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女性ホルモン補充療法・子宮頸がんワクチン

昨日、夕食から帰り、テレビをつけるとANAインスピレーションという米女子ゴルフのメジャー大会の様子が放映されていた。2日間、首位タイだった宮里藍選手の様子が気になっていた。残念ながら、私が見た時には、昨日の7アンダーのままで、2打引き離されていた。最終ホールの場面が流されている時に、解説者が「日本でスーパースターであり、世界のトップに立った選手が、この数年間は苦しんでいた。その中で、自分のスタイルを見出し、頑張っている姿、特に、今日はドラーバーで40ヤードも離されている中で自分のプレーに徹しているのは称賛に値する。」と褒めていた。

 

それを聞いていて、ジーンときた。米国内にも、ちゃんとわかっている人がいるだけでうれしくなる。そして、最後の18番ホールでバーディーを取った姿を見て、目頭が熱くなった。体格が大きく劣っているにもかかわらず、数年間の苦労の末に、この3週間の活躍ぶりは見事なものだ。単に、日本人として喜ばしいだけでなく、異国で頑張っている同志として共感を覚える。今日の最終日、ぜひ頑張ってほしい。

 

と思いながら、自分のスタイルを見出すこと、自分のできることを見出すことが大切なのだと、自戒する。医療は大きな変革の時期を迎えている。高齢化社会に対応するためには、病気の予防、病気の悪化の予防が重要だ。薬剤を効率的に利用し、副作用を回避するゲノム医療も、患者さんのQOLの向上、無駄な医療費の削減のためにも、不可避だ。貿易赤字を減らすための、医療イノベーションも、今のままでは絶対に前に進まない。私自身の30年の経験を生かすために何ができるのか、決断する時期にきているのではと思う。

 

話は変わるが、最新の「New England Journal of Medicine」誌に、女性ホルモン補充療法の開始時期によって、動脈硬化に与える効果が異なるという結果が示されていた。閉経後6年以内に補充療法を開始した群では、動脈硬化抑制効果があるが、閉経後10年以上たってから補充療法を開始しても動脈硬化抑制効果はなさそうだ。健康で長生きするには、先手必勝かもしれない。もちろん、低下した女性ホルモンを補充するのは、骨粗しょう症予防や精神的な効果もあるので、遅く始めるとまったく意味がないと断じるわけにはいかない。

 

ただし、女性ホルモンは乳がん細胞の増殖を促進するので、その点にも留意しないといけない。いずれにせよ、物事にはプラス面とマイナス面があり、それを総合的に判断して、進めていかなければならない。しかも、社会全体から見た側面と個人レベルで見た側面がある。例えば、子宮頸がんワクチンは年間3000人の子宮がんによる死を大幅に減らす効果が期待される。その反面で副反応を訴える人たちが少なからずいる。海外で安全宣言がされていることを理由に、副反応を過小評価する声があるが、免疫反応には個人差が大きい。スチーブンス・ジョンソン症候群などの重篤な薬剤副作用はHLAのタイプに依存しているので、副反応が日本でだけ高くても、不思議ではない。

 

公衆衛生学的観点では、子宮頸がんワクチンは推奨されるべきとは思うが、苦しんでいる人たちへの救済措置は当然だ。そして、不可解な副反応を科学的に追及することを忘れてはならない。やればできることをしないのが問題だ。副反応が日本で高いならば、日本が科学的な方法で解決すべきなのだ。国の責任は、社会全体から見て、利益を最大限にして、不利益を最小限にすることだ。日本のメディアは、不利益を必要以上に感情的に煽り立てる。20年後、日本だけ子宮頸がんの発生率が高いままだと、また、無責任に国を批判するに決まっている。

 

医療における課題は、科学的に議論し、副反応問題を克服し、子宮がんによる死を減らしてほしいと願っている。

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