになり、長期安定政権ならばこそ、それができたことになり、何も責められる事はない。利権まみれの規制を打ち破るために、官邸の意向が働いて何が悪いのだ。ましてや、民主党議員もそれを支援していたというのだから、今更、何を言っているのだ。

 

一部メディアは「前事務次官が刺し違え覚悟で臨んでいる」と誉めていたが、別の問題で引責辞任した後で、官邸を攻撃している状況では、「差し違え」という日本語は適切ではない。事務次官職にあって、官邸の方針に非を唱えるのが「差し違え」覚悟の行動であって、本件は「江戸の敵を長崎で」程度のことだ。獣医学部新設の適否の是非なくして、この問題を議論するのはあまりにも無意味だ。ワイドショーに話題を提供するために、政治芝居が打たれているような状況が続いているのは、どうしたものか?

 

と、そんな中、インディ500で佐藤琢磨選手が優勝したといううれしいニュースが飛び込んできた。私はこの種の競技にはあまり関心がないが、そんな私でもインディ500は知っている。日本人初だから立派だ。米国に住んでいる今、日本人選手の活躍はどんな競技であっても励まされるものだ。と喜ぶ間もなく、米国人記者が「個人的な批判をするつもりはないが、メモリアルデー(戦没者追悼記念日)の週末に日本人ドライバーがインディ500で優勝したことはとても不愉快」とツィートしたことが原因で、解雇されたというニュースが流された。明らかに日本人に対する個人的な差別的発言だ。

 

本音がポロリと出たのであろうが、日本人の私には、もちろん不愉快なコメントだ。トランプ大統領の出現から、理性というオブラートに包まれていた米国人、特に白人の本音が露骨に現れるようになってきたと感ずる。トランプ大統領の表現が、オブラートに水を吹きかけて、オブラートを溶かし、苦い薬が溶け出してきたかのようだ。G7を見ても、世界をリードする米国という姿は見えない。すべてに損得勘定が優先するようだ。

 

米国で平等を叫ぶのは、平等でない現実が存在するからだ。しかし、この問題、心の奥底の問題であり、法律ではなく、教育で解決する努力が大切だ。しかし、個人的には腹は立つが、この記者の解雇というのは過激すぎる。人種差別的であるために会社も過敏に反応したのだろうが、何かギスギスしすぎているようで悲しい気もする。

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抗がん剤治験方法の大変換;臓器別から遺伝子タイプ別へ

時代は変わった。それを実証する薬剤承認が、FDAから昨日公表された。成人・小児に関わらず、標準治療法で効果がなかった(なくなった)進行固形がんに対して、免疫チェックポイント抗体の利用が承認されたのだ。

治療が適用となるがんに対するバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性が高いもの(microsatellite instability-high (MSI-H))とDNAミスマッチ修復遺伝子欠損(mismatch repair deficient (dMMR))があげられている。

「マイクロサテライト」とはゲノム中に存在するCACACACA・・・・のように単純な配列が繰り返す配列を指す。DNA修復遺伝子異常があると、下記の図にあるように、DNAの複製時にエラーが起きるため、CACA・・・・・などの繰り返しの長さが変化し、正常(N)とがん(T)での長さが異なる(黒いバンドの位置が違ってくる)ことが多い。これは、このCACACA・・・・・と繰り返している回数が、正常とがんで異なっているためで、遺伝暗号が変化しやすくなっている(変異を起こしやすい)ことを意味する。

 

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一般的にDNA修復遺伝子異常のある場合には、がん細胞での遺伝子異常数が多くなる。アミノ酸に変化を起こすと、それを含むペプチドが、がん特異的な抗原を生み出すので、マイクロサテライト不安定性の高いがんやDNA修復遺伝子異常のあるがん(DNAシークエンスでわかる)は、がん細胞特異的な抗原が多い。したがって、がん組織における、これらのがん特異的抗原(ネオアンチゲン)を目標とした、がんを攻撃する免疫活動が高くなっている。そして、少数例ではあるが、これらのがんでは免疫チェックポイント抗体が効きやすい可能性が示されていたのである。

このようなエビデンスをもとに、大腸がん、子宮体がんなど15種類の異なるタイプのがん患者149名を対象として治験が実施され、39.6%の患者でがんの縮小、あるいは、消失が認められたのだ。治療法のない患者さんに対して、この頻度は文句なしに高い。効果があった患者さんの78%が6ヶ月以上の効果が持続したと報告されていた。

