「All of Us Research Program」

「The Precision Medicine Initiative Cohort Program」(プレシジョン医療コホート計画) が「All of Us Research Program」 と名を代えて活動を広げようとしており、シカゴでもようやく機運が高まりつつある。2015年にオバマ前大統領が、プレシジョン医療計画を提唱したのだから、その地元であるシカゴとしては、かなり動きが遅いような気がしないでもない。しかし、健康・医療に不可欠な課題なので、今後の速い展開を期待したい。

それにしても、「All of Us」というネーミングは、なかなかしゃれていると思う。「All of Us」が私たちすべてとアメリカ合衆国(US=United States)すべての両方を意味しているからだ。百万人単位の参加者を集め、膨大なコホート研究が行われる。何度も繰り返しているが、病気の予防や重症化予防は、高齢化社会を乗り越えるために不可欠だ。決して、薬の選択だけが、プレシジョン医療ではない。

日本でも、多くの一般住民や病気に罹った人の健康・臨床情報に加え、DNA・血清などを収集する研究が行われていた(いる)が、継続性に欠けるため、大半が中途半端に終わり、膨大な無駄を繰り返している。また、膨大な数になれば、サンプルの取り違えなどのヒューマンエラーが必ず起こるものだが、どこまで注意が払われているのか、はなはだ疑問だ。抜き打ち検査などでしっかり検証しなければ、無駄に無駄を積み重ねることになるだけだ。何億円・何十億円の予算をかけても、無視できない数のサンプルの取り違えがあれば、これは悲劇・衝撃だ。

医療でも、研究でもそうだが、ヒューマンエラーが起こることを前提に対策を練らねばならない。医療ミスでも、100%個人的な問題なのか、起こるべきして起こったシステムエラーなのかを判別するのは難しい。患者さんの取り違え事件やがん確定診断時のサンプル取り違えによる誤診などは、それに関与した複数の人のエラーの積み重ねで起こったのだが、確認作業を行うシステムを導入すれば、間違いが起こる確率は格段に下げられる。何段階もの確認作業のすべてでエラーが起これば、これは間違いなく人災だ。

臨床段階でのミスは、個人や患者さんの命や生活の質に関わるので、大きな関心が払われるようになったし、かつてに比べれば、ヒューマンエラーを回避する制度設計は大きく改善された。しかし、研究の場合には、研究結果に影響を及ぼして、間違った解釈が生まれても、直接的に健康被害が出るわけではないので、そのチェックは甘い。それでも、細胞株を供給する施設などで起こった、細胞株の取り違えが問題となり、多くの雑誌で、細胞株の正統性を調べることが求められるようになった。研究者から、研究者へと渡った細胞株など、どこかで取り違えが起こる可能性は高くなるので、なおさらだ。また、がん細胞などはゲノム・遺伝子レベルの異常を繰り返し起こしているので、最初に調べた時と、数年を経た時では、完全に一致しなくとも驚きではない。

日本でも、米国のように、いろいろなレベルで大規模な研究が始まることを期待したい。しかし、研究規模が大きくなればなるほど、サンプルや情報の取り扱いに注意しなければ、膨大な無駄が生じることになりかねない。研究成果だけでなく、研究がちゃんと執行されているかどうかの、第3者による厳正かつ公正なチェックが不可欠だ。

PS: 飛行機を予約すると、オーバーブッキングの際の注意が送られてくるが、昨日、オヘア空港で予想もしない事件が起こった。

オーバーブッキングの際、航空会社は、金銭や次の便への搭乗と引き換えに、ボランティアを募り、問題を解決する。申し出がない場合には、金銭的なインセンティブをあげていく。それでも、問題が解決しない場合には、ランダムに選んで乗客に従わせるのだそうだ。まさか、強制的にできるとは思わなかったが、昨日は、乗客(すでに着席していた)を警備員が座席から無理矢理引きずりおろし、その様子が他の乗客によってSNSで流されたので、大騒ぎになっている。恐ろしいことだ!

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