抗がん剤の適応できない尿路がんに抗PD-L1抗体薬が第1選択

米国FDAがシスプラチンが適用とならない局所進行、あるいは、再発尿路がんに対する抗PD-L1抗体(atezolizumab)を第1選択薬として使用することを承認した。これはIMvigor210と呼ばれる119名の患者に対する第2相試験の結果である。この試験では、コントロール群は置かれておらず、全患者がこの抗体医薬の治療を受けた。「ランダム化試験でなければ臨床試験ではない」と拘っている医師たちはどんなコメントを発するのだろうか。

この119名のうち、腫瘍縮小が認められた患者さんは28名(23.5%)であり、このうち8名はがんが完全に消失した。標準薬であるシスプラチンが適用にならない患者さんは、他の抗がん剤の投与も厳しいであろうと推測される。そうなれば、何も治療法がないのだ。その観点でこの数字を見れば、4分の1は腫瘍が小さくなっているのだから立派なものだ。

しかし、無増悪期間中央値は2.7ヶ月、生存期間中央値は15.9ケ月と全体的に見れば、やはり厳しい数字だ。がん細胞での遺伝子異常数と治療効果には関連があったとのことだ。また、PD-L1の発現陽性(5%以上の細胞で陽性)の場合には、腫瘍縮小効果は全体よりも28.1%とわずかに高かったが、これでは患者さんを選別するための指標には使えない。腫瘍が完全に消えた患者の割合は、差がなかった。

グレード3-4の有害事象は、倦怠感(8%)、尿路感染症(5%)、貧血(7%)、下痢(5%)、腎機能障害(5%)。肝機能障害(4%)、低ナトリウム血症(15%)などであった。5例でグレード5(死亡)の有害事象が認められ、死因の内訳は、敗血症・心停止・心筋梗塞・呼吸器系不全(2例)であった。 繰り返しになるが、今でも、免疫チェックポイント抗体自体ががん細胞を殺す薬だと思っている人が少なくない。患者さん自身の免疫細胞が活性化されて、その活性化されたリンパ球ががん細胞を殺すのだ。この科学的なエビデンスを目にして、免疫療法などまがい物だと言っているのは、よほど勉強をしていない輩だ。科学的な思考が全く働いていないと思われる。

 

科学を学ぶところから、有効率20-30%を50-60%に改善させることができるし、最終的にがんを治癒することができるのだ。科学的なエビデンスは、人の臨床試験の結果だけはない。基礎研究、動物実験、前臨床試験、そして、患者さんに対する臨床試験、多くのエビデンスの積み重ねが新しい治療薬を生み出す原動力だ。基礎研究や動物実験、そして失敗したとしても臨床試験で得られたエビデンスから多くを学び、それを克服するための努力をしていかない限り、日本から画期的な新薬など生まれるのは難しい。

 

今日は朝早くに、京都から関西空港へ向かう電車に乗った。その途中、あべのハルカスを遠目に見た。中学・高校の6年間、毎日阿倍野駅を通過していた。阪和線から見える風景も少し違うように感じたが、懐かしい。

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