もはや、時代は大きく変わりつつあり、臓器に拘らず、科学的エビデンスに沿って、抗がん剤開発が進むことを実感しなければならない。小児がん、稀少がんなどと区別している時代ではないのだ。がん患者団体はこのような流れを受け止めて、一致団結して新しい流れを模索して欲しい。

がん患者をサポートするマギーズ東京

今、羽田にいる。短い滞在だったが、日曜日の講演会には刺激を受けた。自らの苦しかったがん体験から患者さんを支援するマギーズ東京を立ち上げた、鈴木美穂さん(日本テレビアナウンサー)の発想・行動力に心底から感動した。私の講演よりも、鈴木さんの話の方が、はるかに迫力があったし、会場に来られた方に勇気を与えたと思う。もっとゆっくり話を聞いてみたかった。日本の若い人たちは、元気がなく、行動力がないと常々愚痴をこぼしているが、彼女のパワーは素晴らしいと思う。

 

マギーズ東京のホームページには、そのコンセプトを「造園家で造園史家でもあったマギー・K・ジェンクス氏は、乳がんが再発し「余命数ヶ月」と医師に告げられた時、強烈な衝撃を受けたといいます。にもかかわらず、次の患者がいるのでその場に座り続けることが許されませんでした。その時、がん患者のための空間がほしい。あと数ヶ月と告げられても生き続ける術はないかと、担当看護師のローラ・リー(現CEO=最高経営責任者)と必死に探したそうです。・・・・・・・がん患者や家族、医療者などがんに関わる人たちが、がんの種類やステージ、治療に関係なく、予約も必要なくいつでも利用することができます。マギーズセンターに訪れるだけで人は癒され、さまざまな専門的な支援が無料で受けられます。がんに悩む人は、そこで不安をやわらげるカウンセリングや栄養、運動の指導が受けられ、仕事や子育て、助成金や医療制度の活用についてなど生活についても相談することができます。のんびりお茶を飲んだり、本を読んだりするなど自分の好きなように過ごしていてもいいのです。マギーは、そこを第二の我が家と考えました」と記されている。(http://maggiestokyo.org/concept

 

マニュアル化した医療を淡々とこなす医師が増えてきた今、患者さんの心を支えるこのような活動は重要だし、もっと広げていってほしい。彼女の取材記者と言う立場をうまく活用した行動姿勢は、驚嘆に値する。本来ならば、医療関係者がしっかりと患者さんを受け止めるべきなのだが、今の医療現場では、燃え尽き症候群という医師の閉塞感・自信喪失が広がり、そのようなゆとりもない。医療供給体制が限界を超え、その弊害が患者さんに及んでいる状況だ。

 

標準化医療の旗印の下、患者さんに「あなたの5年生存率は70%です」と統計的な数字が無機質な言葉で伝えられる。70%という数字に安堵を覚える人はあまりいないだろう。30%の患者さんが再発して亡くなるという現実に、自分がその30%に入るのではという不安が広がり、その不安は30%の不安ではなく、100%だ。

がんと診断されても、がんで亡くなる患者さんは半分を下回るようになったものの、がんは死の病、再発するとダメとの思いが頭から離れない場合が多い。

 

ましてや、再発・余命という言葉を、患者さんの顔も見ずに伝える医師は、患者さんの気持ちに忖度することなどできるはずもない。マギーズ東京だけに終わらず、もっともっと患者さんを支える活動が広がって欲しいと願っている。講演会後に、鈴木さんから「イリノイ州に住んだことがある」とお聞きして、さらに応援したい気持ちが膨らんだ。

 

PS:「がん患者は働かなくていい」発言で、一昨日、このブログでも批判した議員が「もっと健康的な受動喫煙のない職場で働けばいい」という趣旨だと釈明していた。この発言は、火に油を注ぐような言い草だ。がん患者さんが安心して働く職場を提供する国会議員としての職務をどう考えているのか疑問だ。そして、このコメントは、「受動喫煙のない職場がもっと健康的だ」と考えているように受け止めることができる。それなら、なぜ、飲食店での全面的な禁煙に賛成しないのか?支離滅裂だ!

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