ネオアンチゲンを利用したメラノーマ(悪性黒色腫)治療

今週のNatureにメラノーマ患者に対するネオアンチゲンを利用した治療結果が2報、報告されていた。日本では免疫療法というだけで、パブロフ反射のように懐疑的な人たちが依然として多い中で、マウスではなく、人に対するネオアンチゲン治療が報告されているのだ。遺伝子解析からがん細胞で抗原として提示されるぺプチドを予測して、治療用ワクチンとして利用したものだ。科学的な思考が少しでもあれば、この方向に向かうのは当然と思うのだが、臨床試験の結果しかエビデンスと認めない、科学的リテラシーにかける人たちが跋扈している日本では、医療の進歩が遅れるのは当然の帰結かもしれない。

二つの論文のうち一つでは、ペプチドそのものを利用しており、他方はRNAの形で導入して細胞内でペプチドを作らせる方法だ。細かい内容は省くが、ネオアンチゲンに対するリンパ球の誘導は確認されており、一気にこの方向の治療に対する治験が広がるだろう。日本の研究者が四の五の言っている間に世の中は進んでいるのだ。

二つともワクチン治療後に進行した患者に免疫チェックポイント抗体治療をしたところ、完全にがんが消えた症例のあったことを報告していた。RNAネオアンチゲン治療をした論文では、がん進行が抑えられたことが述べられていた。

私の友人で、ネオアンチゲンを20年以上前に提唱したSchreiber教授は、メラノーマでは免疫チックポイント抗体が効きやすいのだから、ネオアンチゲンが効いたのかどうかわからないと素直でない反応をしていたが、私は科学的な評価は不十分だが、効果があったと思う。近畿大学の安田卓司先生が、昨年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告していた食道がん術後(リンパ節転移陽性)症例に対する3種類のオンコアンチゲンワクチンを利用した臨床研究でも、再発した後に化学/放射線療法などで治療すると、ワクチン治療症例だけで完全に消えるケースがあったようだ。

常識的に考えて、免疫療法を化学療法で免疫力を落とした後で行うというのは理屈に合わない。と私は思うのだが、この常識が通用しないのが日本だ。標準療法が倫理的というなら、化学療法を受けたくない患者さんや高齢者に対して倫理的な行動が取られているのかどうかはなはだ疑問だ。肝・腎・心機能が低下している患者さんは、すぐにがん難民となる。この硬直化したシステムはどうすれば変えられるのか。

何とかしろよ、日本の研究者・医師よ!と叫びたい心境だ。

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