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「がん細胞 対 免疫細胞」の闘い(2)

医療(がん免疫・免疫ゲノム学)

昨日の間に、残りを書き上げる予定であったが、夕方、全く何の予兆もなく、突然にiPhoneの画面が真っ暗になってしまった。バッテリー残量は十分にあったはずだと思いながらも、何かの拍子にバッテリーがなくなったのかと安易に考えていた。しかし、家に帰って、充電を試みるが何の反応もなく、パソコンにつないでもiPhoneを認識しないので、事態は深刻だ。強盗に襲われて取られてしまうと困るので、しっかりとバックアップをしておけばと危機意識は持っていたが、まさか襲われることがないだろうと危機管理ができていなかった。これでは、日本の原理主義野党を批判する資格がない。「もしも」のことを想定し、準備しておくのが危機管理だが、自分に甘すぎたと反省しても後の祭りだ。ミサイルが飛んできて被害を受けてからアタフタしても遅いのだ。ベッドに入るまで、いろいろと試みたが、全く駄目で、失ったデータをどうするのかと考えると眠りにつけなかった。

そして、寝坊をしてしまい、まどろみから覚めて、あきらめきれずに再度確認すると、何事もなかったかのように、正常に作動するではないか!いったい、昨夜の努力は何のだと腹が立ったが、データは回収できそうなのでホッと胸を撫で下ろす。まだ、保証期間中なので、取り替えてもらう手配をして、データ保存だ。

と、昨日中に続編がアップできなかった言い訳を長々としたが、本論に戻りたい。

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以前にも触れたが、がんの免疫療法に相当する治療法は1890年前後に始まっている。骨肉腫と呼ばれるがんに感染が起こり、それを契機に、がん細胞を攻撃する免疫細胞が呼び覚まされ、全身に広がったがん細胞が叩きのめされた。その若いがん患者さんの観察をしていたコーレー医師によって始められたのである。この先例から、個々の患者さんで何が起こっているのかを観察し、考察する重要性を忘れてはならない。500人の治療群と500人のコントロール群を比較した結果しか、エビデンスと思わない医師には、特にこの点を強調したい。患者さんを十把一絡げにすることしかできないようでは医療の進歩はない。

話は逸れたが、がんの周辺にはがんを攻撃する働きを持ったリンパ球が存在する。そして、強かながん細胞は、自分を守るために、それらのリンパ球を骨抜きにする針(PD-L1)をがん細胞の周りに張り巡らせ、攻撃側のリンパ球の表面にある物質(PD-1)を介して、弱体化させる。また、がん細胞は攻撃側リンパ球をおとなしくさせるリンパ球(制御性リンパ球)を自分の回りに呼び集めるしたたかさも備えている。本来は、過剰な免疫反応が体を傷つけないために備わっているものであるが(免疫チェックポイント=わかりやすくいうと、不必要に過剰な免疫反応を抑え込むための装置《全然、わかりやすくないか?》)、がん細胞はこの仕組みを悪用して自分を守っているのである。

このがん細胞が悪用している部品を抗体(抗免疫チェックポイント抗体)という道具で無力化する治療法が、非常に効果的に働き(一部のがん患者さんに対してではあるが)、目覚しい治療効果を示している。米国では、がん細胞を守るために悪用されている別の部品を抗体で無力化する治療法の開発が進められる一方、さらにがんに対する攻撃を高めるための工夫がなされている。がんを攻撃するリンパ球を活発にする薬剤と平行して盛り上がってきているのが、ネオアンチゲン療法と呼ばれるがんワクチン療法である。

「ネオ」というのは「新しい」という意味であり、がん細胞に起こった遺伝子異常によって新たに生じた、真のがん細胞にだけ存在する抗原(アンチゲン)である。がん細胞では多くの遺伝子異常が生じているが、遺伝子の異常によってタンパク質(アミノ酸が数十から数千個つながってできている)の中のアミノ酸が置き換わる。タンパク質は、細胞の中のプロテアソームと言われる工場で分解される。部品再利用の一環だが、この時に、アミノ酸が9-10個程度つながったペプチドが生み出される。

このペプチドがHLA分子と結合することが、自分と自分以外のものを識別するために重要だ。この仕組みがあるからこそ、われわれは細菌やウイルスを外敵と捉えることができる。すなわち、自分でないものを外敵と判別できることが、免疫反応にとって鍵を握っているのである。がん細胞だけで特別に作り出されるペプチドは、がん細胞が外敵として認識されるスイッチをオンにすることになり、がん免疫治療のために重要な意味を持ってくる。

がん化には遺伝子異常が不可欠だが、遺伝子異常はがん細胞を外敵と認識する免疫反応に火をつけることになる。実際、がん化につながるような遺伝子異常は恒常的に起こっており、われわれの体は危険な細胞を日々排除しているのである。しかし、がん細胞は巧妙に自分を攻撃する免疫を抑え込む。しかし、この新しいネオペプチド(アンチゲン)の数が多いほど、免疫チックポイント抗体がよく効きそうなことがわかってきた。そして、ネオアンチゲン療法へと急展開している。

(しかし、この原稿を書いている間に目にした新しい論文が、これまで行ってきたオンコアンチゲン療法も無視できない事実を突きつけた。原稿が長くなるので、「がん細胞 対 免疫細胞」の闘い(3)に続く。

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