花咲く日がだんだん遠くなる日本-30

今日は一段落だが、4連休の影響が出てくるので、今週中の東京500人超え、日本全体で2000人超えは、ほぼ間違いないだろう。

高齢者がどうして重症化しやすいのか?一つの理由は免疫力の低下だ。老化に伴う現象の一つとして知られるのが、免疫細胞の多様性の低下だ。それを少し考察してみたい。

バイオバンクジャパンの試料を利用した老化による免疫細胞の変化を、鎌谷洋一郎先生のグループがNature誌に報告している。バイオバンクジャパンプロジェクトは私が東京大学医科学研究所に在籍していた2003年に開始した日本国内から約50種類の疾患を有する30万人分の臨床情報とDNA・血清を収集するための国家プロジェクトである。残念ながら、目標の30万人には到達できなかったが、20万人強の患者さんの協力を得ることができ、疾患の延患者数としては35万症例を超えた。

今では、多くの人がバイオバンクの重要性がわかっているように語っているが、17年前には膨大な予算が必要なこのプロジェクトに対して、攻撃の矢が次々に飛んでくるような状況だった。開始時に参画したメンバーはほとんど残っていないので、当時のインフォームドコンセントをとるプロセス、臨床データや血液を集めることがどれだけ大変であったか、という苦労が語り継がれていない。現在携わっているメンバーは、膨大な試料がそこにあることを当然のように思っているようだ。多くの研究者は、患者さんの情報や試料を集める困難さを理解できない。かつて、「それを使って成果を出し、論文に君の名前を加えてやる」と嘯いた輩がいた。

と、愚痴っても仕方がないが、結果から言うと、老化すると免疫細胞の多様性が欠如するのだ。理論的には、T細胞受容体は、我々の体の全細胞より多い10の15乗から18乗の多様性をとりうる。しかし、ホクロやシミと同じように血液系の細胞も加齢とともにクローナルな増殖を始める。末梢血の細胞数は厳格にコントロールされているので総数は一定数に維持される。その中で良性腫瘍に近い形で特定の白血球’(リンパ球を含む)が増えてくるのだから、相対的に種類が減ってくる(多様性を欠く)ことになる。

多様性が欠ければ、当然ながら、病原菌に対する反応性が低下することになる。もちろん、呼吸器疾患や循環器疾患のある患者さんたちは、いろいろな意味での余力も限られている。ので、重症化しやすい。

ここまでくると、コロナに罹って死ぬかもしれないことを覚悟で勤務しなければならない。家族感染を起こせば仕方がないと思う。準備はしておいた方がいい。

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