花咲く日をみんなで迎える努力をしよう‐50 ;ここまでくると、ワクチン、ワクチン、ワクチンだ!  

このブログも6月21日、7周年を迎える日で最終回を迎える。もともとはシカゴから、がん患者さんに新しい情報を伝えるために始めたが、この1年は、コロナ感染症流行に対してあまりにも世界標準からかけ離れたコロナ対策に、国のコロナ対策批判が増えてしまった。正直なところ、日本という国に対する国際的な信頼度はかなり低下したように思う。G7会議で「開催を支持する」と言うコメントがでるのか、「開催への努力を支持する」コメントとなるのかで今後の方針が変わってくるだろう。

ワクチン接種が進んでいる米国もヨーロッパもすっかり様変わりしつつある。しかし、この国の懸念材料は、東京や大阪の大規模接種会場での予約率は急低下していることだ。小林幸子さんではないが、「もしかして」、ワクチン接種を受ける人の割合はあまり増えてこないかもしれない。もう一つの懸念は、インド株(デルタ株)の感染力が高く、血管病変も強いことだ。末梢血管が閉塞して手指を切断するケースもあると報告されている。高齢者のワクチンが予定通りに7月末までに終わったとしても(?)、感染する人は若者中心なので、2-3か月以内の感染再拡大は必至だ。

ワクチン接種と変異株対策が急務だが、6月10日号のNatureに「Adjuvanting a subunit COVID-19 vaccine to induce protective immunity」というタイトルの論文が報告されていた。コロナウイルスのスパイクタンパク質のうち、ヒトの細胞に結合する部位のペプチドを利用してウイルスを中和する抗体やT細胞を誘導したという。mRNAワクチンはmRNAの情報をもとにスパイクタンパクを作ることで免疫を誘導するのだから、直接ペプチドを打つことは有効で当然だ。今や、ペプチド合成技術は進化したので、この方向性はこれからの流れだ。

しかし、竹中平蔵氏という人の発言を聞いていると、こんな人の意見を聞いているから日本はおかしくなったのだと思う。今日は「ワクチンの遅れは総理大臣が早く承認しろと言ったのを厚生労働省の怠慢で遅くなった」と発言したようだ。はっきりと言って、こんなレベルの人が大臣をしていたのかと思うと背筋が寒くなる。薬剤の承認を総理大臣が決めていいなどと考えているなら、この人はおかしい。科学と政治を混同している非常識極まりない発言だ。何を目的にオリンピック開催を煽るのかと勘繰りたくなる。

そして、とうとう、東京都と神奈川県のコロナ感染陽性者数が先週土曜日を上回った。人の流れがかなり増えているので当然だと思うが、緊急事態宣言下でも増加傾向になってくる状況では、この先が相当心配だ。オリンピックを開催してもしなくとも、ワクチン接種を加速するしか、この国を救う方法はない。ただし、党首討論で、「ワクチン接種は1日100万回を超えた」と総理は発言したが、公式なものでは1日100万回にははるかに及ばない。私はコロナ接種を応援すべく、厚生労働省のアプリに登録したが、ウンともスンとも言ってこない。とにかく、ワクチン、ワクチン、ワクチンだ(検査も不可欠だが!)

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花咲く日本を迎えるために;医師免許を持つ基礎研究者もワクチン接種に協力を

オリンピックをやってもやらなくても、コロナ対策の最優先事項は、ワクチン接種の拡大だ。打ち手を増やす際の問診や注射の権限を議論しても時間がかかる。法的な壁を考えなくていい方法は、医師免許を持つ基礎医学研究者の動員である。

 

日本を救いたいと思っている方、自分も何か力になりたいと思っている方は、是非、厚労省の「新型コロナワクチン接種医師確保事業」に登録してほしい。 

 

私も今朝登録した。迷惑がられるかもしれないが!

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花咲く日が遠い遠い日本-48;党首討論という名の禅問答

党首討論で「海外では、PCR検査をしても感染拡大が起こった」と言う。

では、オリンピックで毎日PCR検査をするのはどうしてなのか?安全安心のためのPCR検査ではないのか?

