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2017年への決意

今年の締めくくりも、また、新たな免疫療法だ。今日発刊の「New England Journal of Medicine」に「Regression of Glioblastoma after Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy(キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法によるグリオブラストーマの縮小効果)」という論文が掲載されていた。IL13Ra2というグリオブラストーマ(最も悪性度の高い脳腫瘍)で特異的に発現している分子を標的にした新規免疫治療法の速報だ。バイデン副大統領は、このグリオブラストーマによってご子息が亡くなられたことで、がん対策「Moonshot」計画を率いることになった。

キメラ抗原受容体T細胞とは、がん細胞特異的な分子を認識する抗体分子を、T細胞の表面に発現すると共に、T細胞の持つ細胞傷害機能を保持したT細胞だ。図には黄色と赤色の二つのT細胞刺激因子を示している(二つ有するのを第3世代のCAR-T細胞)が、この論文では、刺激因子として4-1BBと呼ばれる分子しか使っていない(第2世代のCAR-T細胞)。CAR―T細胞療法は、血液系の腫瘍でその臨床効果が実証されてきたが、固形がんに対してはその有効性は明らかにされていなかった。

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 今回は、最初は摘出した腫瘍部分に、後に脳室内にこのCAR-T細胞を注入して、グリオブラストーマに対する臨床効果を調べた結果を報告したものだ。前半はCAR-T細胞注入部分ではがんがコントロールされたと述べられていた。図には納得いかない部分もあったが、専門家が目を通しているのだから、間違いないだろう。

後半の脳室内注射では、明らかに効果が認められている。MRIでもPETでも効果が歴然としている。グリオブラストーマは、すい臓がんと同じくらい、悪性度の高いがんで、これといった治療法もない。外科的手術も、正常な組織をできるだけ傷つけないようにギリギリで切除するため、断端部にがんが残ることが多いし、がんが存在している部位によっては手術をすることさえ難しい。そして、放射線療法にも抵抗性だ。治らない病気を治すことができるようにする。これが私の人生のゴールだ。

繰り返し述べているが、何もしなければ、短期間に確実に死を迎える患者さんたちに挑戦するチャンスを与えるのが米国で、リスクに過大にこだわり、結果的に患者さんたちから生きる可能性を奪っているのが日本だ。この悲しい現実を眺め続けてきた。しかし、私は、患者さんに生きる可能性を提供したい。そして、それを、是非、日本でやってみたい。米国に来て5回目の正月を迎えようとしているが、悲しんだり、嘆いたりするのではなく、日本国内で大きな「日の丸」を掲げてみたいと強く思うようになってきた。米国でできることが、日本でできないはずがないのだ。現実を直視しない倫理委員や学ぶことのないメディアから、的外れな批判を受けるだろうが、患者さんと一緒に、新たな道を切り開きたい。

気力と体力がいつまで続くか、不安が無いわけではないが、来年は私にとって「人生最後の挑戦」をする年となるだろう。これまでに築きあげてきたものを総動員して頑張ってみたい。日本国内で、患者さんに希望を提供するために!

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