すい臓がん術後補助療法;FOLFIRINOX療法がゲムシタビンより優位

New England Journal of Medicine」誌に「FOLFIRINOX or Gemcitabine as Adjuvant Therapy for Pancreatic Cancer」というタイトルの論文が掲載された。簡単に言うと「すい臓がんの術後化学療法として、FOLFIRINOX療法とゲムシタビン療法のどちらがいいの?」である。

 

この治験では493名のすい臓がん摘出手術を受けた患者さんに対して、FOLFIRINOX療法(当初用いられたものを修正した方法)、もしくは、ゲムシタビン療法を行い(患者さんの割合は11)、再発率と生存率を比較したものである。FOLFIRINOXとはオキサリプラチン、イリノテカン、ロイコボリン、フルオロウラシルの4剤併用療法である。

 

観察期間の中央値が33.6ヶ月の時点において、FOLFIRINOX 療法群の無再発期間中央値が21.6ヶ月に対して、ゲムシタビン群では12.8ヶ月であった(P<0.001)3年後の無再発率は、FOLFIRINOX療法群39.7%に対して、ゲムシタビン群では21.4%と約2倍であった。全生存期間の中央値は、FOLFIRINOX 療法群の54.4ヶ月に対して、ゲムシタビン群では35.0ヶ月であった(P = 0.003)3年後の全生存率は FOLFIRINOX療法群63.4%に対して、ゲムシタビン群では48.6%と約15%の差が認められた。副作用に関しては、グレード3-4の副作用発生率が、FOLFIRINOX療法群75.9%に対して、ゲムシタビン群では52.9%であり、やはりFOLFIRINOX療法はかなり厳しい副作用があるようだ。

 

この論文はFOLFIRINOX療法の優位性を示すだけでなく、手術できる段階で膵がんが見つかれば3年生存率が約3分の2に到達する可能性を示したことになる。もちろん、FOLFIRINOX療法群でも、3年後には約60%が再発していることから、5年生存への道はまだ険しいものがあるが、すい臓がんが難治性のがんではなくなる希望を示している。

 

効くのか効かないのかわからなければ、まず、否定するのが標準療法絶対主義者の発想だ。効かないとわかっているものを否定するのは当然だが、「効くのか効かないのかわからない」ならば、まず、「検証する」ことから始めなければ、新しい治療法の開発は望めない。そして、患者さんや家族の「生きたいと願う気持ちを奪う権利」など、誰も持ち合わせていないはずだ。

 

「生きたい」「生きていてほしい」と願っている気持ちを支えるところから、新しい医療は生まれてきた。標準療法さえやっていれば事足りると考えるのは、サラリーマン医師の発想だ。勤務時間・標準療法という単純な枠だけでは語りつくせないのが医療だ。来年4-5月の10連休は医療機関にとって頭痛の種となっている。警察や消防と同じく、医療も24時間完全に休むことなどできない職種だ。医療とは何か?もっと真剣な論議が必要だと思う。

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