免疫チェックポイント抗体薬副作用の人種差?

米国では、共和党、民主党の党大会も終了し、いよいよ11月の大統領選向けて、次の段階へと移行しつつある。これらの党大会は大統領選挙に向けたショー的なアピールの場であると同時に、党としての公約を明確にする場である。国をどういう方向に導くのかを示さなければ選挙は戦えない。日本の参議院選挙を振り返ってみると、「安倍政治打倒」を謳う野党連合は、日本の将来像を全く示していない。安保法案を「戦争法」と名づけて反対していたが、どう国を守るかという現実的な方策がない。総理が言ってもいないことをそうだと決め付け、大声で叫んでいるだけだから、信任を失っているのだ。憲法改正絶対反対を叫んでいたが、憲法には改正規定があるのだから、彼らの主張は明らかに、国民が有する憲法改正の権利、立憲主義に反する。

医療でもそうだが、一体、国は将来の医療をどうしようと考えているのか、何も見えてこない。耳に残っている2週間前の役人の言葉に対して、私の怒りは、まだ、収まらない。「アポロ計画」を振り返ってみよ。すべての必要な要素のひとつでも欠けていれば、われわれは、人類が人に到達する姿を見ることがなかったはずである。エンジン、内部の装置、宇宙服、そして、宇宙飛行士、膨大な要素のどこかひとつに欠陥があれば、それでおしまいだ。国家プロジェクトはその全体像を見据えて、すべての要素が完璧に揃うように整備されねばならない。みんなで仲良くやりましょうといった甘い理想だけでは、絶対にゴールにたどり着けない。

バイデン副大統領の「Moonshot計画」は、まさに「すべての要素を完璧に揃えてがんの治癒を目指す」点にポイントがある。がんを治癒させるために必要な要素、障壁となっている点を洗い出して、基礎からがんを治癒させるまでを遅滞なく進めるために、今、計画が練られている。もちろん、民主党政権が続かなければ、頓挫するリスクは高い。しかし、研究者の個々人が、ちまちまと研究を進めていているだけで、人類を月に送るような大プロジェクトがうまくいくのかどうか、少し考えてみれば誰でもわかることだ。がんという国民病に対して、国家がもっとしっかりとした戦略を練り、予算を投入して対応しなければ、先進国として恥ずかしい。

そして、予想通り、日本で、抗免疫チェックポイント抗体薬の副作用が問題となり始めたようだ。2週間前の香港でのカンファレンスの際にも、どうもアジア人には、これらの治療薬に対する重篤な副作用の頻度が高いように思うと、複数の医師が語っていた。そこで、欧米のグレード3-5(入院加療を必要とする副作用で、5は死亡例)の副作用データをいくつか拾ってみると、129人中6人(4.7%)、268人中24人(8.9%)、118人中20人(16.9%)、107人中24人(22.4%)などとなっている。対して、日本では、111人中18人(16.2%)、20人中8人(40%)などの文献報告があるが、小野薬品がまとめたものでは、悪性黒色腫1592人中281例(17.7%)、非小細胞肺がん7045人中581人(8.2%)となっている。したがって、これらの報告を見る限り、それほど差があるように思えない。

 

しかし、これまでの抗がん剤にはないような、自己免疫と考えられる甲状腺障害、大腸炎、I型糖尿病などの特徴がある。それよりも、白衣を着た詐欺師たちが保険外で投与している場合、どの程度、副作用がモニタリングされているのか、いささか心配になる。

 

そして、悪性黒色腫や非小細胞肺がん患者は、医療保険でカバーされ、高額療養費制度で守られるが、これらの保険適応以外のがん患者は、治療を受けようと思えば、自己負担しなければならず、また、専門知識のない詐欺師たちを受診しているという国家レベルでの大きな矛盾にどのように対応するのか?場当たり的な対応ではなく、医療百年の計に基づいた方針の策定が肝要だ。

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