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進行がんも、転移がんも治癒させるのだ;T細胞受容体導入T細胞療法

医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

シカゴの天候は、早春と真夏を行き来するような激しい変化で、4-5日前は最高気温が20度を切っていたが、金曜日・土曜日は35度近い暑さとなり、今日は25度程度、明日は再び35度弱の予想と目まぐるしく変化している。昨夜は、学会などが頻回に開催されるマイアミ州のオーランド(ディズニーワールドがあある)のナイトクラブで銃が乱射され、50人が射殺され、50人以上が病院に運ばれたと報道されていた。オーランドでは、歌手が射殺された事件があったばかりだ。暑苦しいというか、重苦しい感じだ。これだけ頻回に銃乱射事件が起こっても、銃規制論議は進まない。

 

がん治療の分野では、予測通りのことが急展開しつつある。米国癌学会のレポートでも報告したが、ネオアンチゲン(がん細胞で検出された遺伝子異常によって生じた、がん細胞の目印となるがん抗原)を認識するT細胞を見つけ出し、治療に応用する研究が進んでいる。6月10日号のScience誌に「Targeting of cancer neoantigens with donor-derived T cell receptor repertoires」というタイトルの論文が発表された。ノルウエーとオランダのグループが中心となって進められたものだ。

 

がん細胞で見つかったネオアンチゲン候補を細胞内で作らせ、それをもとにがん細胞を敵と認識するリンパ球を探し出す方法だ。論文では、57のネオアンチゲンを調べ、11個のネオアンチゲンが、健常人由来のリンパ球からネオアンチゲンを認識できるリンパ球を誘導できたと報告していた。これらのT細胞が、患者由来のメラノーマ細胞を認識するようだ。

 

このネオアンチゲン特異的T細胞受容体を、患者由来のTリンパ球に導入して治療に応用する研究も、急速に進んでいる。ウイルスベクター(ウイルスを運び屋として遺伝子を導入する方法)を利用してリンパ球にT細胞受容体を発現させるすると、患者さんにリンパ球を戻す際にハードルが高くなるため、ウイルスを利用しない遺伝子導入法なども研究され、実用一歩手前まできている。

 

進行がん、転移がんは、治らない、諦めるしかない、そして、極端な場合「戦うのは無駄だ」という声もある。しかし、そのような時代では、無くなってきているのだ。この時代の急速な動きがあるにもかかわらず、日本はあまりにも鈍感である。著名人ががんに罹患すると、メディアは大騒ぎする。日本国内では、多くの人ががんに罹患して戦い、その家族も心を痛めているのに、不思議な話だ。

報道をする側の人たちは、なぜ、欧米では新しい希望を生み出すことができるのに、日本では希望が生み出せないのか、国としてどうすべきかなどに、全く思いが及ばないのだろうか。著名人であっても、なくても、命は平等だ。しかし、どこから情報が漏れたのかわからないが、どうしてプライベートなことをさらけ出さないといけないのか、不思議な話だ。本当に変な国になってしまったものだ。

私は、日本のがん患者さんや家族と、一緒に頑張りたい。諦めないで、一緒に頑張ろう。

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