愚の骨頂

岡山から東京に、新幹線で戻ってきた。20年ほど前は、毎週1回東京―大阪を往復していたが、3時間以上も乗っているのは体に堪える。岡山空港は不便だし、便数も少ないので、新幹線しか選択肢はなかったが、やはり、さすがに腰は痛い。昨夜は胸部外科学会の会長招宴で岡山・後楽園の能舞台で能楽を鑑賞した。時差ボケもあって、体力的にはかなり辛いものがあったが、生まれて初めて鑑賞する能楽は興味深かった。

 

この能楽鑑賞は、この学会の大会長である三好新一郎教授(私の大学の同級生)の趣味である。非常に貴重な体験をさせていただいたが、海外から来ていた人たちにはどのように伝わったのであろうか?偶然にも、能楽の際、隣に座っていたのは、学会の理事長の神戸大学の大北裕教授で、彼は天王寺高校の同級生だ。世間は狭い。

 

学会で何人かの方にお会いして話をしたが、口をそろえて、現在の日本医療開発研究機構(AMED)による研究費配分体制の歪さを嘆かれていた。NIHの研究費の係官は専門家だし、長期に渡って関与しているし、公平公正を十分に叩き込まれている。しかし、日本の役所は2-3年で担当が代わるので、専門性に欠ける。その上、予算が欲しい研究者側が卑屈になるためか、勘違いして、虎の威を借る狐のように振る舞う輩も少なくない。

 

米国NCI(癌研究所)の予算では、その7%、450億円が研究のマネジメントと支援に割かれている。研究は国の礎なのだから、その管理に十分な配慮をするのは当然だ。日本のように研究者が片手間にプロジェクト管理しても、十分な管理ができるはずもない。誰が、いつ、どこで、何をすべきかという根底に近い部分から見直す必要がある。

 

前回のブログでは、補正予算にまつわる税金の無駄使いについて紹介したが、結局、天下国家全体に関わるビジョンがなく、景気対策でお金を使うことが第一義の目的になっているから、意味のない買い物をして、狭い研究室をさらに狭くしているのだ。たとえば、これまでに国の予算で購入したDNAシークエンサーがどれくらい利用されたのか、しっかりと調査すればいいと思う。解析した対象が少なければ、少ないほど、一人当たりのDNAシークエンス費用が桁はずれに高くなっているはずだ。こんな無駄なことはない。そして、東北のメガバンクのように解析する試料が揃っていない段階で、DNAシークエンサーを購入する「愚の骨頂」もメディアは絶対に報じない。

 

私も、国際ハップマップ計画やバイオバンクジャパン計画などで、補正予算に助けられた側の人間だが、少なくとも、国の将来や国際貢献といった大きな視点を常に持って、文部科学省と交渉にあたっていた。

 

先週の月曜日に、ニューヨークで日米韓の3か国がバイデン副大統領を交えて会議を持ち、プロテオゲノミクス分野で協力することになったのは、がん研究の観点からも、国際貢献の観点からも喜ばしいことだ。70-80%の患者には効果がない免疫チェックポイント抗体の使い分けなど、是非、協力のもとに答えを見つけ出しいてほしい。

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