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マンモグラフィーは過剰診断につながるのか??????

日本癌学会が終わってシカゴに帰る頃には紅葉が進んでいると思っていたが、例年よりかなり気温の高い気候のためか、10月8日に戻った時には、9月末にシカゴを離れた頃とあまり変わっていなかった。しかし、一昨日から急に気温が低下し、出勤時の気温が6-7度まで下がったので、紅葉が一気に進んできたような気がする。ただし、明後日の最高気温予想が25度を越えそうで、今年は異様に暖かい日が続いている。

 

今週号のNew England Journal of Medicine誌に「Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis,and Mammography Screening Effectiveness」というタイトルの論文が公表された。マンモグラフィーの導入前後で、乳がん診断時の腫瘍サイズがどの程度変わったのかを調べたものである。

 

マンモグラフィーの導入前は、2センチ以上と2センチ未満の腫瘍の割合は、64%:36%であったものが、導入後の比は32%:68%と大きく変化していた。導入前は約3分の2が2センチ以上であったのが、導入後は3分の2が2センチ未満である。そして、私にはよくわからないロジックで、筆者たちは、「10万人中162人が乳がんと診断されている。しかし、大きながん(2センチ以上)の頻度(10万人中30人程度)は変わっておらず、2センチ未満のがんだけが増えているので、132人は過剰診断である」と述べている。

 

また、「乳がんによる死亡率の低下が、大きな腫瘍となってから発見される割合が減少している」ためだと述べる一方で、「大きな腫瘍における死亡率の低下は、治療法の進歩による」と強調している。ちなみに、論文では、小さながんにおける10年以内死亡率も減少している。この過剰診断と判断する理由が今ひとつわからない。近藤誠氏を喜ばすような論文だが、はっきり言って論理破綻だと思う。

 

10年以内の死亡率を1975-1979年と2000-2002年に診断を受けた症例で比較すると、5センチ以上では55%:43%、3センチ以上5センチ未満では39%:27%、2センチ以上3センチ未満では28%:16%となっている。2センチ以上では、10年以内の死亡率が約3分の2に減少しており、著者たちが言うように、種々の治療法の開発が生存率、治癒率の向上をもたらした事は確実だ。ただし、この論文は原発巣の大きさだけ評価しており、リンパ節転移や遠隔転移の有無などが全く考慮されていないのは残念だ。

 

しかし、全体として、私は、この過剰診断という結論には同意しかねる。1センチ未満の10年死亡率は2000-2002年には数%だし、1センチ以上2センチ未満では7-8%だ。明らかに、早く見つけたケースでは治癒率が90%を大きく越える数字であり、早期発見・早期治療はがん治療にとって重要であることを示している。そもそも、マンモグラフィーの目的は早くがんを見つけるためで、現に、早く見つかっている症例が増えている。したがって、大きくなって発見されるがんが見かけ上、増えないのはあたりまえではないのか?「大きながんが増えていない」ことは、早期発見に成功していることを実証しているものであり、この論文のデータでは、決して、過剰診断と結論づける内容ではないように思う。

 

2000-2002年のデータでも、2センチ未満の10年以内の死亡率は5%前後であるのに対して、2センチ以上3センチ未満では16%、3センチ以上5センチ未満27%、5センチ以上では43%となっている。がんのスクリーニングは「がんもどきを見つけいるだけで、医学的には意味がない」などは、非科学的な主張である。早期発見こそ、がん治癒率を高めるベストな方法だ。この論文が、悪魔の甘いささやきに利用されないことを願っている。臨床的にトップクラスの雑誌なのに、こんな結論がまかり通るのか?残念だ!!きっと、大きな議論を呼ぶに違いない。

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