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二重特異性抗体??による白血病治療

医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

暖かい2月が終わった途端に急に冷え込み、昨日と今朝は雪が舞って、冬に逆戻りだ。気温は平年並みになっただけなのだが、体は、暖かさに鈍ってしまったのか、ついていけない。明日の朝はマイナス7度まで下がり、月曜日は19度まで温度が上昇する。ジェットコースターのような気温の変化だ。 

前回のブログは反響が非常に大きかった。3日間のアクセス件数は1万回を越えて、普段の1.5倍程度になった。静かな解説よりも、感情的な文章の方が面白いようだ。私は、読者の皆さんに、まずは、がん医療の進歩、そして、米国での日常をお伝えする意図で書きはじめたのだが、すでに3年弱が過ぎた。おそらく明後日あたりに、総アクセス件数が2百万回を越える。

怒りのブログを書いたので、「血圧は上がっていないでしょうか」と心配する声や「感情的な文章を諌める」メールが友人たちから寄せられたが、文章にして発信すると意外とすっきりするものだ。メディアは自分たちへの批判を嫌い、まず、訂正するがことがない。裏取りをしない記事を書くことは、メディアの人間として厳に慎むべきことなのだが、このような記事は今回が初めてでないので、あきらめるしかない。10年以上前に、理化学研究所のセンターが、裏取りをしない記事で中傷された時、猛烈に抗議をしたが絶対に訂正はしなかった。

メディアは批判をされると面白くないだろうが、無責任なことを書かれた当事者はもっと面白くないのだ。非道極悪人のように叩いていた「XX容疑者」が、起訴猶予になったり、無罪になると、即座に「XXさん」と呼び出すのは、滑稽だ。有罪の判決が下されるまでは、「推定無罪」の原則のはずだが、福島県の産婦人科医など、どこまで傷つけられたのか、少しは他人の人生に心を寄せて考えて欲しいものだ。メディアの報道姿勢に苦言を呈し続けているがメディアの辞書には「子曰、過而不改、是謂過矣」「過ちて改めざる、是を過ちという」言葉は載っていないのだろう。 

また、話が逸れたが、原点に返って、今日は新しい治療の情報を紹介したい。今日の「New England Journal of Medicine」誌に「Blinatumomab versus Chemotherapy for Advanced Acute Lymphoblastic Leukemia」というタイトルの論文が掲載されていた。この論文では、CD19という分子が作られている急性リンパ性白血病患者405名が対象だ。271名に対してBlinatumomab(B群と呼ぶ)が投与され、134名に対しては抗がん剤治療(C群と呼ぶ)が行われ、比較された。f:id:ynakamurachicago:20170303103148j:plain

まず、Blinatumomabについて紹介する。これは人工的に作られた二つの分子に結合する性質を持つ抗体だ。この抗体医薬品は、Tリンパ球で作られるCD3という分子とがん細胞に特異的なCD19という分子に結合する。CD19という分子はがん細胞に特異的な分子ではなく、Bリンパ球に特異的な分子である。この抗体医薬はB細胞から派生した白血病細胞(CD19陽性白血病細胞)とTリンパ球をつなぎ合わせることによって、リンパ球の白血病細胞に対する反応を引き起こすように設計されたものである。

さて、結果だが、生存期間中央値は、B群では7.7ヶ月、C群では4.0ヶ月で倍近くとなる。治療開始12週後の完全寛解率(+血液細胞が完全に正常化している)はB群では34%、C群で16%と報告されていた。寛解持続期間の中央値は、B群で7.3ヶ月、C群で4.6ヶ月だ。グレード3以上の有害事象発生率は、B群で87%対C群92%だった。確かに有効率は、統計学的な差があるのだが、この数字は正直厳しい。しかし、新しいアプローチによる予後改善は明らかだ。もっと早い段階で利用すれば、もっと効くかもしれない。いずれにせよ、挑戦し続け、課題を克服するしか、進歩はないのだ。

医学の進歩は、このようにひとつひとつ階段を上っていかなければ、頂上にはたどり着かない。油断すれば、真っ逆さまに転落する。自分で歩くと、その厳しさは予想をはるかに上回るものだった。研究もビジネスも同じで、厳しさに耐えながら前に歩み続けるしかない。オンコセラピーサイエンス社は、患者さんに優しくてよく効く薬を生み出すために設立した会社だし、この基本理念を貫くことが会社のすべてだ。

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