メキシコ滞在;国に対する誇り

メキシコから戻ってきた。空港に午後1時に着き、自宅に戻ったのは午後9時過ぎ(時差はなし)だから、結構、体には厳しいものがある(と言いながらも、この文章を書いているが)。午後3時の便だったので、午前中、メキシコのど真ん中にある古代アステカの遺跡(テンプロ・マヨール)に連れて行ったもらった。スペインに侵略されて、壊されたので、土台部分しか残っていなかったのだが、この遺跡は1978年に偶然発見されたという。案内の人によると、古くなった電線を交換する工事中に見つかったようだ。言われるまで気づかなかったが、メキシコシティーには見上げても電線が見当たらない。すべて地下に埋められているそうだ。

 

遺跡は内側から外側にかけて7段階の工事で、7層構造の大きなテンプルが建築されたという。その隣に立つ大きなカソリック教会を作る際には、このテンプルを壊して、その石材を用いたと説明があった。この遺跡も教会も、焦げ茶色や黒色の火山岩が利用されている。そして、スペインがやってくるまで、古代のメキシコシティーは水に囲まれていたというから、驚きだ。遺跡が傾いているので、「地震の影響か」と尋ねたところ、「地盤が柔らかいところに作ったので、建造物の上を取り除いたために、その反動でジワリと地盤が傾いてきた」との返答を受けた。わかったようなわからないような説明だが、見回すと、周辺にも傾いている建物があった。そして、約1時間30分のツアーの説明で感じたことは、自分のルーツとなる人たちの築き上げたものに対する誇りだ。これはアステカに原点があり、それはマヤ文明の名残りだと誇らしげだった。日本にも千年単位の歴史があり、私はそれを誇りに思う。

 

と考えているうちに、トランプ氏が予想を覆して次期米国大統領に選ばれた理由の一端が思い浮かんできた。ニュースでは、選挙の事前調査に反映されない、聞き取り調査などに応じなかった、隠れトランプサポーターが多かったために、メディアの予想が外れたとのコメントがあった。

 

米国は20世紀の大半の期間、世界最大の強国であった。建国後150年経った頃から、経済でも軍事でも、世界をリードしてきた。しかし、多くの白人には、世界をリードしてきた米国という国の存在感が失われつつあることへの不満・怒りが蓄積されたいたのだと思う。2008年オバマ大統領が選出された時のキーワードが「チェンジ」であったが、テレビでは今回も約60%の人が「チェンジ」を期待していた。現状に怒りを覚えている人の80%がトランプ氏に投票したという。

 

「かつての栄光を取り戻す」と訴えたトランプ氏の発言に、「今でも米国は輝いている」と反論したクリントン氏だが、多くの有権者が、輝きを失いつつある米国に不安を感じ、米国の誇りを取り戻すような変革に期待したのだろう。今までは声もあげず、静かにしていた人たちが、「誇り」を取り戻す指導者として、トランプ氏を応援したのではないかと思う。もちろん、非現実的で荒唐無稽な彼の提案が、そのまま実行されるとは思わないが。

 

私の最大の関心は「Moonshot」計画の行方である。民主党政権が続けば確実に支援が続くと思っていたが、この状況では国主導でこの計画が続くかどうか、かなり危うい。共和党政権になると科学研究費が抑えられる傾向にあり、私の知人たちからも、それを不安視するメールが入った。盛り上がりつつある日本のゲノム医療がどうなるのか、それも心配だ。

 

選挙前の予想を裏切って、世間を唸らせるような政策を実行して欲しいものだ。レーガン大統領も最初は不安視されたが、偉大な大統領として称えられている。これから何が起こるのか、一挙手一投足に世界の注目が集まる。