がん医療革命に向けて:診療情報や生体組織を患者さんの手に

日本に戻って以降、知人や友人からがんの治療に関する相談を受ける機会が多くなった。投薬や注射薬の情報を含め、自分の治療経過を詳細に記録している患者さんや家族がいる一方で、自分のがんの情報をほとんど知らない患者さんもいる。「がんの大きさはどれくらいだったのですか」と聞いても、「聞いていません」と答える人が少なくない。医師が告げていないとは思い難いのだが、このような例は意外に多い。

 

そんな中、「セカンドオピニオン・・・・・・」と言うと、表情が一変して不機嫌になる医師がいたと聞いた。免疫療法の可能性を聞くと、「私はそんな治療法は認めていません。そんなことを考えるなら、ここには来なくていい」と言い切った医師もいた。知人が「手術時に摘出した組織が欲しい」といったところ、「何をするのか?」と詰問した医師もいた。「必要なら、医師から依頼状を送ってもらって欲しい」、「倫理委員会に諮る必要があるので時間がかかる」といったケースもあった。

 

インフォームドコンセントの手続きを踏んで、病院が管理しているのだろうが、所有権は病院にあるのだろうか?法的なことを調べてみよう。たとえ、病院に法的に優位であるとしても、患者さんが自分の体の一部を、自分の意向で調べたいと思っても、第三者からなる倫理委員会の承認が必要とは、正に「不思議の国・日本」そのものだ。「延命治療だ」「残された時間は6ヶ月だ」「何もすることがない」と告げながら、患者さんや家族が希望を見出そうとしても、それを断ち切るのが、倫理的で、科学的な、そして、患者本位の医療のあり方なのか、私には納得しがたいものがある。

 

そして、患者さんが、自分の診療記録をスマートフォンに保持し、いつでも閲覧でき、医師に気を遣うことなく、セカンドオピニオンを受けることができるようにする必要があると思う。日本でビッグデータを集めようとすると、必ずと言っていいほど、医療機関との折衝が必要となり、この壁の前に挫折してしまう。患者さん個人個人が、自ら診療情報を保持し、自分の意思で登録し、それをデータベース化することができれば、大きな動きにつながると思う。大震災が起こって、他の医療機関に受診することになっても、医療の継続性が確保される。

 

がんの組織も、自ら預託できるような制度にすれば、革命的な変化を引き起こすことができる。がんが悪化した時、再発した時に、凍結保存しておいた組織があれば、いろいろなことに役立つかもしれない。医学・医療は日進月歩で、今日は治療法がなくとも、半年後に新しい治療法が開発される可能性はあるのだ。

 

ただし、患者さん自身も大きな責任を負う覚悟が必要だ。いろいろな医師に意見を聞き、考えが異なった場合、どの治療法・治療薬を最終的に選択するのかは、患者さんや家族の判断と責任となる。凍結した組織の解析を依頼する場合、限られた組織を1回で利用すれば、その次はない。いつ、どのような状況で、切り札を利用するのかは、患者さんの責任となる。

 

当然ながら、このようなプロセスの過程で、「白衣を着た詐欺師」は淘汰されていかなければならない。医療技術・ゲノム解析技術は進化するが、患者さんや家族の意識改革も必要だ。患者さんが積極的に医療に発言し、参画していくためには、患者さん自身が医学の知識を高めていくことが不可欠だ。

 

がん医療革命は医療・医学の科学的進歩だけでは成功しない。患者さんが主体となって動かしていく以外に、成功への道は開けない。

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