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母親が妊娠中にがんと診断されたらどうする?子供に与える影響は?

今朝は東京の真冬のような寒さを覚悟していたが、最低気温は6度で、ほぼ無風だった。シカゴに慣れたためか、この程度なら、比較的暖かいと感じる体感温度が恐ろしい。今年は、寒くなりそうで、寒くならず、まだ、氷点下まで下がっていない。4年前にシカゴに移った時の気候に近く、比較的穏やかだ。こんな気候なら、ずっとシカゴにいても苦にならないのだが?

本題だが、小児がんを除き、一般的には、がんという病気は高齢になるほど罹患リスクが上がる。しかし、ある年齢になると突然リスクが上昇するのではなく、がんの罹患率は加齢とともに2次曲線的増加し、60-70歳代がピークとなる。しかし、乳がんの年齢別罹患率を見ると、20-25歳代から上昇し始め、40-60歳代にピークが続くパターン(人口10万人あたり180人前後)となっている。30歳代後半の乳がん罹患率もピークの3分の1(人口10万人あたり60人前後)と比較的高い。

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女性の初婚年齢が高くなり、2012年の時点で29.2歳であったので、現時点ではほぼ30歳になっていると思われる。これに伴って、出産年齢も高くなり、妊娠中に乳がんなどが見つかるケースも決して稀ではない時代となっている。日本では、妊娠中にがんが発見されると、「妊娠を断念して、がん治療を優先する」ように勧める医師が多いように思う。ホルモン療法、抗がん剤治療など、胎児への影響が想定されるし、がんという病気の性格上、数ヶ月―6ヶ月間無治療というのも、母体の健康を考えると厳しいものがある。かといって、治療の胎児への影響を考える上で、参考にできるようなデータも乏しいのである。

先週の「New England Journal of Medicine」誌に掲載されていた「Pediatric Outcome after Maternal Cancer Diagnosed during Pregnancy」という標題の論文は、まさに、妊娠中にがんと診断された患者さんが出産した場合、その子供に与える影響について考察したものである。妊娠中に母親ががんと診断された、129名の子供(4組の双生児を含む。出産した母親の数は125名)の調査結果を調べてまとめたものである。比較対照群として、同じような条件の母子(母親が妊娠中にがんと診断されていなかった)を選んで比べた結果である。参加した施設は、ベルギー、オランダ、イタリア、チェコの4カ国の施設であった。

 妊娠中にがんと診断された母親群の年齢は33.4歳(幅は19.6-43.5歳)で対照群は31.0歳(20.6-40.2歳)で、人種の分布や教育歴も同じようになっている。母親ががんと診断されたときの妊娠時期は1.0-37.5週(1.0週で妊娠をどのように確定したのか疑問は残ったが)、中央値で17.7週であった。母親が受けた治療は、子供の数別で見ると抗がん剤治療96名、放射線治療11名、外科療法13名、2名がその他の薬物療法(ハーセプチン、インターフェロン)、14名が無治療となっている(複数の治療法を受けている場合もあるので、合計は129名より多くなっている)。

 いろいろな角度で調べた結果、がんと診断された群で早産が多かった傾向はあるものの、特段の差がなかったとのことである。もちろん、今回の研究対象数が限定的であること、妊娠の時期を考慮に入れた解析が不十分であることなど、さらなる慎重な解析が求められる。実は、私も、この論文を目にするまでは、母親の治療を優先する、抗がん剤などによる胎児の影響は大きくない、したがって、妊娠は犠牲にしても仕方がないと思っていた者のひとりである。この論文を読んで、自分の不明が恥ずかしくなった。

結婚が遅くなり、出産年齢が高くなってきている今、授かった子供さんを大切にするためのがん治療研究もきわめて重要だ。

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