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小豆島の思い出

雑事

ふと思いつき、ユーチューブで伊東ゆかりさんの「小指の思い出」を聴いた。何がきっかけになったか思い出せないが、なんとなく聴きたくなった。昭和42年の歌だそうだが、なぜか小豆島・内海町の内海病院に赴任していた昭和54年当時のことが走馬灯のように頭をよぎった。誰かの小指を噛んだのか、誰かに噛まれたのか、まったく記憶がないが(何もなかったと思うが、後日証人が現れる可能性は100%否定できない)、突然である。

 

勤務がスタートする前日、前任者であった私の同級生と食事をしている時、病院から呼び出しがあった。私は着任辞令を受けとっていなかったが、とりあえずついていった。泣き止まない赤ちゃんが運ばれていた。お腹が膨満して、嘔吐していた。小さい子供は言葉が通じないので診断が難しい。年齢から考えて腸重積の可能性があったので、浣腸をしたところ、イチゴジャムのような便が出てきた。腸重積でほぼ確定である。

 

腸重積とは、小腸の最後の部分が大腸に入り込んで腸を塞いでしまう病気である。単なる腸閉塞ではなく、小腸に血液を送り込む血管も一緒に入り込む。入り込んだ腸が腫れあがり、小腸の血管を締め付けるので、腸に血液が流れなくなり、そのままでは、腸管が壊死して(わかりやすく言い換えると腐って)生命の危機につながる。

 

同級生は全く経験がなかったが、私は前任の大阪府立病院救急医療専門診療科で2週間前に経験したところだった。処置が遅れると、壊死した腸管を切り取る以外に救命の手段はないので、すぐに腸重積を体外から手で修復する以外に方法はない。たった一度の、しかも、2週間前の経験であるが、熟練の医師のように、「静脈麻酔で眠らせている間に修復しましょう」と言ってしまった。前回は先輩の指導の元にうまくいったが、この時は指導者などいない。しかし、高松まで運ぶ余裕もない。

 

まだ、任命されてもいないのにいいのかと思いつつ(築地の新聞社が喜びそうなフレーズだ。「資格なし診療」とでも非難するか?命より形式が大事なバカ記者は)、気合を入れて、麻酔をかけ、小腸を押し出すようにした。麻酔下に、盲腸に相当する部分に、手で塊が触れた。じゃんけんの「グー」の状態で塊の上に手を置き、ゆっくり開きながら、小腸を押し出す。心の中でうまくいきますようにと神様に必死でお願いしながら、3-4回操作を繰り返しただけで、お腹の塊が触れなくなった。これで「大丈夫だと思う」と患者さんと家族に言いつつも、心はドキドキだ。

 

手術で何とかする自信はあったが、子供の麻酔は難しい。「神様、仏様、いや、誰でもいいからお願い」と念じつつ、造影検査をした。すると大腸からスムースに小腸に造影剤が流れていく。「よかった」と心の中で万歳しながら、患者の家族、母親と祖母に、大丈夫ですと威厳をもって告げる。あー、よかった。明日から勤務する病院での面目が保てた。

 

翌朝、病棟に連れていかれて、びっくり!前日の赤ん坊の患者さんの祖母が白衣を着てそこにいるではないか。この看護婦Yさん(当時の呼び名の看護婦をそのまま利用)には在任期間中の6か月間、本当によくしていただいた。このYさんは、腎臓がんで帰らぬ人となってしまったが、忘れられない小豆島時代の恩人である。最大の恩人は、私より10年先輩のA医師である。公私ともに、いろいろなことを教わった。このA医師も、食道がんで旅立たれた。寂しい。

 

私に「心電図の読み方」の本を持ってきて、「勉強してください」と言ったT医師。私の前任者は全く信用されていなかったみたいだ。2-3週間後に失礼なことをしたと謝罪してくれたが、循環器疾患では本当にお世話になった。心臓ペースメーカー手術も指導してもらい、2例経験した。

 

4月に新規採用された看護婦さんは、前日の夜に熱が出たと言って、救急外来を受診してきた。聴診器を当てるために、上半身を脱いでもらった。呼吸音には異常はなく、解熱剤だけ処方した。もちろん、その時には翌日から同僚となることなど知る由もない。翌日、なんと外科病棟に彼女がいるではないか。「昨日はお世話になりました」「どうも」と言いながら、二人とも顔が真っ赤。見られたくないものを見せてしまった女性と見てはいけないものを見てしまった男性の鉢合わせだ。もちろん、不謹慎な気持ちで見ていたわけではないが、とでも恥ずかしい思いをしたことを記憶している。

 

これ以外にも多くの思い出が凝縮されている。患者さんからもらったしじみで「しじみ汁」を作ってくれた外来婦長さんだったOさん、一緒にカラオケに行ったFさんもなつかしい。もっとも印象に残っているのが、外来の看護婦さんだったKさんだ。書いているうちに、本当になつかしくなってきた。

 

ブログを読んでいる人がいれば、是非、同窓会を企画して欲しい。

PS:ゴルフのマスターズをテレビ観戦していた。松山英樹選手は健闘して5位に入った。最終日のベストスコアだったし、大したものだ。しかし、2時間ほど見ていたテレビには、最終ホールの第2打とバーディーパットの様子しか映らなかった。トップや2位グループと少し離れていたので仕方がない反面、残念だ。しかし、解説者がこれから期待できる一人と言っていたのが、嬉しい。 

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