免疫チェックポイント抗体医薬品の大流行;日本はどうするのか!

今週号の「New England Journal of Medicine」誌に免疫チェックポイント抗体薬を利用した臨床試験の論文が3編も掲載されていた。利用されている抗体も対象となるがん種も異なる。その組み合わせは、頭頸部がんXニボルマブ、非小細胞肺がんXペンブロリズマブ、メラノーマXイプリマブとなっている。厳密にいうとニボルマブとペンブロリズマブに関する2編は、共に抗PD-1抗体で、会社が異なるだけで、作用機序は同じだ。

 

まずは、頭頸部癌についてだ。361名の患者さんを2:1の割合で、ニボルマブ(抗PD-1抗体)群とコントロール群(メソトレキセート、ドセタキセル、もしくはセツキシマブのいずれかの治療薬)に振り分けて調べた結果だ。無増悪期間中央値は、ニボルマブ群2.0ヶ月対コントロール群2.3ヶ月と統計学的な差はなかったが、生存期間中央値(中央値は、平均値ではなく、長い方から数えて、真ん中に位置する人の期間;たとえば、11人いると6番目の人)は、ニボルマブ群7.5ヶ月対コントロール群5.1ヶ月と有意な差があった。1年後の生存率で見ると、ニボルマブ群36.0%に対してコントロール群16.6%であった。

 

生存率に関しては、PD-L1の発現が認められなかった群(1%未満の細胞が陽性)では、ニボルマブ群はコントロール群と差はなかったが、PD-L1の発現が認められた群での生存期間中央値は、ニボルマブ群8.7ヶ月対コントロール群4.6ヶ月と差が開いた。生活の質に関連するいくつかの要因についても検討していたが、いずれについてもニボルマブ群の方がよかった。米国FDAも頭頸部がんに対する適応を承認したので、標準療法が塗り替えられるだろう。PD-L1の発現が患者さんの選択に利用されるかどうかはわからないが。

 

二つ目の論文は、ペンブロリズマブ(これも抗PD-1抗体)をPD-L1陽性の進行非小細胞肺がんに対して利用し、化学療法群(プラチナ製剤を含む)と比較した結果だ。対象は治験に参加する以前には無治療で、かつ、がん細胞中の50%以上の細胞がPD-L1陽性の症例という、かなり限定的な患者さんだ。また、EGFRALK遺伝子の変異がある患者さんに対しては、これらに対する分子標的治療薬が優先されるので、この治験に参加することはできない。

 

ペンブロリズマブ群と化学療法群を無増悪期間中央値で比較すると、10.3ヶ月と6.3ヶ月の差があった。6ヶ月生存率は80.2%72.4%とペンブロリズマブ群が有意によかった。腫瘍が縮小した率も、ペンブロリズマブ群と化学療法群は、44.8%27.8%とかなり差が大きい。効果が継続している期間もペンブロリズマブ群の方が長かった。グレード3以上の有害事象は26.6%対53.3%とペンブロリズマブ群の方が低かった。明らかにペンブロリズマブの方が化学療法よりも優位だ。

 

3つ目の論文は、イプリマブ(抗CTLA-4抗体)をメラノーマの再発予防に利用した治験結果の報告だ。931名の第3期のメラノーマ患者を外科手術でがんを摘出したあとに、2群に分けて、一方はイプリマブを再発予防的に投与し、他方には偽薬を投与して比較したものだ。経過観察期間の中央値は5.3年だ。(再発予防に利用すると、経過観察期間が長くかかり、治験の費用は非常に高額となる。筆者注)

 

5年後における無再発率は、イプリマブ群40.8%に対して、コントロール群は30.3%と明らかに免疫チックポイント阻害剤イプリマブを利用した患者群の予後がいい。5年生存率は、イプリマブ群65.4%に対して、コントロール群は54.4%と優っている。5年以内に遠隔転移が起こった割合でも、イプリマブ群が約10%優っている。確定的ではないが、リンパ節転移が多くあった患者さんでは、両群の差が大きい。もちろん、免疫関連のグレード3・4の有害事象は41.6%2.7%と、圧倒的にイプリマブ群で高い。

 

まさに、免疫チェックポイント抗体医薬品が、がんの標準治療を大きく書き換えつつある。医療費の増大を憂慮している日本がすべきことは明白だ。適応がどんどん拡大する状況では、薬価50%カットも、焼け石に水だ。投与すべき、効果が期待できる患者を科学的に絞りこむことに、注力すべきなのだ。

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