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初めての瀋陽訪問

雑事

またまた、成田空港にいる。これから中国の瀋陽に向かうところだ。中国医科大学で講演をするためだ。シカゴ大学の研究室にいる、この大学出身の研究者を介して、名誉教授授与につながったためである。日本という国が中国とどのように向き合っていくのは難しい問題だ。しかし、どこの国であれ、個人レベルでの信頼関係を築き上げていくことを怠ってはならないと思う。私ができることなどたいしたことはないが、1が100個あつまれば100になるので、個人個人の努力の積み重ねが大切だ。

 

特に、高齢化社会という課題は、アジア諸国が早晩直面するテーマであり、高齢化社会の最先端を行く日本が、どのように乗り切っていくのかは重要だ。中国は一人っ子政策が長く続いたので、高齢化の進行も急ピッチである。もし、日本が高齢化に伴う、医療費や介護の負担に対して上手に対応することができれば、それは世界の先例となり、日本型モデルを世界に定着させることができる。日本が中国に範となりうる対策を示すことは、いろいろな意味で大切だ。

 

話は変わるが、がんの抗体治療薬に対する薬価が、今頃になって、日本で大きな問題になっているようだ。しかし、メディアの取り上げる時期が、あまりにも遅すぎた感がある。子宮頸がんワクチンでも、明らかに日本は世界から見ると異端児となりつつある。何か問題が起こった場合に、議論が局所化するため、プラス面とマイナス面を全体的に包括した議論ができない。また、短期的な視点、感情的な論調に偏りがちで、長期的に見た視点が欠ける傾向にある。

 

免疫チェックポイント抗体は70%の患者さんには効果がない。この効かない患者さんも含めて、1日延命するために治療薬がいくらかかるのかと言った議論になっているが、効く効かないを見極めることができれば、もっと意味のある議論ができるはずだ。企業は使い分けしない方が利潤が上がるので、支払い側(日本の場合には国)が無駄使いを防ぐ方法を積極的に主導していくのは当然のことだ。

 

しかし、肝炎治療薬の議論などを聞いていると、患者さんの長期的なQOLの改善、長期のスパンでの必要となる医療費の削減、労働力の維持という観点が全く欠けている。肝炎が慢性化すると、肝硬変、肝臓がんへとつながり、死に至る。1錠何万円もするのは暴利を貪りすぎだという批判があるようだが、病気が治癒すれば、肝硬変も肝臓がんも起きない可能性が高い。そして、仕事を続けることも可能となる。当然賃金の一部は税金として支払われる。そして、将来的には、この感染症そのものが消滅するのではと言われている。目先の1錠が高いという短絡的な議論をすべきではないと思う。

 

そして、繰り返すが、日本で革新的な薬剤が創造できない理由とそれを打ち破るための方策にもっと注力すべきだと思う。AMEDの予算配分の議論など全く低次元で、国はこの組織に何を期待しているのか、はなはだ疑問だ。競争的資金を、自らのビジョンもなく配分していることで日本が変わるとは思えない。ビジョンに基づいて、自らの責任で予算執行し、結果に対しても責任を取る。それができなければ絶対に日本は変わらない。この差が日米の大きな差を生み出しているのだ。