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オピオイド系鎮痛薬の蔓延

今日は、シカゴ大学医学部全体の催し物として、米国のSurgeon General (公衆衛生局長官)や上院議員を招いた講演会(パネルディスカッション)が開かれた。テーマは「中等度や高度の疼痛に対する治療薬として利用されているオピオイド系鎮痛薬の蔓延にどのように対処すべきか」であった。Surgeon Generalの本来の語源は、軍医のトップであるが、現在は、国の医療行政のトップの医師に相当する肩書きとなっているようで、この方も内科医である(あった?)。

長官からは、オピオイド錠剤の生産量は国で規制されているが、昨年度は130億錠になっていること、これは米国民の全員が1ヶ月服用する量に相当すること、全米でオピオイド依存症・オピオイド中毒が発生し、その頻度が増加していること、それでも、必要な患者さんに十分供給できていない、などの現状が紹介された。今年Lancet誌に発表された論文によると、北米(米国・カナダ)、ドイツ、オーストリアなどでの使用量が特に高くなっている。

オピオイドには、モルヒネ、ヘロイン、コデイン、オキシコンなどがあるが、アヘン類縁物質である。アヘンは、かつて戦争の原因ともなった代表的な麻薬である。日本では、がんなどで生ずる激しい痛みに対してでも、医療用オピオイドの使用には消極的であるが、米国では、慢性の疼痛などにも広く処方されているため、使用量が多くなっていると考えられる。これらオピオイドは、強力な鎮痛作用に加えて、幸福感をもたらす作用があるため、使用法を誤ると依存症に陥り、時として中毒症が起こる。若者の間にも、これら薬剤の利用が増えているようで、オピオイドの蔓延を憂慮したアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、今年の3月にオピオイドを慢性疼痛の患者に処方する場合のガイドライン(GUIDELINE FOR PRESCRIBING OPIOIDS FOR CHRONIC PAIN)を公表している。

 

ただし、がんの疼痛をコントロールに利用した場合には、精神的な依存が生ずる可能性はきわめて低いとの報告がある。私もインプラント手術のあとに、バイコディンというハイドロコドンというオピオイド系の薬を含む薬剤の処方を受けたが、あっという間に痛みが和らいだ経験がある。もちろん、依存症にはなっていない。

パネルディスカッションでは、長官や上院議員に加え、患者さん・疼痛専門医・医学教育専門家も議論に参加したが、医師は、痛みは単なる病気の症状のひとつとして捉えるのではなく、「痛み」という病気として捉え、個々の患者に応じた疼痛治療を適切に行う重要性を訴えた。長官は、いろいろな数字を挙げて、米国社会の抱える問題を指摘していたが、頭が切れ、強い意志を持っている人との印象を受けた。

日本ではこの長官に相当する立場の人がいるのかどうか定かではないが(少なくとも、医療現場の問題を、国を代表して指摘し、その解決策を一般国民や医療関係者に提示する役職を私は知らない)、医療の現場を知る人が、国を代表して、国会議員や医療関係者と一緒に医療政策を考えることが重要だと改めて考えさせられた場であった。

(PS)体操の内村航平選手が個人総合で金メダルを取った。5種目を終わって1点近くの差の2位だったので、ダメと思っていたが喜ばしいことだ。「日の丸」万歳だ!!それにしても、おかしいのは、フランスの解説者が「日本の女子体操選手がピカチュウみたいだ」と言ったために、人種差別との批難を受けていることだ。フランスでは日本のアニメの人気が高いし、ポケモンは今や日本を代表するアニメのキャラクターだ。色が黄色いので、黄色人種差別をしたと見られているようだが、ここまでくるとやり過ぎだ。可愛い日本のキャラクターに例えたと笑って聞き流せないものなのか!この解説者がお気の毒に思える。

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