アルツハイマー病にも免疫活性化が有効?

今週末のシカゴは寒波に襲われ、気温はマイナス20度近くまで下がり、昼頃から雪が舞っている。明日のハワイ行きのフライトに支障がないことを願いつつ、このブログを書いている。土曜日にシカゴに戻ってくころには、10度近くまで暖かくなるので(東京基準では、寒いが)、これが今年最後の厳しい寒さになるだろう。

 

さて、今日の話題も認知症のひとつ、アルツハイマー病である。しかし、このブログの読者にはなじみの、免疫チェックポイント阻害剤、抗PD-1抗体についてである。今月号の「Nature Medicine」誌に短報として掲載されていた。もちろん、まだ、人間のデータではなく、マウスのアルツハイマー病モデルに有効だったレベルの話である。

 

アルツハイマー病の脳に特徴的な病的変化として、ベータ・アミロイド蛋白の脳への沈着(蛋白が異常に蓄積すること)が知られている。この蛋白質を除く、あるいは、蓄積を抑える薬剤の検証が人でも試みられているが、その効果は実証されていない。今回は、マウスのアルツハイマー病モデルに対して、免疫チックポイント抗体を投与すると、沈着していたベータ・アミロイドが減少し、記憶力が回復したというのだ。免疫反応を活性化すると、脳組織の中に貯まったアミロイドを排除するという。これは驚きだ。

 

もし、同じことが、人間でも起こるならば、いろいろな観点で大変だ。好ましい観点では、アルツハイマー病の認知症症状が改善する可能性があることだ。患者さん本人だけでなく、介護負担などの社会的な大問題の解決に寄与できる。しかし、負の側面は、膨大な医療費だ。1回だけの投与では効果が継続しないようで、反復投与が必要だ。そうなると、医療費の高騰は避けられない。薬剤費の負担と、病気の改善による患者本人の社会的活動への貢献や家族の負担軽減などの複数要因を考慮しなければならないので、一方的に、医療費の高騰だけをターゲットにした批判では話は収まらない。また、この薬剤によって起こる副作用にも注意が必要だ。

 

果たして、人ではどうなのか。それを一から臨床試験で調べなおすのか?それは、非効率的だ。なぜなら、免疫チェックポイント抗体治療はすでに広く利用されているからだ。アルツハイマー症状の認められるがん患者に対して利用されたケースのデータをまとめれば、この論文のデータが、人にも当てはまりそうかどうかは、簡単に推測できるはずだ。そして、それが確認されたならば、効果は本物か、また、どのような投与方法で十分なのかの臨床試験が求められる。

 

免疫系のバランスの欠如がいろいろな疾患のリスクや原因とつながっていることは、今では常識だ。このブログで度々触れているが、免疫ゲノム学を国レベルで推進するのが急務だ。

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