革新的技術と規制+トランプ政権NIH予算カット

昨日は先進医療推進フォーラムに参加した。私を含め、3名ががんに関係する話、1名が心臓の再生医療に関わる話だった。最初の演者が、「がんには3大治療があり、外科、化学療法、放射線療法だ」と発言した時には、愕然と、ずっこけてしまった。私も、私の次の演者の東京大学医科学研究所の小沢敬也先生も免疫療法の話をする予定だったからだ。今の時代に、ここまで大胆に免疫療法を無視できるのは大したものだ。やはり、一度頭に染みついた「免疫療法はまがい物」という固定概念を消し去るのは難しいのかな?

 

最後の演者の澤芳樹大阪大学教授は医療イノベーション推進室にいるときに活動していた仲間だ。彼が嘆いていたが、新しい技術が開発された場合、今までの尺度で評価できないにもかかわらず、それを既存のルールに当てはめようとするから物事が進まなくなる。やけどなどの治療に使われる皮膚の細胞シートは医療機器、心筋の細胞シートは医薬品と分類され困った経験を話されていた。このブログでも何度も触れているが、免疫チェックポイント抗体治療薬を含む免疫療法などは、これまでの抗がん剤の基準で評価することができない。法律などの規則が古く、審査する側が不勉強だと、話がかみ合わず、革新的事案が宙に浮いてしまう。審査する体制の強化、特に、先進的なことを理解できる人材の育成が不可欠だ。

 

その点、米国は国を挙げて革新的な医薬品の開発に取り組んでいると書きかけようとした瞬間、トランプ政権の2018年度予算案が漏れ出してきた。Science誌によると、NIH予算が約20%6兆円減で計画されているという。これが事実なら、前年度までの研究計画の継続で手いっぱいで、新規研究計画が完全にストップするかもしれないくらいの衝撃的な数字だ。

 

ムーンショット関係者からは、トランプ大統領はがん研究などには好意的だと聞いてただけに、この減額の大きさは予想外だった。研究支援体制は、一たび崩壊するとそれを再構築するのは簡単にはいかない。研究にとって最も重要な人材の流出が起こると、人を育成するために何倍もの時間が必要となるからだ。日本のがん研究分野の人材も漸減傾向にある。予算もポジションもなければ、研究者は他の分野に転身していくしか、生き延びる道はない。二人に一人以上ががんに罹る時代、がん研究は日本の浮沈を握る研究分野なので目に見える研究支援策の強化が急務だ。

 

次期がん対策計画では、是非、研究者が本気でがん対策に取り組むことができるような希望あるビジョンを提示して欲しいと願っている。

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