 

「私権の制限は日本ではできない」と言う。

必要なら国会で法律を作ればよかったのではないか?

 

「1964年の東京オリンピックは今でも印象に残っている」と言う。

オリンピックの思い出を残すのと、人の命を守ることのどちらが大切なのか?多くの人の命を奪うリスクがあっても、オリンピックの感動が必要かどうかが問われているのだ。

 

私も東洋の魔女には感動したし、アントン・ヘーシンク選手が日本柔道を負かしたことも、ローマ大会で金メダルの「裸足」のアベベが、東京では靴を履いてマラソンで2連覇したことも思い出となっている。柔道はオランダ人と話をする時のきっかけになるし、シカゴで私の研究室にいたエチオピア人は、私がアベベの話をすると喜色満面となり、母国の英雄を知っている私に尊敬のまなざしを向けた。党首討論でクドクドと述べなくても、オリンピックの意義は多くの日本人が理解している。安全安心が見えてこない現実に不安を抱いているのだ。

それにしても、党首討論というより、禅問答と呼んだ方がふさわしい内容に落胆した。

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AIホスピタルプロジェクト(3)

日本の医療のデジタル化は大きく遅れている。その象徴のひとつが、私も体験したワクチン接種券の二重配布である。私は4月中にワクチン接種を受けたが、一カ月以上過ぎた5月に区役所からワクチン接種券が送られてきた。保険証を通して個人情報が紐づけされているはずだが、接種券配布前に情報が共有されていないことが明らかだ。市町村のワクチン接種予約と国によるワクチン接種予約の二重予約も報道されていた。一方の予約取り消しをしてほしいというのはその通りだが、なかなか繋がらない電話をかける気にならないだろう。制度が整備されていないのだから、取り消しに何時間も電話をかけ続けて欲しいという方が間違っている。システムができていないのだから、役所も個々の照合は面倒だ。心配なのは、今後、ワクチン接種証明書が必要となった時にその確認が問題なくできるかどうか心配だ。

マイナンバーカードと保険証、そして、保険証と健診・診療情報がつながれば、ワクチン接種はもっとスムースにできたはずである。台湾では、台中の病院で受けた検査情報を、台北の病院で共有することが可能なので、重複検査は不要である。国民の健康と命を守るためには、大震災があっても、大水害があっても、旅先や出張先で体調に異変が生じても、個人個人の診療情報を即座に知ることが必要だ。そうすれば、救える命を救える可能性が高まる。東日本大震災時の体験をまったく生かそうとしない国の姿勢は大いに疑問である。ただし、これは自民党だけの責任ではなく、旧民主党政権の罪も大きい。

そして、救急搬送先を探すために、救急隊員が病院に電話をかけ続けるなど、昭和のシステムから進歩がない。私が救急医をしていた40年以上前と何ら変わりがない。救急処置中に電話がかかってくるのも煩わしかった。一刻を争う処置をしている時に無神経にかかってきた新聞社やテレビ局も面倒だった。今なら、広報室が対応してくれるだろうが、処置室に電話がかかってきたものだ。

この救急時の連携については、救急車は総務省、 病院は厚生労働省という縦割りの弊害が、一本化したシステム構築を阻んでいる。救急車内で得られる種々の情報が、患者さんが病院に到着する前にリアルタイムで病院で待っている救急医に届けられれば、治療がわずかでも円滑に進められるはずだ。今の体制では助けられない患者さんを助けることができる可能性も高まる。

大病院では、病室や手術室は診療科単位ごとに割り振られているので、なかなか柔軟な運用ができない。また、共通に利用できる診断機器類も、診療科単位になっていると効率的な利用ができない。診察室も、午後遅くになっても多くの患者さんが待っている診療科がある一方、他の診療科ではすでに診療が終わっていることも少なくない。このような課題は、AIといった高度なものではなく、簡単な交通管理システムのようなを応用すれば解決できそうな課題である。日本の課題は、縦割りとそれに付随する大小の利権・権益といっても過言ではない。

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少し明るくなった日本;全米女子オープンで日本人二人がプレーオフに!!

