乳がん再発ハイリスク患者を遺伝子診断すれば化学療法不要??

ようやく、台北のホテルにたどり着いた。一昨日は自宅―シカゴオヘア空港を往復しただけだったが、結構これが堪えている。シカゴー成田行きの機内で、背部痛が起こり、湿布を張って少し楽になったが、いったん出直しとなった出張はやはり疲れる。台北で3泊し、土曜日の夕方に東京に戻り、日曜の朝、シカゴに戻るという強行軍だ。台北での明日からの2日半の予定を眺めるだけでぐったりとする。しかも、1か月後には、岡山で呼吸器外科学会、横浜で日本癌学会と続くので、出張が大嫌いな私は、気が滅入ってくる。

 

飛行機の中で、先週「New England Journal of Medicine」に発表された乳癌患者に対する術後化学療法の是非に関する論文を読んだ。臨床的に再発リスクの高い乳がん患者を、70種類の遺伝子発現情報に基づいて、ゲノムレベルで患者群をさらに2群に分け、リスクの低い群を(臨床高リスクーゲノム低リスク)群と定義した。これらの患者さんを2群に分け、一方は標準的化学療法を行い、他方はそのまま観察した。5年後の遠隔転移がなかった割合を比較すると、化学療法群95.9%に対して、化学療法なし群では94.4%とほとんど差がなかった。全患者のうち、(臨床高リスクーゲノム低リスク)群は、全患者の役4分の1に相当し、この群では化学療法は不要では?と勧められていた。

 

しかし、(臨床低リスクーゲノム高リスク)患者でも、5年後の遠隔転移がなかった割合は、化学療法群対無化学療法群で95.8%対95.0%となっていた。無化学療法群で比べると臨床的高リスク群と臨床的低リスク群で、94.4%と95.0%と差がない。この論文のこの数字を見ると、臨床的な高リスク群と低リスク群の意味さえわからなくなってくる。私の理解が間違っているのかもしれないが、何とも訳の分からない論文だ。予後予測より、化学療法の有効性予測をする方がもっと役立つと思うのだが?

 

かつて(今も岩手医大泌尿器科で続けられているが)、二つの化学療法のどちらが、個々人の患者さんに適切かを遺伝子の発現をもとに予測する方法を報告した。結構、いい結果だったが実用化には至らなかった。目の前の患者さんに提供している治療法がベストかどうか、自問自答すれば、この方向に向かうはずだと思ったが、白人の結果を信じ、日本人の結果にはケチをつける日本人社会の特性が象徴的に表れたような気がする。そして、やはりベンチャー企業につなげる仕組みができていないのも課題として残されている。何か突破口が必要だ。

 

台北への機内でワインを飲んだためか、思わず1時間くらい寝込んでしまったためか、あまり眠くない。明日は、朝9時から夜9時くらいまで予定が入っているのでそろそろ寝ないといけないのだが困ったものだ。引退が近づいているのに、海外にネットワークを広げる必要があるのかどうか疑問だが、私は忙しくなくなったら、燃え尽きるかもしれない。いずれ、日本のお役に立つだろうと、自分を励まして頑張るしかない。

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