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医師の燃え尽き症候群を救うには、書記係が?

ユナイテッド航空にまつわる話が続いている。結婚式に行く予定のカップルが、飛行機に最後に乗り込んだところ、自分たちの座席に横たわっている乗客がいたため、前方の席に座った。普通のエコノミー席より少し広い座席だったので、追加料金を払うと申し出たが、それを拒否された。自分たちの指定された座席に戻りたくないと言ったところ、飛行機から降ろされたという。責任の分担が過度に進む米国では、融通の利かないことが多い。

 

また、メキシコの実家を訪問した米国在住の父子が、ユナイテッド便で米国に到着したところ、誘拐犯と間違われて、子供が空港職員に直ちに確保され、父親は訊問を受けたという。子供は父親と引き離されて泣いていたというのに。ユナイテッド航空の職員が空港職員に通報したのは明らかだ。子供がメキシコ人の父親と皮膚の色が違っていた(母親のコメントによると母親に似ている)ためと報道されていたが、なんだかおかしい。しかし、このような案件は、おそらく日常的にあったのだろう。今回の引きずり出した一件をきっかけに注目を集めるようになっただけだろう。そのためか、今日のユナイテッド航空のラウンジはガラガラだった。チェクインする時に隣にいた家族連れが、中国に行くにもかかわらず、初めてANAに搭乗すると言っていた。これも事件の余波かもしれないと勝手に想像をめぐらせた。

 

ここで、標題の「医師の燃え尽き症候群」の話に移す。先週の内科の講義では、「燃え尽き症候群を減らすには、筆記係を置くのが有効」という話をしていた。2015年の12月に発表された論文によると、燃え尽き症候群の兆候を一つでも持っていた医師の割合は、2011年には45.5%であったが、2014年の調査では54.4%に増えていた。約7000名の医師の調査結果だが、回答した医師が疲れている医師に偏っている傾向は否定できないが、2011年と2014年は同じ方法で調査されているので、両年の比較は意味があるものと考える。

 

診療科別に見ても、全診療科で「燃え尽き症候群」の兆候を示す割合は増加しており、最も高いのが救急医で約70%が兆候を持つと回答した。次が、泌尿器科、リハビリ医、家庭医、放射線科、整形外科と続く。仕事と私生活のバランスに満足している医師は、2011年の48.5%から2014年には40.9%に減少している。脳外科医では、2011年の約45%から、2014年には20%を切る数字となっており、精神的な負担が非常に高くなってきているのがよくわかる。私の同級生や仲間も、同じような傾向にあるようだ。

 

演者は、これらの原因の一つが電子カルテであると指摘していた。電子カルテに記入する(打ち込む)時間が過度に取られるようになり、患者さんの目を見て話をする時間が削られ、それが医師―患者間コミュニケーションを希薄にするため、トラブルを起こしやすい状況を生み、患者さんだけでなく、医師にもストレスになってるようだ。医学は科学だが、医療には「愛」が必要だ。コンピューター相手に時間がとられるために、最も重要な人と人との関係がうまく構築できていなってきているのが、今の医療の大きな課題だ。

 

演者は、筆記係をそばに置いて、医師は患者さんとFace-to-Faceで話をする時間を増やせば、現状は改善できるはずだと力説していた。そういえば、私が学生や研修医だった頃、教授の診察室には筆記担当者が必ずいた。教授が患者さんを診察し、学生に説明する時間を確保するために、教授のコメントは筆記が書き留めていた。

 

もし、これが実現すれば、医師は患者さんに対面して話をする時間をもっと確保できるし、医療の質の向上につながるだろう。患者さんが医師としっかりと話をできる環境を作ることは重要だ。しかし、日本でこのような制度を確立するのは容易ではない。単に、患者―医師の会話を書き留めれば済むだけの話ではない。専門的な言葉を書き留めるには、専門的な知識をしっかりと身につけなければならない。誰がどのように教育し、資格をどのように認定するのか?

 

私のように入力に時間がかかる人間には、打ち込まれた内容を確認するのに時間が取られても、大いに助けられると思うが、間違いが多ければ訂正の手間も大変だ。また、医師の出した指示をタイプミスし、確認ミスした場合、誰が責任を取るのか?両者の会話内容には、守秘義務が伴うが、筆記に対して法的拘束性をどのように確保するのか?

 

医療の質を確保するために多くの課題が山積されている。理想論だけでは、どうにもならない状況に追い込まれているはずだが、綻びが出るために、部分部分の手当てをしたために、医療はつぎはぎだらけの完全破綻直前だ。医療がどうあるべきで、その負担をどのようにしていくのか、真正面からの議論が必要だ。

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