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若い乳がん患者パートナーの心理状態?

シカゴは1日だけ晴天で異常に暖かい日があったが、翌日から、また、どんよりとした気持ちが落ち込むような天気が続いている。プレシジョン医療を推進するために、日々、仕事に追われて疲れているので、せめて天気くらいはすっきりして欲しいと思うが、今週一杯は太陽を目にする事はなさそうだ。気温は比較的高いが、この曇天続きは勘弁して欲しい。

Forbes40歳未満で乳がんの診断を受けた患者(ステージや受けた治療についての説明はなし)のパートナーの心理状態に対する意識調査に関するニュースがあった。調査に回答した289名の女性乳がん患者パートナー(284名は男性、5名が女性)の42%が何らかの不安を抱えているというものだった。ボストンのダナ・ファーバーがん研究所の研究員が、がんサバイバーシンポジウムで報告したとの事だ。

「がんは患者さんだけの問題ではなく、家族・友人にも影響がある」ことを調査したものだ。乳がんに関わらず、大半のがん患者の場合、家族の生活や心理状態に大きな影響があるので、多くのパートナー(家族)が不安を抱えるという報告は特段新しいことでもない。しかし、若い女性にとって乳房を失うことは精神的な負担も大きいし、がんの再発に対する不安も大きい。乳房切除を回避することが、時として、命の代償を払うことにつながりかねないので、家族、特に、パートナーの支えが絶対的に必要となる。そして、白衣を着た詐欺師の甘い囁きに決して騙されてはいけない。また、米国においては負担が桁外れに大きい医療費も頭の痛い問題だ。さらに、小さな子供がいる場合、自分やパートナーの闘病と共に、子育てへの負担も大きな課題だ。

この調査に戻ると、調査に回答した人の93%が白人とかなり偏っている。そして、94%がフルタイムの仕事を持ち、78%が大学卒、約75%18歳未満の子供と同居している。不安のため、置かれた環境に適応できない例として、患者と別れようと考える、飲酒量が増える、問題を他人にせいにする、乱暴な行動をするなどが挙げられていた。このような行動は、一般の夫婦でもよくあることなだが、記事はこれらの頻度が一般家庭の2倍と紹介していた。それぞれの詳細や頻度、あるいは、不適切な行動のレベルが示されていなかったので、パートナーが乳がんと診断された(+治療を受けた)ことが、どの程度有意に行動に影響を与えたのかどうかは不明だ。

しかし、この種の研究は非常に大切だと思う。特に若年のがんは、遺伝的な要因が大きいと考えられるので、その観点だけでも、患者さんだけでなく、兄弟姉妹、子供も同じ遺伝的素因を持つ可能性を考えた対応が必要だ。がんに限らず、家族が闘病しているという状況は、程度の差はあっても、患者さん以外のメンバーにも精神的な負担、経済的な負担、肉体的な負担を強いることになる。当然のことだが、家族や友人が患者さんの闘病を支えることは必要不可欠だ。

医療費の増加を抑える議論は重要だが、重篤な疾患を持つ患者を支える家族を精神的・経済的に支援するような仕組みも重要だ。しかし、これは医療関係者だけに課せられた課題ではない。多くの医師や医療関係者は、限界を超えた努力を日々重ねている。患者や家族が医師や医療関係者と健全な人間関係を維持するためには、医師などの負担を軽減することを真剣に考えなければならない。また、夫の育児休暇は広がってきているようだが、重篤な患者さんを看病しているような方に対する配慮も重要だ。社会の仕組みとして、医療はどうあるべきかを考えなければ、日本の医療の明日はない。