全米女子オープンで笹生優花選手が優勝した。マスターズの松山選手に次ぐ喜ばしいニュースだ。ただし、米国LPGAの公式ウエブサイトではフィリピンで登録されていたし、東京オリンピックもフィリピン代表で出場するという。日本国代表二人はまだ決定していないが、強敵だ。オリンピックでの、再度の笹生・畑岡対決が楽しみだ。笹生選手は日本とフィリピンの懸け橋になってくれるだろう。

日本人二人によるプレーオフをぜひ生で見たかったが、残念なことに、地上波では放送されていなかった(我が家ではBSを見ることができないがBSでも放送していなかったようだ)。畑岡選手もよく追い上げたが、もう一歩であった。二人の健闘を心から称えたい。オリンピックの意義は、日本選手の活躍が日本を励ますことにつながるであろうことを、今回の二人の活躍で再認識させられた。

何年も前からオリンピック開催が決まっていたことだし、今頃、何のためにオリンピックを開催するかを問う前に、どうすれば「安全・安心」を実現可能にするのかを考えるのが分科会の責任だったと思う。もちろん、失敗して大きな第5波が襲えば責任問題となる。

オリンピックでは必ずシミュレーションしておかなければならない事態が、米国の男子ゴルフトーナメントで起こった。3日目まで後続に6打差をつけてトップに立っていたジョン・ラーム選手(スペイン)を、2日目終了後の検体でコロナ陽性になったとの理由で、最終日に出場させなかった。ラーム選手は「これも人生であり得ることのひとつ。挫折に対してどう対応するかが、人間性を問われる瞬間でもある」とコメントしたそうだ。なかなかの人格者的なコメントだ。

ラーム選手は5月31日に濃厚接触者と認定されて、無症状だが場内での施設利用を制限しつつ、毎日検査を受けることで大会に出場していたようだ。棄権した(させられた)時点でも無症状であったとのことだが、医学的には正しい措置だと思う。運命には逆らえないが、過酷な試練で済ますには厳しい。

予選はトップ通過でも決勝の直前に陽性が判明すれば・・・・・・はオリンピックでも想定されるケースである。ラーム選手がこの非情な出来事を克服して、活躍することを願っている。

 

PS:野党が内閣不信任案を出せば、ただちに解散すると、自民党の幹事長がコメントする。いつから憲法は「自民党の幹事長に衆議院を解散する権限を与えた」のか?おかしな国、不思議の国だ。

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花咲く日が遠い遠い日本-47;皇国の興廃この一戦にあり

体操の内村航平選手がオリンピック体操・鉄棒の出場権を獲得した。少々微妙な最後だったので、本人も完全に納得できた出場権獲得ではないと語っていたが、これまでのリジェンドとしての実績や体操界・日本のアスリートの精神的支柱として頑張って欲しいと願っている。池江璃花子選手も頑張っている。われわれは、少なくとも私は、感染を抑え込む対策が実行可能であれば、オリンピックという場で内村選手や池江選手の姿を見たいと願っている。 

しかし、コロナ感染の現状を客観的に眺めれば、6月20日に緊急事態宣言が終わっても、オリンピックの開催によって再拡大するリスクを憂慮せざるを得ない。インド株の拡大は、これまで感染を抑え込んでいた国でも脅威となっている。当然ながら、「安全安心」をお経のように繰り返すだけで、具体策も見えない、失敗しても責任を取る気配もない国や都のトップに対して不安がいっぱいなのだ。

「勝負の3週間」「短期間の集中的な対策」との言葉が見事なまでに空振りしても、誰も全く責任を取ろうとしない。そして、総理の横に立って政府の施策を説明していた人物が、今頃になって、見事なまでに反旗を翻したドタバタ感満載の政治状況である。「辞職」につながった不祥事を繰り返しても説明責任も果たさない政治家たち、国民の自粛に依存したコロナ対策の失敗やPCR検査をしなかった事実に頬かむり専門家たちなど、立派な大人たちが責任を取ることもなく、自粛しない若者を非難していて済むことではない。

どうしてもオリンピックを開催するなら、国のトップが「安全安心が実現できなかった時に責任を取る」覚悟を示すことが必要でないのか?覚悟が見えない人に(あるのかもしれないが、表情や言葉からは全く伝わってこない)、どうして、国の命運を託すことができるのだろうか?

