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予期せぬ感染症に対する備えは大丈夫か?

医療(一般)

米英の臨床系雑誌「New England Journal of Medicine」と「Lancet」誌から、「ジカ熱ウイルス感染と小頭症を含む胎児発育異常」、「ジカ熱とギランバレー症候群」の関連を強く示唆する報告がなされた。

 

前者は、2015年9月から2016年2月の期間に登録された88名のジカ熱感染疑いの妊婦を調査した結果である。88名のうち、72 名(82%)が、血液や尿検査でジカ熱ウイルス感染陽性と判定された。72名の陽性患者のうちの42名と陰性の妊婦16名に対して胎児の超音波検査が行われた。コントロール群16名には異常は見つからなかったが、陽性群では12名で胎児に何らかの異常が認められた。このうち2例では36週と38週で死産という不幸な転帰をたどっている。5名の胎児では、子宮内での発育遅延(小頭症を含む)が確認されている。

 

妊娠初期の感染が胎児に影響を及ぼすと考えられていたが、異常の見つかった12例の胎児中、8例の感染時の週齢は20週以降、5例は25週齢以降であった。ただし、データが示されている図2は全員で42名のはずだが、棒グラフの数を何度数えても41名しかなかった。出版を急いでいたのかもしれないが、少しお粗末だ。

 

と、横道に逸れたが、42名中、12名というのは少し驚きだ。日本では毎年100万人の出生数だが、爆発的な流行になると、WHOではないが、まさに非常事態となってしまう。海外と比較すると、Public Health(公衆衛生)の重要性が十分に認識されていないが、いろいろな観点から、この分野を強化していくことが急務である。

 

「Lancet」誌では、ギランバレー症候群患者42名全員に抗ジカ熱ウイルス抗体であったという報告である。確かに、統計学的には大きな差はあったので、ジカ熱感染が何らかの関連があるのは間違いないだろう。しかし、コントロール群でも、約半数で抗体陽性であったので、ジカ熱感染そのものがギランバレー症候群の原因とは言い難い。おそらく、感染が誘因となって、特定の患者群で神経細胞を標的とした自己免疫反応が誘導されたのではないかと考える。患者さんのHLAなどの免疫関連分子を調べてほしい。

 

ウイルスや細菌は、増殖が速く、遺伝子レベルでの進化も常に起こっている。人の往来が激しくなればなるほど、予期せぬ感染症の爆発的な拡散リスクが高くなる。起こってから対策を考えるのではなく、万一つの事態に備えた準備が大切だ。

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