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抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブが米国FDAによって承認

医療(一般)

今日、米国FDA(Food and Drug Administration;医薬品食品局)は、抗PD-L1抗体医薬品であるアテゾリズマブ(atezolizumab)を承認した。これまでに紹介してきた抗PD-1抗体ではなく、「世界初」の抗PD-L1抗体の承認である。対象となった疾患は、すでに標準療法を受けた、局所進行性もしくは転移性の尿路上皮性がんである。これは310名の患者を対象とした臨床試験の結果に基づくものであり、注目すべき点は、この試験ではコントロール群は設けられていないことだ。新たな治療薬の承認だけでなく、馬鹿の一つ覚えのようにランダム試験を叫んでいる臨床腫瘍医には、この現実をしっかりと見つめて欲しいと思う。

 

すべての患者に対して3週間ごとに1200mgが投与された。この量は臨床試験の早い段階で決められた量だ。『日本では、一部のクリニックの医師が、自由診療で、低用量の抗PD-1抗体医薬を、安価で(患者さんの支払えそうな金額を設定しているだけで、科学的な根拠は全くない)提供しているようだが、これらはまさに白衣を着たペテン師・詐欺師だ。鎮痛剤でも、量を5分の1や10分の1にすれば全く効かない。こんな行為が、医師法という名のもとに容認されていることが許されていいのか?!』

 

話を戻すと、310名の患者中14.8%で腫瘍縮小が認められた。これまでの経験では、同じような条件の患者さんは、効果が期待される治療薬はないのだから、約7人に一人の腫瘍が縮小したのだから立派なものだ。治療効果の持続(継続)期間は2.1-13.8ヶ月(注;大半は判定時点まで効果が継続している)であった。46名の腫瘍縮小例のうち、37名は6ヶ月以上にわたって効果が継続され、6名は1年以上継続している。この試験では、治療前のがん組織におけるPD-L1の陽性率(5%以上の細胞が、PD-L1を発現していると判断される場合に陽性)が調べられており、32%が陽性。この陽性患者100名に限ると、腫瘍縮小率は26.0%と倍近かった。しかし、210名の陰性患者(PD-L1陽性細胞が5%未満)でも、9.5%で腫瘍縮小が認められた。しかも、この2群間では、腫瘍縮小効果持続期間に差はなかったそうだ。PD-L1を標的としているにもかかわらず、PD-L1でグループ分けしても、この程度の違いしかないのでは、あらかじめ患者さんを選択するのは無理だ。陰性グループでも、10人に一人効果がある場合、患者さんを非適応と切り捨てるわけにはいかない。この曖昧な実情は、製薬企業に取っては投与患者の幅が狭められないので、大きな売り上げにつながっていいだろうが、公的医療保険制度の国では、医療保険制度の破綻につながる。

 

副作用に関しては、入院加療の必要なグレード3-4レベルの副作用が50%で認められている。感染症、自己免疫病的な症状(肺炎、肝炎、腸炎、甲状腺炎、副腎不全、膵炎、発疹・皮膚炎など)が出ている。この副作用率の高さも、頭痛の種だ。しかし、この免疫チェックポイント阻害剤の大きなうねりは止めようがない。適応が全がん種に広がれば、医療経済の破綻は確実なものとなる。国を挙げて、効果の期待できる患者を絞り込む研究に取り組むべきだ。そうでなければ、これら免疫チェックポイント阻害剤が保険適応となっていないがんに罹患しているがん難民が、これらの薬剤を求めて、白衣を着た詐欺師の餌食にされるだけだ。

 

PS; 全く話は変わるが、以前に報告したシカゴ大学の優秀指導者賞の授賞式が、今日あった。受賞者3人全員が腫瘍学研究者であったので、参加者の一人が、偏っているのではとちゃちゃを入れたが、腫瘍外科医・腫瘍内科医・がん研究者の数が圧倒的に多いのだから仕方がない。司会をしている人が、選考委員会メンバーの名をあげて、委員会メンバーは偏っておらず、公平な選考をした結果だ、と笑いながら返答していた。私が「立派な指導者」として選ばれるなどとは、夢にも思っていなかったので、不思議な気持ちだ。私には似つかわしくない賞だとは思えるのだが、学生の推薦があってこそ、選ばれるので、「名誉な」ことだ。もっと素直に喜ばなければ。