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骨粗しょう症に抗体医薬!?その時、医療費は?

医療(一般)

シカゴの気温はようやく平年並みに冷え込んできたが、日曜日は20度を超える暖かさになる予想だ。紅葉黄葉も過去4年よりも遅く、多くの木が緑の葉を茂らせている。

 

今日の話題は、骨粗しょう症にも「抗体医薬」登場という、またしても、医療費の高騰につながることが確実なテーマだ。今週号の「New England Journal of Medicine」誌に「Romosozumab treatment in postmenopausal patients with osteoporosis」(閉経後の骨粗しょう症患者に対するロモソズマブ治療)というタイトルの論文が公表された。ロモソズマブというのはスクレロスチンという分子に対する抗体医薬だ。スクレロスチンは、骨を作るBMP(骨形成たんぱく質)の働きを抑えることによって、骨粗しょう症の一因となっているようだ。ロモソズマブは骨密度を増加させることがすでに報告されていた。

 

今回の論文は、約7000人の骨粗しょう症患者さんを、この抗体医薬を投与する群と偽薬コントロール群に分けた。本物群、偽薬群とも、月に1回を皮下注射した。12ヶ月継続した後、別の骨粗鬆治療薬を1年間全員に投与して、1年後、2年後の新規骨折発症数をもとに有効性を比較したものである。偽薬コントロール群3322名中59名(1.8%)で1年以内に背骨の骨折が起こったのに対して、ロモソズマブ投与群3321名中では16名(0.5%)であった。骨折の頻度は約73%も低下したことになる。背骨の骨折を、2年後の時点で比較すると、偽薬コントロール群対ロモソズマブ投与群2.5%0.6% と歴然たる差があった。背骨以外の骨折は、偽薬コントロール群対ロモソズマブ投与群では、2.1%1.6%で有意な差は認められなかった。

 

背骨を骨折すると、ベッドの上で安静にしていなければならず、それによって筋力が低下し、老人の場合、寝たきりになることも少なくない。また、血栓ができやすくなったり、肺炎を起こしやすくなるなど、長期間寝たきりになることによって多くの合併症を引き起こす。有害事象(薬剤の副作用と同じ意味ではない。日本の質の悪いメディアは、いつまでたっても言葉の区別ができないので、改めて断っておく)は二つの群では差がなかった。

 

米国ではすでに承認申請が行われており、承認されるのは時間の問題であると思われる。骨粗鬆財団のウエブページには、日本の骨粗しょう症患者数は1100万人と推定されると書かれていた。今、問題となっているニボルマブに比して、その患者数は2桁以上多い。どうも1100万人という数字が大きすぎるような気もするが、この数字をもとに、上記論文の割合を当てはめると、1年間の背骨の骨折患者数が約20万人から、約6万人に減ることになる。10万人単位で骨折が防げるなら、有り難いことだが、しかし、全員が110万円で(この数字には何の根拠もないが、1万円を切ることは絶対にないだろう)、年間120万円の治療を受けると、薬剤費は10兆円を超えることになる。

 

医療制度そのものを、きれいごとではなく、しっかりと現実を見据えて検討しない限り、医療保険制度の破たんは確実だ。

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