もちろん、オリンピックの開催には、これから1か月、国を挙げてワクチン接種を死に物狂いで進めていく体制の確立が超急務だ。打ち手が不足しているというなら、医師免許を持っている研究者を現場に引っ張り出せばいい。法的に何の問題もないはずだ。コロナウイルスという敵と戦争をしている時に、研究など後回しでもいい。コロナに敗れれば、国の信用がなくなれば、日本の未来はない。「皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ」だ。

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花咲く日が遠い遠い日本-46;分科会は責任を取る覚悟がないのか?

1年少し前、政府はオリンピックを1年間延期すると決定した。私はオリンピックに意義がないとは思わない。平和の祭典と呼ぶに値するきれいごとの世界とは思わないが、アマチュアのアスリートにとっては大きな人生の目標である。まして、母国で開催するオリンピックを迎えるのは意義深いことだ。私は、1964年の小学校6年生の時に、東京オリンピックで東洋の魔女が勝利する姿を、教室のテレビで見たことを記憶している。日本が金メダルと取った瞬間、感動で目頭が熱くなったことを覚えている。日露戦争で日本が勝ったかのように勇気づけられ、日本人としての誇りを感じた。

今回の分科会長の発言は、オリンピックを励みに頑張ってきたアスリートの気持ちを傷つけるものだ。彼らは日の丸を誇りに頑張ってきたのだ。国民の多くは過去のオリンピックで日の丸が掲げられた場面に勇気づけられた思い出があるはずだ。多くがオリンピックの意義はわかっている。ただ、コロナ感染が収まらない中でオリンピックを迎えることに不安を覚えているのだ。否定的なのはオリンピックそのものの意義ではなく、この状況下で開催されることに対してだ。 

常識的に考えて、分科会の責任の一つに「無事にオリンピックを迎えるために、どんな対策を取るのか」があったはずだ。今頃、責任を政府に押し付けるのではなく、オリンピックを開催するために何が必要なのかを提言し、それを政府が聞き入れないのであれば、辞表を胸に体を張ってでも提言すべきことを提言するべきだったのではないのか?「感染症対策の専門家」として、オリンピックという目標に対して、感染対策の強化を求めるべきではなかったのか?PCR不必要論は彼らが決めたことなので、方針を変えられなかったのだろうが、それは自業自得だ。現状を客観的に見れば、オリンピックを開催することによって、国内、国外にコロナ感染が広がり、日本という国の誇りが傷つけられるリスクは非常に高い。しかし、こんな日本にした責任は彼らにはないのか?

分科会の責任は、オリンピックの意義を問うことではない。政府と分科会には共同責任があるのだから、ここに至っても政府がオリンピックを開催すると決めたなら、どのようにして感染拡大を最低限にするのか、もしもの時に、何をすべきなのかを提言すべきなのだ。責任を取る覚悟がなく、これまで対策を提言してきたのか?他人事ではなく、自らどのように感染を封じ込めるのかを提言し、それでうまくいかなかったら、責任を取る覚悟を持って欲しいものだ。

 

PS: C36株が見つかったという。日本のニュースを見ても何のことかわからなかった。そこで、ネットを調べたところ(SARS-CoV-2 variants of concern as of 3 June 2021 (europa.eu))、スパイクタンパク質に、インド株=デルタ株の特徴の一つであるL452Rに加え、D614GとQ677Hが存在するものが、C36+L452Rとリストアップされていた。D614Gはイギリス株(アルファ株)、南アフリカ株(ベータ株)、ブラジル株(ガンマ株)、インド株(デルタ株)にも共通である。Q677HはC36に特異的で、スパイクタンパク質の677番目にあるグルタミン(Q)がヒスチジン(H)に変わっていることを意味する。2020年12月にエジプトで初めて見つかっている。イギリス株は2020年9月に報告され、インド株は2020年12月だ。

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