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重度の肥満+糖尿病に外科手術!?

昨日は、過去最高気温を更新して19度まで気温が上がった。今日は2時現在、20度で、まるで米国の株価のように連日の記録更新だ。あと1週間程度非常に暖かい気候が続き出そうで、この間さらに2-3日は記録を更新する暖かさになりそうだ。この時期には珍しい晴天続きで、夕焼けも美しい。まるで5月頃の初夏を思わせるような素晴らしい気候だ。しかし、心は晴れない。このところ、立て続けに、十代でがんを患っておられる子供さんを持つご両親からの相談メールが寄せられたが、何もできない無力な自分が情けない。

 

日本では、iPS細胞を使った臨床試験は、死につながる病気でなくともハードルが低いのに、確実に死に直面している進行がんでは、依然として新規の治療法に対するハードルが高い。日本は変な国だといつもながら思ってしまう。米国に住んで嘆いていても、何もできないくせに偉そうに言うなという声が聞こえそうだが、その通りだ。「挑戦」を始めなければいけない時だと思う。

 

今週の「New England Journal of Medicine」誌に掲載されていた論文も、日本では顔をしかめる人が多そうな挑戦の結果だ。高度の肥満+糖尿病の患者に対して、内科的治療法と外科的治療の優劣を比較した結果だ。乳がんの予防的外科手術でも、当初は、がんもない正常な乳腺を取るなど、とんでもない話だとしたり顔で批判する人が多くいた。生体臓器移植(最近の京都府立医科大学の事件で、生体臓器移植のイメージが悪くなったように思うが)、特に、生体肝移植は、専門家の中でも、健康な人にメスを入れるということに対して批判が強かった。臓器提供が非常に限られている日本で、どれだけの患者さんを救ったか、私は誇るべき成果だといつも思う。目の前にいる救いたい患者さんのために何かをしたいと思う純粋な医師の気持ちをもっと大切にして欲しいと思う。そして詐欺師は徹底的に糾弾すればいいのだ。

 

話を戻すと、今回は、外科的手法として、バイパス手術(胃を上の方で切断して、その部分と小腸をつなぎ合わせ、食物の通る胃の部分を小さくする。そして、残った胃やから流れる液や胆嚢・膵臓から分泌される液を、小腸の途中で合流させる)(B群と呼ぶ)や胃の縮小手術(胃の左半分程度を切除する)(S群)が行われた。これらのグループと、内科的治療だけのグループ(M群)を比べたのだ。対象患者はBMIが27-43とかなり高い。この中央値である35というのは、身長170センチの人であれば、体重101キロに相当する。

 

ヘモグロビン1Ac(Hb1Ac)はヘモグロビンに糖が結合したもので、糖尿病がうまくコントロールされているかどうかの指標となっている。この値が5年後に6%以下になるかどうかを指標として試験が行われた。試験開始時点でのHB1Acは9.2%とかなり高い。この数値も含め、いくつかの指標で3つの群を比較すると、下の表で示されるように指標は明らかに、外科的に胃を小さくするほうが、数字が改善されている。外科手術を行った場合、平均の体重減少は20%以上であり、170センチの人で例えると、100キロから80キロへと減少したことになる。糖尿病関連の数字だけでなく、他の指標も大幅に改善されており、生活の質の改善も明らかだ。そして、インスリンを含め、治療薬が減っていることから、外科手術に費用がかかっても、一生治療し続けなければならないことや合併症の回避・軽減を考えると、全体での医療費の削減につながっていることは確実だ。もちろん、日本の糖尿病患者さんに占める肥満度は高くないが、肥満度の高い人には一つの選択肢として考えられるのではないだろうか?

 

患者さんの生活の質にも医療費の削減にもつながる。科学的に新しいものに挑戦して、一つずつ改善策を見つけ出していく。これが、これからの日本にも重要だ。

 

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