新たなる高額がん治療薬

今年のシカゴの気候はおかしい。昨日は最高気温が23度まで上昇し、これまでの記録を5度も更新した。2年前の同日の最低気温はマイナス12度だったので(これは過去最低気温)、1日の過去最低気温記録と過去最高気温記録の差が35度になる。東京や大阪では考えられない温度差だ。いつもなら、木の葉はほぼ完全に散ってしまっているが、今年は半分以上の樹木に葉が残っている。しかし、今日から明日にかけて急激に温度が下がり、明後日の朝には、今秋初めて氷点下になるという予想で、ようやく平年並みになりそうだ。しかし、50-60時間の間に25度も下がるという変化に体がついて行くのは厳しいものがある。

今週の「New England Journal of Medicine」誌にも新薬の第3相試験の結果が報告されていた。進行乳がん患者もしくは再発乳がん患者の第1選択治療薬として、CDK4/6阻害剤であるパルボシクリ+ホルモン薬アロマターゼ阻害剤を投与し、アロマターゼ阻害剤と比較したものである。対象となる患者は、乳がん細胞におけるホルモン受容体が陽性で、HER2陰性の症例だ(HER2陽性の場合は、抗HER2抗体であるハーセプチンが第1選択薬)。

パルボシクリブは米国では昨年2月にホルモン治療薬後の第2選択薬として承認を受けている。今回は第1選択薬として、ホルモン療法と併用で利用し、ホルモン治療薬単独と比較したものだ。日本では10月末にファイザーが承認申請を行ったところだ。

666名の患者さんをパルボシクリブ+アロマターゼ阻害剤併用群とアロマターゼ阻害剤単独群で、2:1の割合でランダム化して無増悪期間を比べた。パルボシクリブ群とコントロール群の無増悪期間中央値は、24.8ヶ月対14.5ヶ月で、パルボシクリブ群が10ヶ月以上長くなっている。統計学的には文句なく差が有意にある。

ただし、CDK4CDK6という二つの分子は細胞分裂に必須の分子であるので、予想通り骨髄細胞に対する障害が大きい。グレード3と4(入院加療が必要)の有害事象は、好中球減少症がコントロール群1.4%に対し、パルボシクリブ群では66.4%と、3名中2名の患者で好中球減少症が起こる。割合から考えると、この好中球減少症の大半が、パルボシクリブと関連している副作用と考えられる。白血球減少症も24.8%対0%だ。古典的な細胞傷害性の抗がん剤と同じだ。パルボシクリブ群では9.7%の患者さんが有害事象のため、投与を中止されているが、コントロール群でも5.9%の患者さんが有害事象で投与中止となっているので、投与を継続できない原因がすべてパルボシクリブによる副作用とは言えない。

いずれにせよ、この治療薬は経口治療薬であるので、確実に乳がんの治療薬として付け加えられることになるだろう。米国での価格は21カプセル(3週間服用、1週間休薬)で約1万ドル(110万円)である。高額療養費制度下の日本では、ほぼ全額が国の負担(税金での負担)となる。無増悪期間中央値は約2年であるので、進行乳がん患者は平均2年間服用し続けることになる。そして、この治療薬が対象となる患者さんは万単位でいる。どうする日本!!

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