Natureの3月30日号のニュース欄に「Stressed plants ‘cry’-and some animals can probably hear them」というタイトルの記事が掲載されていた。そのまま訳すと、「ストレスを受けた植物は叫び声をあげ、ある種の動物はおそらくそれらを聞きわけることができる」である。
元となる論文はCell誌に掲載されているようだが、申し訳ないがそれを読む時間がないので、このNature誌に基づいてここに掲載する。ここで言う植物の受けるストレスとは、充分な水分補給ができていない(枯渇)状態か、一部が切り取られた状況だ。子供は脱水になると様々な症状からぐずるし、外傷を受けると痛い痛いと声を上げる。それと似たような状況になると、植物も空気中で伝わる音を出すとのことだ。
タバコやトマトが、水が十分でない環境になると、水や栄養分を運ぶ導管から音が生ずるようだ。吸い上げる時に生じた泡がはじける音かもしれない。小麦やトウモロコシも渇水状態になると音が生ずると言う。もちろん、人間が聞き取ることのできない20キロヘルツ-100キロヘルツの超音波だ。人間は20ヘルツから20キロヘルツしか聞き取れないので、聞こえないだろうが、例外的に植物の出すハイピッチの音を聞き取ることができる人がいるに違いない。
先日話をしている時に、人間の視力は2.0が最高だと信じていた人がいたが、これは視力を測定する表の最高値が2.0なので誤解しているようだ。また、昔、アフリカの一部の部族で視力が数十の人がいるとテレビで見たことがある。私の経験でも、絶対に見えないと思った小さな字を読むことのできる若い眼科医がいた。標準的な尺度で測れない人が必ずいるのだ。しかし、彼が、近視の研究をしていたのは、中村研究室七不思議のひとつだ。
話を戻すとマイクロホンで収集できる音は、植物が普通に育っている時には1時間に1回程度だが、異常事態では30回を超えるとのことだ。コウモリなどはハイピッチ音を聞くことができるが、それが意味のある事かどうかは分からない。しかし、植物がストレス下で発する音(声)を聞き取ることができれば、植物の健康状態のモニタリングに利用でき、農業が変わるかもしれない。
と思いつつ、医師が患者さんの心の叫びを聞くことができれば、もっと心温まる医療ができるのではと考えが飛んだ。心の叫びは、表情をしっかり見て、言葉の震えを感じ取ればできると思うのだが?人工知能が人間の記憶容量を上回り、人間以上に考えることが確実な状況となった今、医師の人間力が非常に重要となる。心の叫びを感じ取れる人間力が求められる。