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オバマ大統領「Precision Medicine」宣言から1年;中国は米国を凌ぐか?

シカゴは急激に冷え込み、今朝の最低気温はマイナス17度、体感温度マイナス22度となった。さすがに、歩いての通勤は諦めて、バスで大学に向かった。家からバス停、バス停から研究所まで、合計で約200メートル程度歩いただけだが、鼻の中がヒリヒリする。先週まで例年より暖かかったので、今朝の寒さは身に凍みた。

オバマ大統領が「Precision Medicine」イニシアティブの宣言をして約1年が経ったが、米国内での大きな変化は見えてこない。そんな中、「Nature」誌のニュース欄に、中国の動きが報告されていた。昨年5月に中国を訪問した際、多くの研究者が「Precision Medicine」という言葉を使っていたことに驚いた話は、以前紹介した。中国も国策として「Precision Medicine」に取り組むようで、具体的な計画は3月に発表される。推測によると、この「Precision Medicine」計画には15年間で1兆円(92億ドル)を越える予算が投入されるとのことだ。平均すると年間約700億円で、米国の現在の予算約250億円をはるかに凌駕する。

研究予算の獲得に向けた綱引きが行われているが、興味深いのはDNAシークエンス担当をどの企業が担うかだ。BGIは世界に冠たるDNAシークエンス企業である。しかし、「Precision Medicine」計画のシークエンス拠点としては、最新型のシークエンサーを擁する3つの新興企業、上海にあるWuXi PharmaTechとCloud Health、そして、北京に拠点を置くNovogeneが、老舗のBGIよりも優位であると述べられていた。もちろん、BGIは反論していたが、政治的要素が大きい中国で、最終的にどの企業が、国策プロジェクトの基幹を担うのか、注目だ。

それにしても、物理的にも、政治的にも、米中間に挟まれる、世界3番目のGDPを誇る日本の存在感の無さは救いようがない。このブログで繰り返して述べているが、科学政策のトップであった人たちの見識のなさが、日本のゲノム医療を致命的に駄目にしてしまったのだ。米国の一流研究者は、自分の研究分野で世界的な研究成果をあげているだけでなく、大きな視点で、俯瞰的に将来の見通しを語ることができる。一流のプレーヤーであるが、一流のマネージャーでもあるのだ。それに対して、日本の一流と言われている研究者たちは、プレーヤーとしての実績は一流だが、マネージャーとしては最低の部類の属する。

これは、エリート教育の差だ。シカゴ大学内を眺めても、将来のリーダーを育てる教育、支援体制がしっかりとできている。自己利益誘導型人間は、早い段階で、エリート集団から排除されるようになっていると感じている。幅広い見識、強力なリーダーシップ、公平で的確な判断、これを満たされない人間をトップに据えてはいけない。どれ一つ欠けていても、組織はうまく機能しないし、当然、成長しない。

今の中国は、この観点で大きな岐路に立っている。日本も長い政治的な混乱から抜け出して、もしかすると、3点差で負けている9回の裏ツーアウト満塁の最後のチャンスかもしれない。三振か、ホームランか、安倍政権の次の一手に、不安と期待が頭をよぎる。

 

PS:今、米国では宝くじに注目が集まっている。日本のロトのような宝くじが、1等の当たりが出ないまま、雪だるま式に膨れ上がり、先週土曜日抽選では最高賞金額が1000億円を超えた。これも当たりがなく(私も思わず買ってしまった)、次回は1500億円と予想されている。

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