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日米連携が米中連携に置き換わる日??

医療(一般)

日米癌学会では、90分ずつの各セッションで日米の代表が一人ずつ講演し、さらに日米いずれかの若手がひとり発表するスタイルが定着している。今回は10回目になるが、1990年前後の最初の2-3回は米国側サイドの研究内容が優位で、日本は米国から学ぶ形であったが、2000年前後には、日米のサイエンスのレベルは拮抗する形となった。これは、がん研究支援体制が充実したからに他ならない。特に、ミレニアムゲノムプロジェクトを契機に、がんの基礎研究に対する支援は手厚くなったことが大きい。竹槍で戦うのではなく、戦うだけの装備をしなければ相手になるはずがない。

 

しかし、がん研究支援に対する非科学的な批判が高まり、研究体制が弱体化されるにしたがって、日米の格差は急速に広がりつつある。日本の研究者集団には、「国益」という二文字はない。再三再四、このブログで触れているが、がんゲノム研究での遅れがボディーブローのように効いてきている。そして、薬剤開発の遅れは、膨大な貿易赤字に示されるように、致命的だ。一部の研究者は、がんゲノム研究で国際的な貢献を果たしているが、全体的には大学生と小学生くらいの差がある。もはや、がんを遺伝子レベルで分類するというのは常識だが、欧米には少なくて、日本に特異的に頻度が高いがんでない限り、欧米のあとを追いかけるしかない。日本人には多くても、中国でも頻度が高い胃がんなどでは、中国の方が優位になりつつある。

 

さらに大きな問題は、米国側は遺伝子レベルでの分類や分子生物的な解析が、薬剤の使い分け・薬剤の開発に速やかに直結しているのだが、日本の研究は、基礎研究段階から診断や治療へ進めていく展望ががない点だ。がん研究の最終的なゴールは、がん細胞を利用した研究、マウスモデルを利用した発がんの仕組みの解明ではなく、がんを治療するための研究、がん患者のQOLを目的とした研究でなければならない。もちろん基礎研究は重要だが、今日の発表を聞いていて、再び大きく広がった日米の差を痛感せざるをえない。

 

応用研究は基礎研究よりもはるかに予算が必要だし、歳月も要する。これを認識し、評価の物差しを変えない限り、日米格差は広がる一方だ。もちろん予算は絶対的に不足している。米国のがん関連予算は、日本と比べて桁違いに多い。応用研究につながる基礎研究も根絶やしにされそうな危機的状況だ。このような状況が続けば、いずれ日本が相手にされなくなり、日米がん会議が、米中がん会議にとって代わられる日が来るのも遠くないかもしれない。そんな不安が、頭をよぎる一日であった。日本政府は、死因の最大の要因となっているがんに対する対策に、もっと心してほしい。

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