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オバマ大統領「米国はがんを治癒させる国だ!」;悔しくないのか、日本の首相は!

シカゴは最低気温が華氏0度(摂氏マイナス18度)に近い天候が続いている。さすがに歩いて通勤という無謀なことはしない。昨日は研究所から病院の講義室に外を歩いていったが、わずか100メートルの距離でも体の芯まで冷え込む。心筋梗塞で野垂れ死にすればいい方で、ICUなどに運ばれれば個人破産する危険性もある。こんなに寒いのに、昨夜は午後10時前までマンションの暖房がダウンして大変だった。マンション全体がひとつの暖房システムなのでお手上げだ。

ただし、冷えた体は暖かい場所に行けば温まるし、熱いシャワーを浴びればすぐに回復する。しかし、希望のないがん患者や家族の冷え切った心は、簡単には癒せない。今朝、米国内の方からメールが届いた。30歳代のご子息が末期のすい臓がんと診断され、余命数週間から数ヶ月と宣告され、がんに対する治療はせず、痛みのコントロールだけと言われたそうだ。どこかでOTS964のことを知り、私に一縷の望みを賭けて問い合わせてこられた。詳しい経過はわからないので論評は避けるが、私にも30歳代の息子と娘がいるので、その気持ちを考えると心が痛む。助けて欲しいと神様にすがる想いなのだろう。切ない!

こんな時、自分の研究成果が、希望を提供しているのか、絶望をもたらしているのか、心が揺れ動く。新しい薬を生み出すには長い時間と膨大な経費が必要だ。身をもって体験して、今更ながら、高いハードルに挑んだ、自分の無謀なチャレンジ精神に後悔することもある。しかし、患者さんや家族からの声を聞くたびに、この挑戦は研究者としての使命だと思うし、私の天命だと言い聞かせるしかない。

でも、いくつかの可能性のある薬剤を創り出した今、最も感ずることは、臨床試験の壁の高さだ。薬剤を生み出すよりも、薬として利用できるかどうかの白黒をつける道のりは、想像を絶する険しい道のりだ。特に、この段階では私にできることはほとんどない。なんとかしようと思えば、偏向新聞の餌食になるだけだ。黙って経過を見守るしかないのは、薬の候補を創り出す過程よりもストレスがかかる。徳川家康のように、長い道のりを我慢して耐えて歩くしかない。織田信長のように振舞えば、本能寺の変が待っている。

臨床試験にまで進んだ薬剤が、規制当局から承認を受ける確率は約5分の1だ。もちろん、分子標的医薬品など、しっかり基礎研究に裏付けられているものは確率が高くなるはずだと考えている。臨床試験に挑む以上、その効果に期待しているし、そこに至るまでに、ちゃんとした科学的エビデンスを積み重ねている。しかし、動物実験で安全だったものが、人でも安全だと保障することなどできるはずがない。黙って見守るしかないとわかっていても、やはり、もどかしさは禁じえない! 100%確実な死よりも、1%の望みに賭けたい、こんな想いの患者や家族の気持ちにこたえることができない自分が悲しくもある。

そんな中、昨日のオバマ大統領の一般教書演説の一文がアメリカ癌学会から送られてきた。

“------with a new moonshot, America can cure cancer. ------------------       For the loved ones we’ve all lost, for the family we can still save, let’s make America the country that cures cancer once and for all.”

あえて和訳はつけないが、日本の政治家には、こんな気の利いた一文を発することができないものなのか!日本は黙ってこれを聞いているだけなのか?がんの研究費がこんなにちっぽけで、一流国といえるのか?日本という国には、がんを治癒させるという気概がないのか!

安倍総理、お父様はどんな病気に命を奪われたのでしょうか?日本の誇りを賭けて、がんとの闘いに国を挙げて挑んで欲しいと期待するのは私だけでしょうか?

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