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医療ミスを繰り返す医師

医療(一般)

この1週間ほどの暖かさで(と言っても東京よりは寒いが)、眼下に広がるミシガン湖を覆っていた氷や科学博物館の南側の池の氷もすっかり姿を消した。今週末の最高気温予想は7-8度だ。平年よりも10度くらい高い。このまま、春になってほしいと願うばかりだ。

本日の話題は、今日発行の「New England Journal of Medicine」誌にあった「Prevalence and Characteristics of Physicians Prone to Malpractice Claims」というタイトルの論文に関してだ。簡単に言い換えると「医療ミスを冒しやすい医師の頻度とその特徴」である。2005年から2014年の10年間に、国立臨床医データバンク(National Practitioner Data Bank)に登録された66,426件の医療賠償をもとにした解析結果である。訴えられて数ではなく、何らかの金銭的支払いをした事例の調査結果である。

 この66,426件に関係する医師の数は54,099人であるので、一人の医師が10年間の調査期間中に複数回にわたって賠償金を支払ったことがわかる。この約54,000人のうち、84%にあたる45,000人の医師は一度だけあり、支払い金額は全体の68%に相当する。8846人は2回以上の賠償金を支払っており、全支払い額は、全体の32%に相当する(この16%の数に相当する医師は最低でも2回払っているので、1件あたりの支払額が同じでも、このグループに属する医師たちが全体の支払額の32%に相当するのは当然だ)。約4%に相当する2160名は3回以上、そして126名は10年間に6回以上、賠償金を払っている。これだけ繰り返すと、余計なお世話かもしれないが、これらの医師は医療事故保険に加入するのを拒否されると思うのだが?患者さんにとっては、それで医療行為をあきらめてくれる方がいいかもしれない。

 また、66,426件の内、大半は和解で解決されているようだが、3%の1786件は裁判所の判決で決着がついている。また、賠償金(和解金)の平均値は約37万ドル(約4400万円)である。診療科目別で比較すると、脳外科、整形外科、一般外科、形成外科などの外科系の診療科で頻度が高く、内科に比べて賠償金を払うケースが2倍前後高くなっている。病院が都会にあるのか、田舎にあるのかの地域間格差は、全くなかった。25-34歳の医師は、他の年齢層より3分の1程度であったが、米国では医師になる年齢層が高いし、この年齢層では責任を持たされる医師の割合が低いので、これも当然の結果だ。

 犯罪では再犯率と呼ばれるが、賠償金を払うような医療事故を繰り返すリスクを表現する日本語は私には浮かばないので、とりあえず、「医療ミス再発率」と呼ぶが、前歴1回の医師が、2年以内に再び賠償金を支払うような事態を引き起こす可能性は10%弱(少し高いような気がするが?)、それに比して5回の前歴がある場合は40%、6回以上の前歴がある場合には60%超となる。5年以内だと、それぞれ60%、80%と跳ね上がる。

 これらの結果は、賠償金支払いに至るような医療事故は、まったくの偶然で起こるのではなく、一部の医師が、技術の問題か、注意力の問題か、その他の要因かは不明だが、明らかに医師としての適性を欠いていることがわかる。患者さんとのコミュニケーションを上手にとって信頼関係を築くのも医師の技量として不可欠だ。信頼関係が欠如している場合には、争いごとに発展するリスクが高くなるのも明らかだ。

 日本国内にこのようなデータベースがあるかどうかは不明だが、米国のこのデータベースは議会の要請で設置されている。医療を改善していくためには、この種の膨大なデータが必要なことが明白だ。大規模データを利用した論文を読むたびに、米国の体制と日本の体制には、太平洋を隔てた以上の大きな差があるように思えてならない。

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