日本はもっと国際的な貢献を!

今週の前半に、シカゴの病院で銃の乱射事件があり、3人+犯人が死亡したと報道された。事件が起こった病院の所在地を調べると、シカゴのチャイナタウンの少し東側にあり、いつも通っていた高速道路に隣接する病院だった。南北でいうと、シカゴのダウンタウンとシカゴ大学の中間に位置する。トランプ氏が大統領に就任後に、シカゴ大学内の拳銃強盗事件は増えているし、殺人事件の数も高止まりである。いいタイミングで帰国したのかもしれない。

 

そして、本題に移るが、昨日、がん研究会で、ヨルダンのディナ・ミルアド王女が「UICCが目指すもの」というタイトルで講演をされた。彼女は現在UICC(Union for International Cancer Control=国際対がん連合)という組織のプレジデントである。がんの分野でなじみのあるTNM分類を規定する組織でもある。TNM分類というのは、T=腫瘍の大きさ(広がりと深さ)、N(リンパ節転移の部位と転移の有無)、M(他臓器への転移)にしたがってがんのステージを判定する基礎となっている。

 

彼女の子供が白血病に罹患し、それを治療する過程で(子供さんは治癒して、今は、がんサバイバー)、国際間のがん治療の格差を知り、それを解消するためにがん対策活動を始めたそうだ。子供の白血病の5年生存率は、先進国では95%に達しているにもかかわらず、アフリカでは10%しかない。先進国では90%以上を救うことができる病気が、アフリカでは10%しか救えない。国ごとの医療資源の違いはあるとしても、この数字は厳しいものがある。しかし、ヨルダン王国の王女が、国際的な組織のトップに立って、がんに苦しむ患者さんのために活動していることには、感動した。

 

最後に、口調は優しかったが、「日本の国際貢献は十分でないので、もっと改善することを期待するために日本に来た」と日本の奮起を促した。欧米諸国は、多種多様な人種・文化が混在しており、日本のような単一民族が大多数を占める国とは文化的背景がかなり異なる。国際貢献という視点で考えさせられることはあまりない。かつて、遺伝子多型の国際的なデータベースを作るプロジェクトに参加した。白人、アジア人、アフリカ人90人ずつを解析すると国内で説明した際に、どうしてアフリカ人のデータを取る必要があるのかといった、心無い言葉に直面したことがある。私は、この国の将来を考えれば、国際的な貢献、特に、医療分野での貢献は非常に重要だと考えている。見返りがなくとも、世界中の人々に貢献するといった純粋な人間愛が必要だ。

 

このブログでも、何度か触れたが、人と人の触れ合いが、国と国のつながりの基盤となる。日本が国際的な地位を維持するためには、医療分野での貢献が絶対的に不可欠だと思う。震災に直面するたびに、多くの日本人がボランティアとしてはせ参じ、被災者の復興を支援している。このような気持ちを持っている人たちがたくさんいて、日本の医療は国際的に最も高い水準にあるのだから、もっと後進国の医療の質の向上に寄与する取り組みがあってもいいのではと思う。

 

ただし、個人レベルでの国際的貢献は日本ではあまり評価されない。学会レベルでは多くの日本人医師や研究者が、重要な役職を果たしているが、医療現場での貢献がどこまであるのか?日本の大学の世界大学ランキングは下がり続けている。世界に目を向けた人材の育成のためにも、組織だった国際人の育成、国際貢献が欠かせない。