急激に進むゲノム医療;米国FDA、フランス、リキッドバイオプシー

3連休に部屋をきれいに片づけようと無理をしすぎたのがたたり、肩が凝り、背筋痛がかなり強かったので、イブプロフェンという薬剤を飲んで職場に出かけた。途中で、ふわふわとした気分になり、足がおぼつかなくなったので立ち止まって休憩した。その時、「そうだ、歯医者に処方された量は馬に投与するような量だった」ことを思い出した。日本のウエブで検索すると、1回200mgで1日600mgと書かれている。私が1回に服用した量は800mgだ。これは相撲の小錦関に投与するような量だ。しばらくその場でじっとしていると立ちくらみのような症状はなくなり、無事大学にたどり着いた。痛みは楽になったが、少々やばかったかもしれない。

 

昨日から、今朝にかけて重要な論文や国レベルでの発表が相次いだ。まずは、Science Translational Medicine誌に発表された、ジョンス・ホプキンス大学グループのもので、II期の大腸がんの手術後に、血中でがん由来DNAが検出された症例では、14例中11例が2年以内に再発している(残り3例は再発していないが、まだ、1年前後しか経過していない)。しかし、がん由来DNAが検出されなかった例では、観察期間平均が27ヶ月で、164例中6例(9.8%)しか再発していない。したがって、がん由来DNAが検出されたケースでは、術後化学療法が必要ではないかと議論されている。

 

しかし、われわれの研究を振り返ると、1995年にLancet誌に、病理学検査でリンパ節転移が陰性でも、DNAレベルで転移があると考えられるケースは、再発率が高いので、術後化学療法が必要だと提案している。II期の大腸がんは病理学的に(顕微鏡観察で)リンパ節転移がないものを指す。しかし、われわれは、DNAレベルで非常に高感度に、がん細胞がリンパ節に存在していることを検出できる方法を報告した。おそらく、上記の論文に匹敵する意義があったと思っているが、臨床医の協力が得られず、臨床応用できなかった。今考えると、残念なことをしたと思う。あの時に、遺伝子診断の会社を立ち上げていればよかった。

 

そして、米国FDAから、二つのガイドライン案が公表された。

「Use of Standards in FDA Regulatory Oversight of Next Generation Sequencing (NGS)-Based In Vitro Diagnostics (IVDs) Used for Diagnosing Germline Diseases」と

「Use of Public Human Genetic Variant Databases to Support Clinical Validity for Next Generation Sequencing (NGS)-Based In Vitro Diagnostics」

である。次世代シークエンサーの臨床応用を視野に入れたガイドライン案である。上記は、稀な遺伝性疾患を、次世代シークエンサーを利用して診断するためのガイドライン、後者は診断の際に、科学的な根拠を明確にするための、公共のデータベースの情報の利用に関するガイドラインだ。これらは、プレシジョン医療プロジェクトの一環として作成されたものだと、FDAコミッショナーが述べている。

 

そしてフランスからは、今日、「FRANCE MÉDECINE GÉNOMIQUE 2025」が公表された。フランスをゲノム医療の最先進国にする取り組みが書かれているようだ(原文を入手したが、フランス語なので、それを要約したニュースからの情報なので)。ざっと読む限り、基本的には、米国のプレシジョン医療と同じもののようである。科学・技術的なレベルでのイノベーションの必要性、倫理的課題、臨床応用への課題(国家レベルでのインフラ整備を含む)などへの対応策が述べられている。「National Alliance for Life Sciences and Health (Aviesan)」のトップが、フランスの首相に提案したもので、フランスを「ゲノム医療」をリードする国にするための案だ。

 

米国のガイドラインは、大きなプロジェクトを前進させるための戦術であり、フランスの案は、大きな戦略と種々の分野での戦術に当たるものである。いずれにせよ、国家レベルでの取り組みが重要である。これでいいのか日本の医学・医療は、と改めて考えさせられる2日間であった。

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