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すい臓がんの光線力学的治療(Photodynamic therapy)

昨日の内科講演会ですい臓がんに対する光線力学的治療(Photodynamic therapy ;PDT)の紹介があった。何年か前に、聞いたことがあるが、副作用である光線過敏症の症状が強く出た患者さんの写真を見て、これは難しいと思った記憶がある。光線力学的治療とは、光に対する感受性の高いある種の物質が、腫瘍組織に集まりやすい性質と、そして、光を当てることによって活性酸素を放出する性質を利用した治療法である。光感受性物質を注射して一定時間がたった後に、がん組織に光を当てて、活性酸素を放出させ、その活性酸素の細胞破壊効果を利用してがん組織をたたく治療法である。

 

日本でも、早期肺癌、早期食道癌、胃癌、早期子宮頸癌に対して保険適応されているようだ。光線過敏症も新しい光感受性物質の開発によって軽減されていると聞いた。光を当てることが必要なので、がんが体の深部にあると利用するのが難しく、内視鏡などで光を当てることができる部位に限られていた。しかし、講演では、CTスキャンで画像を確認しながら、すい臓がんに光を当てる道具を誘導し、光を当てていた。治療効果は抗がん剤治療とほとんど差が無かったが、1回の治療だし、抗がん剤のような副作用が起こらないので、患者さんのQOLと言う点では優れているかもしれない。しかも、高齢者の場合には、治療法が限定的なので、ひとつの選択肢としては考えてよいかもしれない。

 

NCIのウエブページにも、この光線力学的治療が紹介されているが、そこには、長所も短所も明確に書かれている。読んでいて私が興味を引かれたのは、光線力学的治療によるがん組織の破壊が、免疫反応を誘導する可能性があると紹介されていた部分である。

 

どんな治療法にも限界があり、今、流行している免疫チェックポイント抗体も平均すると20-30%の効果しかない。生存率に統計学的な差があっても、延命するだけで、治癒には程遠い。分子標的治療薬でも、がんは小さくなっても、再発するとあっという間に命が奪われることが多い。延命するのではなく、がんの治癒を目指すには、併用療法を考えることが不可欠だ。

 

併用療法で重要な点は、作用する仕組みと副作用を起こす臓器である。がん細胞を叩く仕組みが異なっている治療法を組み合わせれば、相乗的な効果が期待できる。たとえば、分子標的治療法と免疫療法の場合、前者はがん細胞の中でがんを叩き、後者は外からがん細胞を攻撃する。副作用の場合、組み合わせたものが、いずれも骨髄抑制を起こすものであれば、白血球減少症や血小板減少症がさらに強くなり、生命に影響を及ぼしかねない。どのように組み合わせるのかが課題だ。

 

講演では、ナノ粒子に抗がん剤と光感受性物質を組み込み、より効果を高めた動物モデルの例が紹介されていた。薬物療法・放射線療法・免疫療法・核酸療法・細胞療法や薬剤をデリバリーする方法の組み合わせを考えると膨大な数となる。したがって、科学的に妥当な組み合わせを考え、それらを効率的に評価していくことが望まれる。米国ではがんの臨床試験だけで1000種類近くが実施中である。もちろん、それらの中には併用療法も含まれる。

 

日本は2000年以降起こったパラダイムシフトから取り残されているので、大胆な取り組みで、追いつくしかない。黙ってみていても、何も起こらないのは確実だ。

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