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人工知能・ゲノムががん医療現場を変える

医療(一般)

月曜日の読売新聞の夕刊に、私がフロンティアという企業と一緒に、人工知能を利用して最適の治療薬を選択するシステムを作ると報道された。「選択」は医師と患者さんが話し合った上でされるべきなので、正しい表現は「考えうる選択肢を提示する」である。分子標的治療薬などの場合、選択肢は一つしかないかもしれないが、最終決定は、あくまでも患者さんの意思である。誤解があるといけないので、ここで説明しておく。

 

そして、今日、がん研究所(有明)がゲノムセンターを「プレシジョン医療センター」に改組し、臨床応用に向けた取り組みを強化すると記者会見した。私はアドバイザーとしてこのセンターに助言する。コンセプトは、私が20年以上前に打ち上げた「オーダーメイド医療」と同一だが、米国大統領が「プレシジョン・メディシン」計画をぶち上げた後は、「オーダーメイド医療」という言葉は、過去の遺物となった。

 

この1週間、多くの医療関係者と会議を持ったが、大きな世界の動きへの遅れを理解しつつも、何から手を出していいのかわからないと戸惑っているようだ。がんに限らず、医療現場は、このままでは駄目だと思いながらも、具体的な手が打てない状況だ。モグラたたきのように、問題がでれば、それを取り繕うような細切れの改革では、追いつけない。すでに、継ぎ接ぎだらけで、修理しようのないボロボロの衣料となっているようだ。マンションなど、修理に次ぐ、修理を重ねても、骨格が傷めば、建て直すしかない。国鉄が民政化してJRとなったような根本的な意識変革が必要だ。

 

そして、一般国民だけでなく、医師・看護師・薬剤師も含めた最新医療情報の教育が必要だ。かつて、バイオバンクを開始するにあたって、遺伝学やゲノム学の「啓蒙活動」が重要だと言った時に、「啓蒙」は差別用語だと言って文句を言ってきた記者がいた。本質よりも、枝葉末節にこだわって、医療の進歩にブレーキをかける人たちがたくさんいる。

 

と、話が逸れたが、ゲノムなどの知識なくして、今後の医療は成立しない。がんなど、ゲノム情報は必須となりつつある。しかし、日本では、ゲノムに関する教育、人の遺伝学やがんに関する教育なども、義務教育では、皆無に等しいといっていい。多くの人がポケモンに熱中しているが、スマートホンやパソコンレベルで、楽しく学ぶことのできるソフトを開発すればいいのではないか?

 

医療関係者には、これらの分野での最新知識を身につけるように、月に少なくとも2時間程度はウエブトレーニングを受けて、試験に合格しないと、資格停止などの措置を取ればいいのではないか?このような過程で、人工知能は医療の質を高めるのに、大きな貢献をすることが確実だ。医療関係者の知識レベルが、患者さんの人生を左右する時代だ。遺伝性のがんの知識など必須だと思うが、正しい知識を持っていない関係者は少なくない。「若いから、がんでないでしょう」など安易に言える医師など、医師の資格はない。

 

「医療費の増大が日本の大問題だ」と主張しているメディアが多いが、高齢化に伴って医療費が増大することなど、ずっと前から予測できたはずだ。医療を日本の経済活性化策の一つとしてまともに取り組んでこなかったツケが来ているだけだ。予算を垂れ流すのではなく、しっかりとした基本政策の策定し、実施しなくては同じことの繰り返しだ。

 

医療費を抑制することを国家としての優先課題にするのか、医療の質を保つために国民に負担増を求めるのかといった、基本的な議論さえできていないのが実情だ。医療が複雑化する中では、すべての医療関係者の質のアップが絶対的に必要だが、日々の診療に追われている現場はすでに疲弊しているのだ。医療の質を保ち、世界に冠たる医療制度を継続していくためには、「医療費」を悪者にするのではなく、もっと建設的な議論が不可欠だ。

 

PS:記者会見の様子が報道された。

http://www.asahi.com/articles/ASJB55HG7JB5ULBJ00Q.html

なんと、宿敵、朝日新聞にだ。記者には罪はないが、会見後の質問を「朝日の質問は受けない」と拒否したにも関わらずだ。朝日が私の写真を掲載させるのは嫌がらせか!!この会社の神経はどうなっているのだ。

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