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化学療法+ペプチドワクチン療法?!?!

昨日、シカゴに戻ったときは、ニューオーリンズよりも気温が高く、まるで真夏のような感じだったが、今朝の気温は6度と20度も下がり、コートを羽織って出勤した。ただし、ニューオーリンズで感じた、免疫療法に対する燃え滾るような熱気は、私の気持ちに火をつけた。もはや、静観している状況にはない。

直感的には、再発予防などには複数のオンコアンチゲンワクチンで十分ではないかと思う。ネオアンチゲンにはゲノムシークエンスが不可欠だし、バイオインフォーマティクス、医療用ペプチドワクチン合成などの費用がかかり、医療費の観点からは厳しい。再発リスクの高いようながん、たとえば、肺がん、すい臓がん、トリプルネガティブ乳がんなどには、オンコアンチゲン+ネオアンチゲンワクチンの併用がいいかもしれない。もちろん、誰がどこまで医療費を負担するかの議論が必要だ。

そして、非常に進行したがんには、免疫チェックポイント抗体、オンコアンチゲン+ネオアンチゲンワクチン、あるいは両方で、時間稼ぎをして、その間に、ネオアンチゲン抗原を認識するT細胞受容体をクローニングしたT細胞療法を準備するような方法が大きな広がりを見せるのではないかと考えている。これには、膨大なインフラ整備が必要で、オールジャパンでする必要があるので、残念ながら、日本より中国でより早く動き出す可能性が高い。トップダウンで速やかに多額の予算を投資するスタイルは、中国の社会制度のほうがはるかになじんでいる。

オーダーメイド医療を提唱してから現実に医療に組み込まれるまでに20年程度かかったので、私の直感はあてにならないかもしれない。もちろん、どのような形で具現化されるのか、あるいは、本当に実現可能であるのか予見できない。しかし、自分の直感にしたがって前に進むしかない。ただし、iPS細胞を使った治療よりもずっと早く、これらの免疫療法が医療現場に生かされるように思えてならない。

それでは、化学療法と免疫療法の立ち位置は、今後どうなるのか?私は化学療法+ワクチン療法が免疫療法の臨床効果を高めると思う。それを示唆する論文が、先週の「Science Translational Medicine」に報告されていた。「Vaccination during myeloid cell depletion by cancer chemotherapy fosters robust T cell responses」というタイトルの論文だが、化学療法と平行してワクチン治療すると免疫反応が格段に高まるという話だ。これまでも、ある種の抗がん剤は、免疫を抑制する細胞を抑える(結果的にがん細胞に対する免疫反応を高める)ことが示唆されていたが、この論文は、マウスモデルだが、それを支持する結果となっている。

 この論文では、パピローマウイルス由来のワクチンを利用していた。パピローマウイルスは頭頚部がんや子宮がんを引き起こす誘引となっている。多くの頭頚部がんや子宮がんはこのウイルスに感染しているので、このウイルスを標的とした免疫療法が視野に入っている。この一環として、T細胞受容体療法が計画されているが、私は副作用リスクが高いと考えている。なぜなら、ウイルスはがん細胞だけに感染しているのではなく、その周辺の上皮細胞にも感染しているからだ。感染している範囲がどの程度かわからないが。ウイルス蛋白は、人に対して特異的だが、感染している細胞はがん細胞だけではない。これを忘れて、ウイルス蛋白はがん細胞特異的と誤解している人が多いが、この点は冷静に評価する必要がある。

いずれにしても、がん治療は大きく変わろうとしている。特に、米国では、明日、アメリカ癌学会で講演をするバイデン副大統領主導でがんを治癒させる「Moonshot」計画が進められている。46歳のご子息を脳腫瘍で失くされた副大統領は、がん撲滅への思いが強い。日本にも、がん治療に情熱を燃やし、国をリードする政治家が登場してほしいものだ。

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