PARP阻害剤のBRCA1/BRCA2異常を持つ卵巣がんの顕著な増悪抑制効果

台湾の新幹線に初めて乗車して、台中にやってきた。迎えの車がどこにいるのかわからず、台中駅からタクシーでホテルにやってきたが約20分で1000円とお手頃だった。明日の朝10時から特別講演をする。羽田から台北の松山空港までは約3時間30分と沖縄に行くのとほとんど変わらない。空港まで、シカゴ大学にいた弟子が迎えに来てくれて、昼食を共にし、新幹線の駅まで送り届けてくれた。東アジア、東南アジアにはたくさんの弟子がいるので楽ちんだ。

 

台湾では100万人の患者試料を集めてゲノム解析を計画しているとのことだ。台湾バイオバンクは日本の東北メディカルバイオバンクと同様に一般住民を対象にして始めたが、十分な患者数が集まらず、批判が集まり、大幅に予算がカットされたとのことだ。そんなことは、2003年に私がバイオバンクジャパンを始めた時に議論したことで当然の帰結だ。日本では、震災対策の延長の延長で東北バンクをかばい続けるようだが、5年後には第2の「もんじゅ」になるのではと心配だ。

 

そして、移動中にNew England Journal of Medicine誌に発表された「Maintenance Olaparib in Patients with Newly Diagnosed Advanced Ovarian Cancer」という論文に目を通した。BRCA1/BRCA2遺伝子に異常をもつ卵巣がん患者(詳細な卵巣がんの種類は省略)388名が対象で、オラパニブ(PARP阻害剤;PARPDNA修復に関係する重要な遺伝子)の投与による増悪抑制効果を調べた臨床試験の結果を報告したものだ。

 

新たに診断されたステージ3-4の卵巣がん患者のうち、BRCA1/BRCA2に異常があり、プラチナ系の抗がん剤に対して完全の腫瘍が消えたか、縮小効果が認められた患者が対象だ。388名のうち、2名を除いては遺伝的なBRCA1/BRCA2の異常であった。260名がオラパニブ治療を受け、残りがコントロールだ。追跡期間の中央値が41ヶ月であった。追跡3年の時点での無再発期間はオラパニブ群60%に対して、コントロール群では27%と決定的で圧倒的な差が認められた(P<0,001)。

 

オラパニブ群では、この論文の調査期間内では、増悪した患者の割合はまだ50%に達していない。10年前、5年前のデータで、マニュアルに沿って余命を告げることが、倫理的なのが、道義的なことなのか、最近の医学の進歩を目の当たりにして改めて疑問を覚えた。国際的には、本気で「がんを治癒させる」ことを目指しているのだが、日本ではごく少数で、これを言うと冷たい視線が飛んでくる。患者の前で平然とがんを治せないと宣言する医師が、国を代表する機関で大きな顔をしていることが、日本のがん医療の病根だ。

 

医者が最初に希望を捨て、患者に希望を捨てることを強要するかのようながん医療体制を破壊することが、がん医療革命の始まりだ。