読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

急がれるがん医療体制の刷新!

シカゴは雪のない新年を迎えた。元旦の夕方に動物園でのライトアップを見学に行ったが、少し寒さを甘く見すぎた。真冬の服装をしていったつもりだったが、体の芯まで冷え切って、頭がくらくらしてきた。その影響か、昨日は体が重くて重くて、血糖も高かった。しかし、こんな時は、無理矢理に体を動かすのが一番だ。じっとしていると、体も、頭もすっきりしないまま時間が過ぎていく。そこで、マンションの階段を32階から1回まで降り、そして32階まで走って(のつもりだったが、大半は歩いて)上った。途中から心臓は鼓動を高め、脈拍は100を超え、息が荒くなった。後半の10階部分は、青息吐息で2-3階ごとに深呼吸だった。さらに、夕方にはジムに行って500メートルを泳いだ。お陰で体は暖まり、今朝の血糖は正常値だ。脚の筋肉痛は激しいが、頭もすっきりし、年始の仕事を効率よく片付けられた。

今日は人生最後のチャレンジの年の幕開けだ。後悔を残さない生き方をしたいと改めて思う。がん分子標的治療薬開発を人生の最優先課題としてから、15年が過ぎた。ペプチドワクチン、抗体医薬品、分子標的治療薬、そして、オーダーメイド医療と前には進んでいるが、15年前に思い描いていた姿には達していない。急がねばと思いながらも、臨床応用は研究室からは距離を置いた所で進められるので、じっと見守るしかない。成人に達した子供が独り立ちをした時、親の想像していた姿と違う方向に進んでも、それを見守るしかないのと同じような感じだ。しかし、最近はそれでいいのかという思いが強い。他人から何と言われようが、最後まで自分で引っ張るしかない。

がんの分野には革新的な変化が起こっている。免疫療法という選択肢が確立され、3大療法が、外科療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法の4大療法と変わった。10年前からその兆しははっきりとあったが、その頃の日本は免疫療法を否定する人たちが圧倒的多数だった。その大多数を代表する人が、今は、自分が免疫療法を生み出したかのような顔をしている。がんペプチドワクチン療法に最低評価を下し、完璧に否定した人だ。メディアもみんなで持ち上げる。日本は節操のない変な国になったものだ。

と、またまた、愚痴を零してしまったが、私の挑戦の話に戻したい。がん医療は、予防・診断・治療法選択・新規治療開発のすべての分野において、急激な変化が起きている。ゲノム情報や人工知能変化を医療現場にどのように取り入れるのか、もはや、部分的に考えるのではなく、10年後に起こるであろう姿を描きつつ、考えなければならない。最近注目されている高額医薬品問題と、それに連動する医療保険制度の維持にも考慮した、効率的で、安全で、より安価な医療体系を作る必要があるのだ。患者さんのためにも、国のためにも、時間とお金の無駄使いをしている余裕はない。

f:id:ynakamurachicago:20170104103703j:plain

(TCR: T細胞受容体)

図は、私の思い描くプレシジョン医療の姿だ。これを現状の簡単なマイナーチェンジの繰り返しで、システムとして実現化することはかなり難しいし、無駄が多い。がんの診断、治療、そして軽視されがちな予防が、ゲノム、人工知能、免疫療法というキーワードをもとに、20世紀とは全く異なった様相となっている。すでに絵が描かれたキャンバスを上から塗り直しても、美しい絵は描けない。まっさらなキャンバスに絵を描くくらいの気持ち出なければ、美しい絵は描けない。

DNA解析技術がこのように急発展し、自分のゲノムやがん細胞での遺伝子異常を、簡便に、安価で調べることができるとは、10年前の私自身も予想していなかった。血液で再発が超早期に見つけられるなど、思いもよらなかった。これからも、想像をはるかに超えるような変化が起きるだろう。今の日本のように、後手後手で、欧米の技術を導入していては、医療現場に導入した頃には、導入した技術が時代遅れとなる。医療立国を目指していながら、自他の状況を分析することを怠っているのだ。こんな火を見るよりも明らかなことから目をそらしていては、米中の狭間に埋没する。

明日からは、最低気温がマイナス10度を下回る日が続く。気合だけでは乗り越えられない歳になった。米国に追いつき、追い越す日までは健康に留意しなければ!

f:id:ynakamurachicago:20170104104220j:plain